古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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intermission 4 〜突然の訪問者〜

怪しい来訪者

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Side-ラスファ 2

「じけいだん、スごい! サガしてた、アエタ!」
 さっきまで毛布かぶって震えていたのが嘘のように、ティセは怪しい言語を撒き散らす。覚えたての共通語のようだが、片言もいいところだ。確かにこれでは意思疎通に苦労するだろう。里から出て来たばかりのかつての自分もこうだったのかと思うと、少々アタマが痛い。

  あれから間も無く。自警団の面々に事情を説明すると、全員…新入りコンビの上司に当たるラインハルトに至るまでホッとしたようにため息をつかれた。

「で…どう言う関係なんだ?」
 ラインハルトが書類にペンを走らせながら振り返る。上に報告する書類が必要なために執務室に呼ばれたわけだが、どうも居心地が悪い。
「ああ、話すと長くなるんだが…」
「ハイはーい! ラス兄、ミウち! ミウチよ!」
 ティセは嬉しそうに手を上げて、活き活きと答えた。ラインハルトは少し考えるそぶりを見せると、私に確認を取る。
「えと…身内…ってことで、良いのか…?」
「あー…まあ、そんなところで書いておいてくれ…」

 ぎこちない空気の中、身元引き受け人としての書類にサインすると自警団の詰所を後にした。
 だがまだ人混みが怖いのか、頭からすっぽりと毛布をかぶって歩く姿は怪しいとしか言いようがない。毛布から突き出た手がしっかりと私の服の裾をつかんでいるが、なんというか…奇異なものを見るような周りの視線が痛い。
『毛布…後でちゃんと返せよ?』
『うん…』
 こんなんで、よく単身で里から出てきたものだ。

 
 時間的には、ちょうどランチタイムが終わって比較的閑散とした頃。
 毛布をかぶったままのティセを連れて白銀亭の戸口をくぐると、いきなり女将ドミニクが持っていたトレイを取り落としてカップを叩き割った。
「ナニ拾ってきたんだい、アンタ…?」
「その…話せば長くなるんだが…」
 説明しようとした時に、毛布をかぶったままのティセがそっと目だけをドミニクに向けた。
「ヒロう…? ティセ、カケラヒロうよ!」
「いや、そうだけどそうじゃなくてな…」
  その時、ティセから、かぶっていた毛布が足元に落ちた。
「あ」
 広がる豪奢な金髪に尖った耳を見て、ドミニクの目が点になる。確かに、あの毛布の中から出てくるには場違いとは思うが…。
「…なに、アンタの身内か何か?」
「まあ、そんなところだ。しばらくここに泊めてやってくれるか?」
「請求はアンタで良いんだね?」
「…仕方ない」

 ちょうどそこに、アーシェとラグが帰ってきた。嬉しそうに本を抱え、楽しそうに笑いあっている。
「ね、ね? すっごい続きが気になるでしょ?」
「ええ、とっても! マリーの恋の行方が気になって仕方ありません!」
「あとで一緒に読も? とっておきのクッキーあるんだ! この恋愛小説、久々の大ヒット!」
 かしましい会話の末に、二人の目がティセに吸い寄せられた。閑散とした食堂に、驚きの声がこだまする。
「うっわ、キレーなお姉さん!」
「綺麗ですわ~…!」
 …ややこしいことになった。

 早速アーシェの質問責めが始まった。面倒なことになりそうだが、どう上手く乗り切るか…。だが、その心配は取り越し苦労というものだった。抱えたままの恋愛小説の影響か、別の誤解が生じている。
「ちょ、誰このお姉さん! 兄貴の彼女?」
「なんでだ。話すと長くなるが、身内だ身内」
 そんな会話の合間にも、ラグはティセに挨拶しようとしていた。
「あの、初めまして…。ラグランジュ・メイナーと申します。ラスファさんには、いつもお世話になっております」
 夢見心地の様子であっても、深々と頭を下げることは忘れない。うちの妹も、見習ってほしいものだ。
「ヨロシきゅ、オネがしまス。ティセリニア、いいマス」
「ああ、気にしないでくれ。里から来たばかりで共通語に不慣れなんだ」
 一応のフォローをすると、たどたどしい言葉に驚いていた二人が納得したように頷く。
「んじゃ、あたしたちが共通語教えたげる! よろしくね、ティセさん!」
「ヨシろく、オネがしマシュ」
 「うーん、惜しい!」
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