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mission 2 孤高の花嫁
若君の憂鬱
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Side-デュエル 14
困ったことになった。
別にアーチが行方不明になることなんて珍しいことではない。普段から、女目的で脇道に逸れることなんてザラにある。だが、いまは通常の状態とは違う。一応ながら『黒狼団』なる連中に狙われている現状だ。たとえ奴が単独の時に狙われても、そうそう大事になるはずもない。そもそもそこまで追い詰められる前にあっさりと逃げおおせるだけの逃げ足もあるし、戦力もある。だが、万一ということもなくはないのだ。
アーチを除いた俺たちは、おなじみの酒場の奥部屋に全員で集まっていた。花嫁の扱いは軟禁から監禁に移行し、今現在はフランシスの姉であるブリジット姐さんが『身内』の『話し相手』という名目の護衛についている。
俺たちはというと、いくらなんでも敵地でもある城で作戦会議などできるはずもない。それ以上に自警団に面が割れてしまっている以上、冒険者として表立って行動した挙句に鉢合わせなどという事態はできれば避けたいところだ。
アーシェから話を聞いたが、息子を人質に取られた上でスパイさせられていたブルスという男も部屋の隅で座り込んでいた。事情が事情だけに責められないが、責任を感じているらしい。そして未だ息子の行方はわからないそうだ。
アドルフ卿には俺たちがカッパーフィールド家で依頼を受けていることは知られているが、できれば実力のほどは全く把握されていない現状は維持したいところだ。唯一自警団と接触していないアーチがいれば良かったのだが、いないものは仕方ない。
「ああもう! こんなことならティコかチャコをアーちんにくっつけとくんだった!」
アーシェは喚くが、今更言ったところで現状は変わらない。まあ、マジで女のところにしけこんでいるとは思えない…よな? そう思ったのは俺だけじゃないらしい。
「奴のことだ。唯一敵方に接触していないことを逆手にとって、素知らぬ顔で敵地に潜り込んでいるかもしれないがな」
不安そうなラグに気を使ってのラスファの言葉だが、経験上で言えばその可能性の方が高い。だとしたら、奴の独壇場だろう。
「おーい、冒険者の兄ちゃん達! 若様がおいでだよ!」
奥部屋のドアが開いて、酒場の男が顔を出した。
「若様?」
思わず呟いた俺たちの前に、ひさびさに見た気がするフランシスが幽霊のように現れた。
「ボクだよ…姉上からの手紙を預かってきたんだ…」
なんというか、ここしばらくの騒動のせいか別人のようにやつれている。心なしか痩せたんじゃないだろうか?
「ちょっと…大丈夫ですかフランシスさん?」
「ああ、大丈夫だよ。実家に帰ればいつもこうだからさ」
心配げに駆け寄るラグに弱々しく手を振るフランシス。俺にとっての実家とは戦場だからよくわからないが…普通実家に戻れば、もう少しリラックスするものじゃないだろうか?
「ばあややいとこのクリス、いろんな使用人に至るまで『冒険者』やってることについて質問ぜめにされるんだよ…。今回は特にアドルフ叔父さんからの追求がしつこくてさ。いっそ、こっちに泊まってもいい?」
そう言って虚ろな目で肩を落とす。
「まあ、普段はおじさんにとってボクは空気扱いだから、注目されるだけマシなのかな…ははは…」
「…なんでネガティブ拗らせて、逆にポジティブになってるんだこいつ?」
「っていうか観光大使で目一杯目立ってるのって、実家の扱いの反動なんじゃない?」
…おーい、そこのエルフ兄妹? そういうことは本人に聞こえないところで言ってやってくれよ?
「で、その手紙というのは?」
仕方なく俺は手紙のことに水を向けた。なんか、物悲しくて見ていられない。
思い出したように懐を探るフランシス。そこから、手紙とともに小さなケースがこぼれ落ちた。
「ん、これは?」
思わず拾い上げたそれは、蓋が壊れた小箱らしい。
「え…これは?」
死んだ貝のようにぱかりと開いた小箱。そこには、意外なものが収まっていた。
困ったことになった。
別にアーチが行方不明になることなんて珍しいことではない。普段から、女目的で脇道に逸れることなんてザラにある。だが、いまは通常の状態とは違う。一応ながら『黒狼団』なる連中に狙われている現状だ。たとえ奴が単独の時に狙われても、そうそう大事になるはずもない。そもそもそこまで追い詰められる前にあっさりと逃げおおせるだけの逃げ足もあるし、戦力もある。だが、万一ということもなくはないのだ。
アーチを除いた俺たちは、おなじみの酒場の奥部屋に全員で集まっていた。花嫁の扱いは軟禁から監禁に移行し、今現在はフランシスの姉であるブリジット姐さんが『身内』の『話し相手』という名目の護衛についている。
俺たちはというと、いくらなんでも敵地でもある城で作戦会議などできるはずもない。それ以上に自警団に面が割れてしまっている以上、冒険者として表立って行動した挙句に鉢合わせなどという事態はできれば避けたいところだ。
アーシェから話を聞いたが、息子を人質に取られた上でスパイさせられていたブルスという男も部屋の隅で座り込んでいた。事情が事情だけに責められないが、責任を感じているらしい。そして未だ息子の行方はわからないそうだ。
アドルフ卿には俺たちがカッパーフィールド家で依頼を受けていることは知られているが、できれば実力のほどは全く把握されていない現状は維持したいところだ。唯一自警団と接触していないアーチがいれば良かったのだが、いないものは仕方ない。
「ああもう! こんなことならティコかチャコをアーちんにくっつけとくんだった!」
アーシェは喚くが、今更言ったところで現状は変わらない。まあ、マジで女のところにしけこんでいるとは思えない…よな? そう思ったのは俺だけじゃないらしい。
「奴のことだ。唯一敵方に接触していないことを逆手にとって、素知らぬ顔で敵地に潜り込んでいるかもしれないがな」
不安そうなラグに気を使ってのラスファの言葉だが、経験上で言えばその可能性の方が高い。だとしたら、奴の独壇場だろう。
「おーい、冒険者の兄ちゃん達! 若様がおいでだよ!」
奥部屋のドアが開いて、酒場の男が顔を出した。
「若様?」
思わず呟いた俺たちの前に、ひさびさに見た気がするフランシスが幽霊のように現れた。
「ボクだよ…姉上からの手紙を預かってきたんだ…」
なんというか、ここしばらくの騒動のせいか別人のようにやつれている。心なしか痩せたんじゃないだろうか?
「ちょっと…大丈夫ですかフランシスさん?」
「ああ、大丈夫だよ。実家に帰ればいつもこうだからさ」
心配げに駆け寄るラグに弱々しく手を振るフランシス。俺にとっての実家とは戦場だからよくわからないが…普通実家に戻れば、もう少しリラックスするものじゃないだろうか?
「ばあややいとこのクリス、いろんな使用人に至るまで『冒険者』やってることについて質問ぜめにされるんだよ…。今回は特にアドルフ叔父さんからの追求がしつこくてさ。いっそ、こっちに泊まってもいい?」
そう言って虚ろな目で肩を落とす。
「まあ、普段はおじさんにとってボクは空気扱いだから、注目されるだけマシなのかな…ははは…」
「…なんでネガティブ拗らせて、逆にポジティブになってるんだこいつ?」
「っていうか観光大使で目一杯目立ってるのって、実家の扱いの反動なんじゃない?」
…おーい、そこのエルフ兄妹? そういうことは本人に聞こえないところで言ってやってくれよ?
「で、その手紙というのは?」
仕方なく俺は手紙のことに水を向けた。なんか、物悲しくて見ていられない。
思い出したように懐を探るフランシス。そこから、手紙とともに小さなケースがこぼれ落ちた。
「ん、これは?」
思わず拾い上げたそれは、蓋が壊れた小箱らしい。
「え…これは?」
死んだ貝のようにぱかりと開いた小箱。そこには、意外なものが収まっていた。
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