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mission 2 孤高の花嫁
助ける理由
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Side-アーシェ 9
さっきまで、ここにはナディアさんがいたはずなのに。ナディアさんが磨いていたはずのグラスも、乱暴に押し入った衛視隊のせいで粉々に砕けている。なんて酷いことするんだろう?
もともと自警団って、困ってる人を助けるためにつくられたものだよね? 衛視隊は、何のためにのさばってるの?
「すまない。これは、私のミスだ。詰めが甘かった…」
苦さ混じりの兄貴の声を遮って、あたしは叫んだ。一気に頭が沸騰する。
「兄貴は、兄貴は強いからそんなことが言えるんだ! 無力なあたしの気持ちなんかわかんないよ!」
もう、自分でも何を口走っているのかわからなくなった。完全に八つ当たりだとわかってるのに、止められない。あたしが、兄貴ぐらい強かったら。どうするべきか、とっさに決断出来てたら…!
頭の中は、後悔でいっぱいになっていた。もし逃せてたら、もし隠れられてたら。考えてもキリがない、そんなありもしない選択肢。正しい道はどこだったのか、いまだにわからないけど。
「助けられなかった人は、私にもいる。悔やんでも悔やみきれないほど、苦い思いだって…。目の前で、取り返しのつかない事態に陥ったことも一度や二度じゃない」
その苦味を増した声音に、頭に上っていた血がゆっくりと落ちていくのがわかった。
そうだ。兄貴は昔、今の女将さんや白銀亭のマスターと一緒に組んで冒険やってたんだっけ。兄貴だって、何も始めから強かったわけじゃない。今のあたしみたいに迷ったり悩んだり、助けようとしても助けられなかった人なんかもいたんだ…。
「だが、彼女は違う。まだ間に合う。取り返しがつかなくなったわけじゃないんだ。なら、間に合わせてみせる…!」
繰り返してたまるか。あたしにはそう聞こえた気がした。そうだよ、決心がついたらあとは進むだけよね。やっと止まった涙を乱暴に袖口で拭う。
「嫌な相手と無理やり結婚だなんて、本来あってはならないことですわ。わたくしも実家で同じ目にあって来たのですから、痛いほど良くわかります」
静かな、それでいて強い口調でラグちゃんが呟いた。あたしは彼女を振り返りながら、静かに立ち上がった。
「ラグちゃん…」
「わたくしの場合は、実家を飛び出した後で受け入れてくださった神殿の皆様や師匠、皆さんがいてくださった。だから今の自分があるんです。ナディアさんが困っていらっしゃるなら、またわたくしも力になりたいんです。ナディアさんにとっての希望になりたいんです!」
そっか。ラグちゃんにとっては今回の事件、人ごとじゃないんだ。自分の境遇と似てるから、自分と同じように助けるのが当然と思ってる。あたしはそんなラグちゃんが誇らしく思えた。
「ナディアさんは、フランシスさんのお城に連れ戻されたようでした。今度は、誰にも会えないように見張りが強化されているそうですわ」
あたしが倒れた後のことをしっかりと見ていてくれたラグちゃんに感謝! やっぱ、しっかりしてるわ…。
「思い知らせてやるさ、連中が誰を敵に回したのかを。アーシェに手を出した礼は、しっかりさせてもらう」
「ちょっと、兄貴…それ私情モロ出し。こっちの自警団のお世話にならないようにね?」
「安心しろ、八割殺しまでにとどめてやるから」
はい、安心できる要素ゼロ! 半殺し超えてる…ってかそれ、死んだほうがマシなレベル! うっすらと冷気を漂わせながら語っても、説得力ないよ兄貴…。
「ま、まずはデュエルとアーちんに合流しないとね。それに…」
あたしは背後で静かに泣き崩れるブルスさんにちらりと視線を投げた。その時に、こっちの話もしておかないと。
「忙しくなりそうですわね。まずはお城で待機のデュエルさんに話を通しましょう! 師匠もいらっしゃるでしょうし」
そのラグちゃんの予想は、外れた。
いつの間にか外出してたアーちんは、その日の晩が明けても戻ってこなかった。
さっきまで、ここにはナディアさんがいたはずなのに。ナディアさんが磨いていたはずのグラスも、乱暴に押し入った衛視隊のせいで粉々に砕けている。なんて酷いことするんだろう?
もともと自警団って、困ってる人を助けるためにつくられたものだよね? 衛視隊は、何のためにのさばってるの?
「すまない。これは、私のミスだ。詰めが甘かった…」
苦さ混じりの兄貴の声を遮って、あたしは叫んだ。一気に頭が沸騰する。
「兄貴は、兄貴は強いからそんなことが言えるんだ! 無力なあたしの気持ちなんかわかんないよ!」
もう、自分でも何を口走っているのかわからなくなった。完全に八つ当たりだとわかってるのに、止められない。あたしが、兄貴ぐらい強かったら。どうするべきか、とっさに決断出来てたら…!
頭の中は、後悔でいっぱいになっていた。もし逃せてたら、もし隠れられてたら。考えてもキリがない、そんなありもしない選択肢。正しい道はどこだったのか、いまだにわからないけど。
「助けられなかった人は、私にもいる。悔やんでも悔やみきれないほど、苦い思いだって…。目の前で、取り返しのつかない事態に陥ったことも一度や二度じゃない」
その苦味を増した声音に、頭に上っていた血がゆっくりと落ちていくのがわかった。
そうだ。兄貴は昔、今の女将さんや白銀亭のマスターと一緒に組んで冒険やってたんだっけ。兄貴だって、何も始めから強かったわけじゃない。今のあたしみたいに迷ったり悩んだり、助けようとしても助けられなかった人なんかもいたんだ…。
「だが、彼女は違う。まだ間に合う。取り返しがつかなくなったわけじゃないんだ。なら、間に合わせてみせる…!」
繰り返してたまるか。あたしにはそう聞こえた気がした。そうだよ、決心がついたらあとは進むだけよね。やっと止まった涙を乱暴に袖口で拭う。
「嫌な相手と無理やり結婚だなんて、本来あってはならないことですわ。わたくしも実家で同じ目にあって来たのですから、痛いほど良くわかります」
静かな、それでいて強い口調でラグちゃんが呟いた。あたしは彼女を振り返りながら、静かに立ち上がった。
「ラグちゃん…」
「わたくしの場合は、実家を飛び出した後で受け入れてくださった神殿の皆様や師匠、皆さんがいてくださった。だから今の自分があるんです。ナディアさんが困っていらっしゃるなら、またわたくしも力になりたいんです。ナディアさんにとっての希望になりたいんです!」
そっか。ラグちゃんにとっては今回の事件、人ごとじゃないんだ。自分の境遇と似てるから、自分と同じように助けるのが当然と思ってる。あたしはそんなラグちゃんが誇らしく思えた。
「ナディアさんは、フランシスさんのお城に連れ戻されたようでした。今度は、誰にも会えないように見張りが強化されているそうですわ」
あたしが倒れた後のことをしっかりと見ていてくれたラグちゃんに感謝! やっぱ、しっかりしてるわ…。
「思い知らせてやるさ、連中が誰を敵に回したのかを。アーシェに手を出した礼は、しっかりさせてもらう」
「ちょっと、兄貴…それ私情モロ出し。こっちの自警団のお世話にならないようにね?」
「安心しろ、八割殺しまでにとどめてやるから」
はい、安心できる要素ゼロ! 半殺し超えてる…ってかそれ、死んだほうがマシなレベル! うっすらと冷気を漂わせながら語っても、説得力ないよ兄貴…。
「ま、まずはデュエルとアーちんに合流しないとね。それに…」
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「忙しくなりそうですわね。まずはお城で待機のデュエルさんに話を通しましょう! 師匠もいらっしゃるでしょうし」
そのラグちゃんの予想は、外れた。
いつの間にか外出してたアーちんは、その日の晩が明けても戻ってこなかった。
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