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intermission 4 〜突然の訪問者〜
里から来た駄々っ子
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Side-ラスファ 3
それからしばらく。あっという間に打ち解ける女子たちに、ふと疑問が湧いた。さっきからいきなりなことが多すぎて、真っ先に確認しておくべきことが抜け落ちている。
私はアーシェたちに分かりにくいように気を使って、ティセにエルフ語で話を聞いてみた。
『そういえば、冒険者にでもなりに来たのか? わざわざエルダードまで来るというのは、並大抵なことじゃないだろうに?』
その問いに、満面の笑みで頷くティセ。するとエルフ語ではなく覚えたての共通語で答えが返って来た。
「うン! ティセ、ラス兄ムカえにキタ! さと、イッショカエる!」
その言葉にアーシェたちは顔色を変える。
『里に連れ戻しに来たということか? 今更な話だ。…里長の命令か?』
「メイれいちがう! ティセ、かえッテきてホシかっタ。アレからティセ、サミシイ。シド兄とソフィ姉モ、いってル」
エルフ語と片言の共通語のちぐはぐな会話に、聞き耳を立てているアーシェたち。ティセはそれを分かっていて、共通語で話しているようだった。昔から彼女はそういう、妙にしたたかなところがあった。明るく元気な見た目に騙されてはいけない。私は腹を括って、エルフ語から共通語に切り替えた。
「…里長の後継ぎ候補なら、最有力のシドがいるだろ?」
「ソウじゃナいヨ! かえッテきテホシイ、いっテル!」
今までの元気な様子はなりを潜め、目つきも真剣なそれに変わる。そんなティセの額に軽くデコピンをしながら、私は言葉を返した。
「二度と帰らないと誓いを立ててまで、こっちに出てきたんだぞ? 今さら帰ったところで…」
「チカいナンかしラナい!」
そう言うとティセは再び、自警団から失敬したままの毛布をかぶって沈黙した。どれだけ気に入ったんだ、それ…。
「兄貴ぃ、まさか本当に帰っちゃうの?」
ドミニクが用意した部屋に引っ込んでいったティセを見送ると、アーシェは上目遣いで見上げてくる。
「だから、帰る気はない。ティセには、諦めてもらう」
ティセが引っ込んでいったドアを眺めながら、ラグは尋ねてきた。
「あの…お身内の方とおっしゃいましたが、ご親戚ですか?」
…痛いところを突かれた。その辺りは、まともに話すと本気で長くなりそうだから避けたかったんだが。
仕方なく、簡潔に要点だけを一言だけで答える。
「…義理の妹だ」
「じゃあ、血縁とかないんじゃん! ってかあの人さあ、絶対兄貴のこと好きだよ?」
「は?」
いきなり何を言いだすんだ、こいつは?
「エルフ族が里を出るって、並大抵のことじゃないんだよね? それも単身でだよ? 普通は連れ戻すためって言っても、そこまでできないんじゃないの?」
「確かにそこの所はそうなんだが…」
「…兄貴って、遠回しに告られても絶っ対気づかないでしょ? 他は鋭いのに、なんでそういう事だけニブいのよ?」
アーシェは半眼でじっとりとした目線を向けながら、説教くさく指を突きつける。…随分な言われようだな…。
その言い合いをしている間に、ラグは湯を沸かして何かを用意しているようだった。
「とりあえず、ティセさんも放っておけません。お茶とお菓子を持って話をしに行ってきます」
「あたしも行く!」
「…すまないな、気を使わせて」
「いいえ。新しいお客様とお話しするのは楽しいですから」
ラグは茶菓子とティーセットを持ち、その後ろを例の恋愛小説を抱えたアーシェが続く。
あとは、ティセが過去の余計なことを言わないよう祈るしかなかった。
それからしばらく。あっという間に打ち解ける女子たちに、ふと疑問が湧いた。さっきからいきなりなことが多すぎて、真っ先に確認しておくべきことが抜け落ちている。
私はアーシェたちに分かりにくいように気を使って、ティセにエルフ語で話を聞いてみた。
『そういえば、冒険者にでもなりに来たのか? わざわざエルダードまで来るというのは、並大抵なことじゃないだろうに?』
その問いに、満面の笑みで頷くティセ。するとエルフ語ではなく覚えたての共通語で答えが返って来た。
「うン! ティセ、ラス兄ムカえにキタ! さと、イッショカエる!」
その言葉にアーシェたちは顔色を変える。
『里に連れ戻しに来たということか? 今更な話だ。…里長の命令か?』
「メイれいちがう! ティセ、かえッテきてホシかっタ。アレからティセ、サミシイ。シド兄とソフィ姉モ、いってル」
エルフ語と片言の共通語のちぐはぐな会話に、聞き耳を立てているアーシェたち。ティセはそれを分かっていて、共通語で話しているようだった。昔から彼女はそういう、妙にしたたかなところがあった。明るく元気な見た目に騙されてはいけない。私は腹を括って、エルフ語から共通語に切り替えた。
「…里長の後継ぎ候補なら、最有力のシドがいるだろ?」
「ソウじゃナいヨ! かえッテきテホシイ、いっテル!」
今までの元気な様子はなりを潜め、目つきも真剣なそれに変わる。そんなティセの額に軽くデコピンをしながら、私は言葉を返した。
「二度と帰らないと誓いを立ててまで、こっちに出てきたんだぞ? 今さら帰ったところで…」
「チカいナンかしラナい!」
そう言うとティセは再び、自警団から失敬したままの毛布をかぶって沈黙した。どれだけ気に入ったんだ、それ…。
「兄貴ぃ、まさか本当に帰っちゃうの?」
ドミニクが用意した部屋に引っ込んでいったティセを見送ると、アーシェは上目遣いで見上げてくる。
「だから、帰る気はない。ティセには、諦めてもらう」
ティセが引っ込んでいったドアを眺めながら、ラグは尋ねてきた。
「あの…お身内の方とおっしゃいましたが、ご親戚ですか?」
…痛いところを突かれた。その辺りは、まともに話すと本気で長くなりそうだから避けたかったんだが。
仕方なく、簡潔に要点だけを一言だけで答える。
「…義理の妹だ」
「じゃあ、血縁とかないんじゃん! ってかあの人さあ、絶対兄貴のこと好きだよ?」
「は?」
いきなり何を言いだすんだ、こいつは?
「エルフ族が里を出るって、並大抵のことじゃないんだよね? それも単身でだよ? 普通は連れ戻すためって言っても、そこまでできないんじゃないの?」
「確かにそこの所はそうなんだが…」
「…兄貴って、遠回しに告られても絶っ対気づかないでしょ? 他は鋭いのに、なんでそういう事だけニブいのよ?」
アーシェは半眼でじっとりとした目線を向けながら、説教くさく指を突きつける。…随分な言われようだな…。
その言い合いをしている間に、ラグは湯を沸かして何かを用意しているようだった。
「とりあえず、ティセさんも放っておけません。お茶とお菓子を持って話をしに行ってきます」
「あたしも行く!」
「…すまないな、気を使わせて」
「いいえ。新しいお客様とお話しするのは楽しいですから」
ラグは茶菓子とティーセットを持ち、その後ろを例の恋愛小説を抱えたアーシェが続く。
あとは、ティセが過去の余計なことを言わないよう祈るしかなかった。
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