古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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mission 2 孤高の花嫁

強引すぎる依頼?

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Side-デュエル 6

 全員の驚愕を乗せて、馬車はさらに進んでいく。
「いやあ、今回のイベントは親戚の祝い事があるからって事で、前半だけ顔出した後でさっさと里帰りしてたんだ。たださ…ちょっとだけ困ったことが起きちゃってね…ボクから君たちに依頼って形でお願いしたいことがあるんだよ」

  歯切れ悪く言いにくそうに、フランシスが続ける。
「ちょっと待て。オメー、忘れてねぇか? ギルド…っつーか宿屋を通して依頼するのが通例だろうがよ?」
 アーチのもっともな指摘に、フランシスは笑顔で答える。
「ああ、大丈夫だよ。白銀亭には連絡を『たった今』入れたから」
「たった…今? まさか…」
 俺はさっき、手紙を鳥に結んで飛ばした光景を思い出した。さっき感じた嫌な予感は、これだったのか! こいつ、予め用意してたな! どこかで俺たちの居場所を聞いて、手紙で書式を整えて用意してたに違いない!
 
 いきなりアーチが、馬車の扉を開けた。
「おい! さっきの鳥、撃ち落としてくれ! まだ間に合うかもしれねぇ!」
「無茶言え、間に合うか! この距離なら、もう届いてる頃だろう…やられたな」

「い、いやだってよ? 断ることだって…」
「あの女将ドミニクに、それが通用すると思うか? たとえ相手が身内に近いフランシスだったとしても、高額になりそうな依頼を蹴ったと知られて見ろ…まとめて殺されるぞ」
 そのリアルな一言に、俺もアーチも青ざめた。あの商売っ気の塊な女将さんと一番付き合いの長いラスファのセリフには、説得力がありすぎた。

「ねえ、なんでそこまで嫌がるの? 受けちゃえばいいじゃん! 来週の試験、自然にサボれるからあたしとしては嬉しいんだけどな」
 危機感のないアーシェの質問は、知らない者から見れば当然のことだろう。だが…。
「いいか? 『領主』の館で『困ったこと』と言えば…十中八九、『お家騒動』絡みだ。親類同士の骨肉の争いほどタチの悪いものはない。都合が悪くなれば、雇った相手に刺客を差し向けることもある」
「えー、でも兄貴たちなら余裕で蹴散らせるじゃない…」
 大マジで紡がれるラスファの解説にも関わらず、なおも二人には伝わりきっていない。彼は、さらにとどめの一言を言い放った。

「その場合、真っ先に狙われるのは誰だろうな?」
 軽いデコピンとともに出された宣告で、少女たちも事態の深刻さをようやく理解したらしい。青くなると彼女たちはフランシスに詰め寄った。
「ちょっと、あたし帰る! 冗談じゃないわよ!」
 馬車の中で応酬の一部始終を見ていたフランシスは、目に見えてしょげかえった。
「あのさ…君たち、ボクん家をなんだと思ってんだい?」


 改めて依頼内容を聞いてみると、拍子抜けするほど単純な内容だった。
 町外れの空き家で怪しい噂が後を絶たず、調査してほしいというものだ。領民たちが怯えているので、できうる限り早めに解決してほしいそうだ。
 フランシスはそう言うが、あそこまで強引に馬車に押し込められたら当然、警戒心が起きるに決まっている。一体、何をそこまで困り果てていたのやら?
「いや、実はボクが観光大使をしていることを親族たちは知らないんだ」
 意を決して、といった具合のフランシスは語る。
「それで?」
「エルダードに行って冒険者してると言えば、当然ホンモノの冒険者を連想するだろう? 特に叔父上が期待しちゃっててさ。酒も入った祝いの席で、冒険者としてのボクの腕前に頼ろうってなっちゃって。代々、武門の家柄だから断るに断れなくって。だから当てもなかったけど苦し紛れに『仲間を連れてくる』って言って出てきたんだ。使用人たちが君たちらしい目立つ集団を見つけた時には嬉しくって仕方なくってさ! それでつい強引なやり方になっちゃって…申し訳ない」
 ちなみに、宿場町から城までは直線距離でそう遠いわけではない。わざわざ事情を説明するために、わざと遠回りするよう使用人に頼んだらしかった。ちなみにその使用人たちは、仕切られた場所にいる御者を除いて白に先触れをしに向かっている。ゆえにこの会話は俺たち以外の誰も聞いていないことになる。切羽詰まっている分だけ、手回しのいいことだ。
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