古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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mission 2 孤高の花嫁

仕事の依頼、承った!

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Side-アーチ 2

  あるところに、美しい娘がいました。
  そしてある貴族の若君が彼女を見初め、長い年月をかけてアタックし続けてやっと婚約までこぎつけました。
 ところが! その矢先に彼女の実家に強盗が入り、彼女を除いた家族四人が犠牲となってしまいます。彼女も危ないところだったのですが、若君の助けが入り無事でした。しかし…家族を一度に失った花嫁の心の傷は深く、放って置けない若君はそのままこの城に連れてくることになります。
 葬儀が済んでも、犯人は未だ捕まらず。この街の自警団に相当する衛視たちも、証拠一つ見つけられず匙を投げてしまいます。そんな矢先に荒れ果てた花嫁の実家に異変が起きたという噂を聞き、解決するために白羽の矢が立ったのが! 我らが『冒険者』フランシスだったのです!


「…というのが、事件の概要だ」
 ジェラルド氏の語る事件の概要に対するリアクションは、きっかりとふた通りに分かれた。同情に泣き濡れる弟子とアーシェ。そして残りのオレら三人は、あらゆる疑問にまみれていた。
「それでも、婚儀そのものは延期しなかったのか? 花嫁さんの心の整理だってつかないだろうに…」
 デュエルが投げかけた同情混じりの最もな疑問に、ブリジット姐さんはかぶりを振る。そりゃそうだ、女ってやつはそこんとこ繊細だからよ? だからこそ、オレら男が守ってやらにゃならねぇのよ。わかる? まあ、この件についちゃまだまだ気になることがあるっちゃあるんだよな。
「なあ、あと花嫁さんの実家って、そんな金目のモンが多かったのか?」
 オレも遺跡専門ではあるが、盗賊の端くれだ。同じ盗みをするなら、確実な実入りを狙うのが定石ってことぐれぇは理解してるつもりだがよ。家族皆殺しにするってことは、よほどの理由があるはずなんだ。自警団に確実に目をつけられるリスクを犯してでも、手に入れたい何かがあったとまずは考えるぜ。
 まあ、ンな胸糞悪りィ連中と一緒くたにされるなんざ、ごめんだけどよ!

「いや、それが特には…。何人で押し入って、何が目的の強盗だったのかもわからないんだ」
 …は?
「ちょっと待て。何も分からねぇのは、逆に不自然じゃねぇか。現場の検証はしたんだろ?」
「…家探し目的よりは、破壊が目的だったような有様だったそうだ。だからと言って、怨みを買うような一家でもない。敬虔な至高神の信者で、家族で仕立て屋を営んでいたそうだ。街のものに聞き込みをしても同情的な話ばかりで悪い噂も出なかった」
 ジェラルド氏が説明を捕捉する。ふうん…随分と有能な衛視サマじゃないの? 人間、悪事をしてなくとも逆恨みっつー面倒を買うこともあるのによ?

「…ということは、現場検証には参加してなかったという事か?」
 ラスファがジェラルド氏にズバリと切り込んだ。 確かにそうだ。現場検証については、どうも人づてに聞いたことって感じだな。
「ああ。この件について俺自身は、聞き込みしか関係していない。現状保存のためという名目で、現場検証には担当となった一部の者しか行ってないんだ」
「…自警団のトップは?」
「ベネディクト卿という、神経質な初老の男だ。叔父上と親しい間柄でな」

 ほうほう。こりゃ覚えといたほうがいい名前だな。しかしどうも、この件は単なる強盗事件で片付きそうにねぇな。
「…一つ確認するが…」
 ポツリ、と呟くラスファにジェラルド氏は振り返った。
「この事件…『こちらのやり方』で突き詰めて調べても、問題はないのか?」
 奴は慎重に言葉を選ぶようにして確認した。裏を返しゃ『この家や衛視たちにとって、都合の悪いことも掘り返すかも知れねぇぞ?』って事だ。だがジェラルド卿やブリジット姐さんは揃って力強く頷いた。
「衛視の一人としてではなく、将来の身内として彼女や彼女のご家族の無念を晴らしてやりたいんだ! 最終的に
正式な依頼主になるのは父上になるだろうが、オレたちからも頼む!」
 
 そしてジェラルド卿は、父親から預かっていたらしい詳細を描いた封書をデュエルに渡した。
 ざっと回し読みしたが、悪くねぇ条件だ。
「なら、これで依頼は成立って事でいいか?」
 最後にデュエルが全員を見回し確認を取り、全員が頷いた。弟子やアーシェは、涙ながらに訴える。
「許せないよ、結婚が決まったら同時に強盗なんて! 」
 義憤に燃える少女たち。いつになく燃えてんな。
  
 ちょうどその時だった。ばあやさんが湯浴みの準備ができたと伝えに来たのは。
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