古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

文字の大きさ
148 / 405
short mission 1 〜受難の白銀亭〜

悪徳商売、摘発指令!

しおりを挟む
side-アーチ 1

「仕事? ない事もないわね」

 とある日、昼前の小悪魔の部屋にて…。
 宿代を数ヶ月分溜め込んじまったオレは、たまにゃマトモに盗賊ギルドの仕事でもしようかと情報部のトップことティンクが居るどピンクの扉を叩いた。あ、一応手土産持参でな?

「こっ…コレは白銀亭の、絶品ミルフィーユ! 近所の女子の体重を軒並み増やしたという、悪魔のスイーツ!」
 十代前半の見た目に、派手なピンクに染めたツインテール。この合法ロリな情報部長サマは、オレが差し出す紙袋の中身を匂いだけで当てやがった。情報屋の嗅覚というより、もはや物理的な嗅覚なんじゃねぇの? 

 ほぼスキップな足取りで茶を淹れに行くティンクに、オレはさっそく仕事について水を向けた。んで、さっきのお返事なわけよ。
「お、なんでぇ。あるんなら回してくれよ、今月キツくってな? 宿代払わにゃならんのよ」
 身を乗り出すオレに、ティンクは半眼で睨みを効かせる。
「その割にゃ、あんた羽目外してない? 昨日と一昨日、観光客の女とデートしてたわよね?」
 …うへえ…。やっぱ見た目ロリでもがっつり情報屋か。隠し事はまずできねぇな…ああ、おっかねえ!
「さっ…さすがは情報部長サマ、お見通しだったか…! まあ、金欠の理由はそれなんだけどもよ? 仕事回してくれりゃ嬉しいぜ? このミルフィーユ、もう一つオマケしたくなるくれェにゃさ。どうよ?」
 
 オレの読み通り、ティンクはかなり揺れてるようだった。よっしゃ、もうひと押し!
「あ、でもやっぱマジで美味そうだな~? 頂いちまおうか?」
 そのダメ押しに、ティンクは動いた。オレが振りかざすフォークの魔の手から、皿ごとミルフィーユを救出する。振り下ろしたフォークはそのままテーブルに突き立って左右に震えていた。あ、やべ。修繕費請求されっかな?
 当のティンクは顔を赤くしながら、それでも後ろ手に皿を背中に隠す。修繕費には気が回ってねぇ様子だ。らっきー!
「契・約・成・立・だな♪」
 さりげなくフォークを引っこ抜くと、オレは満面の笑みでティンクを伺う。
『悪魔のミルフィーユ』さまさまだぜ!



「…最近、妙な悪徳商法が流行ってるみたいなの」
 咳払いを一つ。威厳を正したつもりだろうが、そのクセちらちらとミルフィーユに目を奪われている。どんだけ人気なんだ、コレ? まあいいや、オレもそこらにゃ目をつぶろう。仕事仕事!
「ほほう? 珍しいな。天下の盗賊ギルドも、お手上げってか?」
 オレの問いに、ティンクは憮然として言葉を返す。
「悔しいけど、アンタの言うとおりよ。犯人がどこから来てどこに逃げてるのか、皆目見当がつかないの」
「ふんふん。んで肝心の悪徳商法ってのは、具体的にゃどんな手口で?」

「まずは占い師のカッコで現れて、不吉な占いをする。その上でこう言うの。『占いを覆したければ、この薬を飲め!』ってね。どう見てもただの水なんだけど、やたらと高価。でもそれを飲まなきゃ、本当に不運に見舞われる」
「ほうほう、聞きゃ聞くほどうさんクセェな」
 オレの感想に、ティンクは頷きながら一枚の人相書きを机に広げる。鼻先に大きなホクロがある、陰気で底意地の悪そうな顔つきのババアだ。
「なんでェ。人相書きまでできてんのかよ? しかも、ンな特徴てんこ盛りの。なら、ソッコーで捕まんじゃねぇの?」
「言ったでしょ? 目撃者…というよりも被害者は多いのよ。でも…」
「犯人は消え失せて、捕まらねェってわけか」
 ティンクは苦々しく頷く。 そして妖艶な笑みを浮かべた。
「別にウチとしては、悪徳商売されたところで一向に構わないのよ? ただ…うちのシマで好き勝手するなら、上納金を払う義務が生じるって事を思い知らせてあげるのが親切って奴でしょ? もし逃げようとしたら…わかってるわね?」
  けけ、おっかねぇなァこの情報部長サマ。ったく…こりゃ自警団に捕まったほうが犯人の身のためだな。


「数日後、奴は同じ場所に現れる。そして、例の『水』を買わせるの。そこに人を張らせればいいんだろうけど、その頃には困り果てた被害者が『水』を買うためにわんさか集っていて捕縛の妨害をする」
 ティンクは上目遣いで見上げて来るが、オレはフンと鼻を鳴らした。ロリコンの気があるなら一発で陥落なんだろうが、流石にオレもストライクゾーンってやつがある。コラ、誰だ? オレを節操なしと誤解してやがるのは?!

 …まあいいや、話を戻そうかね。
 手口からして、十中八九単独犯。一人で荒稼ぎしてどこかに逃げようとしているとしたら…次に出た時が捕縛のリミットということだ。
 欲をかいた挙句にカラクリを見破られたら、それこそ終わりという荒い手口。

  ココはオレの腕の見せ所かね?
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最強すぎて無職になりましたが、隣国の姫が勝手に嫁入りしてきました

eringi
ファンタジー
平凡なサラリーマン・佐藤亮は、満員電車で謎の光に包まれ異世界へ転移する。神様から「世界最強の力」を授かったはずが、本人はただの無職ニートとしか思っていない。冒険者ギルドで雑用を請け負う日々。そんな亮の周囲に、冷徹な騎士姫、天才魔導士、元盗賊の少女、竜人族の戦士など個性豊かな美少女たちが自然と集まってくる。一方、彼を「ただの運のいい凡人」と侮る貴族や悪徳商人たちは次々と痛快なざまぁ展開に。亮は「俺なんて大したことないのに」と呟きながら、気づけば国を揺るがす陰謀を解決し、世界を救うことに――。無自覚最強主人公による、爽快ハーレムファンタジー開幕!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...