66 / 405
mission 2 孤高の花嫁
強引すぎる依頼?
しおりを挟む
Side-デュエル 6
全員の驚愕を乗せて、馬車はさらに進んでいく。
「いやあ、今回のイベントは親戚の祝い事があるからって事で、前半だけ顔出した後でさっさと里帰りしてたんだ。たださ…ちょっとだけ困ったことが起きちゃってね…ボクから君たちに依頼って形でお願いしたいことがあるんだよ」
歯切れ悪く言いにくそうに、フランシスが続ける。
「ちょっと待て。オメー、忘れてねぇか? ギルド…っつーか宿屋を通して依頼するのが通例だろうがよ?」
アーチのもっともな指摘に、フランシスは笑顔で答える。
「ああ、大丈夫だよ。白銀亭には連絡を『たった今』入れたから」
「たった…今? まさか…」
俺はさっき、手紙を鳥に結んで飛ばした光景を思い出した。さっき感じた嫌な予感は、これだったのか! こいつ、予め用意してたな! どこかで俺たちの居場所を聞いて、手紙で書式を整えて用意してたに違いない!
いきなりアーチが、馬車の扉を開けた。
「おい! さっきの鳥、撃ち落としてくれ! まだ間に合うかもしれねぇ!」
「無茶言え、間に合うか! この距離なら、もう届いてる頃だろう…やられたな」
「い、いやだってよ? 断ることだって…」
「あの女将に、それが通用すると思うか? たとえ相手が身内に近いフランシスだったとしても、高額になりそうな依頼を蹴ったと知られて見ろ…まとめて殺されるぞ」
そのリアルな一言に、俺もアーチも青ざめた。あの商売っ気の塊な女将さんと一番付き合いの長いラスファのセリフには、説得力がありすぎた。
「ねえ、なんでそこまで嫌がるの? 受けちゃえばいいじゃん! 来週の試験、自然にサボれるからあたしとしては嬉しいんだけどな」
危機感のないアーシェの質問は、知らない者から見れば当然のことだろう。だが…。
「いいか? 『領主』の館で『困ったこと』と言えば…十中八九、『お家騒動』絡みだ。親類同士の骨肉の争いほどタチの悪いものはない。都合が悪くなれば、雇った相手に刺客を差し向けることもある」
「えー、でも兄貴たちなら余裕で蹴散らせるじゃない…」
大マジで紡がれるラスファの解説にも関わらず、なおも二人には伝わりきっていない。彼は、さらにとどめの一言を言い放った。
「その場合、真っ先に狙われるのは誰だろうな?」
軽いデコピンとともに出された宣告で、少女たちも事態の深刻さをようやく理解したらしい。青くなると彼女たちはフランシスに詰め寄った。
「ちょっと、あたし帰る! 冗談じゃないわよ!」
馬車の中で応酬の一部始終を見ていたフランシスは、目に見えてしょげかえった。
「あのさ…君たち、ボクん家をなんだと思ってんだい?」
改めて依頼内容を聞いてみると、拍子抜けするほど単純な内容だった。
町外れの空き家で怪しい噂が後を絶たず、調査してほしいというものだ。領民たちが怯えているので、できうる限り早めに解決してほしいそうだ。
フランシスはそう言うが、あそこまで強引に馬車に押し込められたら当然、警戒心が起きるに決まっている。一体、何をそこまで困り果てていたのやら?
「いや、実はボクが観光大使をしていることを親族たちは知らないんだ」
意を決して、といった具合のフランシスは語る。
「それで?」
「エルダードに行って冒険者してると言えば、当然ホンモノの冒険者を連想するだろう? 特に叔父上が期待しちゃっててさ。酒も入った祝いの席で、冒険者としてのボクの腕前に頼ろうってなっちゃって。代々、武門の家柄だから断るに断れなくって。だから当てもなかったけど苦し紛れに『仲間を連れてくる』って言って出てきたんだ。使用人たちが君たちらしい目立つ集団を見つけた時には嬉しくって仕方なくってさ! それでつい強引なやり方になっちゃって…申し訳ない」
ちなみに、宿場町から城までは直線距離でそう遠いわけではない。わざわざ事情を説明するために、わざと遠回りするよう使用人に頼んだらしかった。ちなみにその使用人たちは、仕切られた場所にいる御者を除いて白に先触れをしに向かっている。ゆえにこの会話は俺たち以外の誰も聞いていないことになる。切羽詰まっている分だけ、手回しのいいことだ。
全員の驚愕を乗せて、馬車はさらに進んでいく。
「いやあ、今回のイベントは親戚の祝い事があるからって事で、前半だけ顔出した後でさっさと里帰りしてたんだ。たださ…ちょっとだけ困ったことが起きちゃってね…ボクから君たちに依頼って形でお願いしたいことがあるんだよ」
歯切れ悪く言いにくそうに、フランシスが続ける。
「ちょっと待て。オメー、忘れてねぇか? ギルド…っつーか宿屋を通して依頼するのが通例だろうがよ?」
アーチのもっともな指摘に、フランシスは笑顔で答える。
「ああ、大丈夫だよ。白銀亭には連絡を『たった今』入れたから」
「たった…今? まさか…」
俺はさっき、手紙を鳥に結んで飛ばした光景を思い出した。さっき感じた嫌な予感は、これだったのか! こいつ、予め用意してたな! どこかで俺たちの居場所を聞いて、手紙で書式を整えて用意してたに違いない!
いきなりアーチが、馬車の扉を開けた。
「おい! さっきの鳥、撃ち落としてくれ! まだ間に合うかもしれねぇ!」
「無茶言え、間に合うか! この距離なら、もう届いてる頃だろう…やられたな」
「い、いやだってよ? 断ることだって…」
「あの女将に、それが通用すると思うか? たとえ相手が身内に近いフランシスだったとしても、高額になりそうな依頼を蹴ったと知られて見ろ…まとめて殺されるぞ」
そのリアルな一言に、俺もアーチも青ざめた。あの商売っ気の塊な女将さんと一番付き合いの長いラスファのセリフには、説得力がありすぎた。
「ねえ、なんでそこまで嫌がるの? 受けちゃえばいいじゃん! 来週の試験、自然にサボれるからあたしとしては嬉しいんだけどな」
危機感のないアーシェの質問は、知らない者から見れば当然のことだろう。だが…。
「いいか? 『領主』の館で『困ったこと』と言えば…十中八九、『お家騒動』絡みだ。親類同士の骨肉の争いほどタチの悪いものはない。都合が悪くなれば、雇った相手に刺客を差し向けることもある」
「えー、でも兄貴たちなら余裕で蹴散らせるじゃない…」
大マジで紡がれるラスファの解説にも関わらず、なおも二人には伝わりきっていない。彼は、さらにとどめの一言を言い放った。
「その場合、真っ先に狙われるのは誰だろうな?」
軽いデコピンとともに出された宣告で、少女たちも事態の深刻さをようやく理解したらしい。青くなると彼女たちはフランシスに詰め寄った。
「ちょっと、あたし帰る! 冗談じゃないわよ!」
馬車の中で応酬の一部始終を見ていたフランシスは、目に見えてしょげかえった。
「あのさ…君たち、ボクん家をなんだと思ってんだい?」
改めて依頼内容を聞いてみると、拍子抜けするほど単純な内容だった。
町外れの空き家で怪しい噂が後を絶たず、調査してほしいというものだ。領民たちが怯えているので、できうる限り早めに解決してほしいそうだ。
フランシスはそう言うが、あそこまで強引に馬車に押し込められたら当然、警戒心が起きるに決まっている。一体、何をそこまで困り果てていたのやら?
「いや、実はボクが観光大使をしていることを親族たちは知らないんだ」
意を決して、といった具合のフランシスは語る。
「それで?」
「エルダードに行って冒険者してると言えば、当然ホンモノの冒険者を連想するだろう? 特に叔父上が期待しちゃっててさ。酒も入った祝いの席で、冒険者としてのボクの腕前に頼ろうってなっちゃって。代々、武門の家柄だから断るに断れなくって。だから当てもなかったけど苦し紛れに『仲間を連れてくる』って言って出てきたんだ。使用人たちが君たちらしい目立つ集団を見つけた時には嬉しくって仕方なくってさ! それでつい強引なやり方になっちゃって…申し訳ない」
ちなみに、宿場町から城までは直線距離でそう遠いわけではない。わざわざ事情を説明するために、わざと遠回りするよう使用人に頼んだらしかった。ちなみにその使用人たちは、仕切られた場所にいる御者を除いて白に先触れをしに向かっている。ゆえにこの会話は俺たち以外の誰も聞いていないことになる。切羽詰まっている分だけ、手回しのいいことだ。
0
あなたにおすすめの小説
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる