果てなき輪舞曲を死神と

杏仁霜

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第六夜

生と死の狭間で

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未明 

 執事さんが、泣いている。
 図書室に倒れた、俺の亡骸を見て。
 
「ここまで…ここまで来たというのに…!」

 既に息をしていない俺を抱き上げ、彼は涙をこぼしつつ棺に横たえる。そしてそこに、俺の名を刻んだ。

『明晰なる駒、カシアン・ライトミンスター』

 ライトミンスター…ああ、俺が育った孤児院の名だ。そう、孤児院…。

 そうだ…真相に辿り着いた、ようやくのことで、真相に辿り着いたというのに…!
 死んでいる場合なんかじゃないだろう! 今すぐ…今すぐに、伝えなくてはならないんだ!


 いつの間にか、俺の前には広い河が流れていた。
 これが、この世とあの世を分ける河なんだろうか? ということは、もうじき渡し守が来ることだろう…。

「なんでこんなところに来てるんだ、お前は!」

 歩を踏み出しかけたその時だしぬけに、懐かしさを覚える大声が俺の意識を引き戻した。
「…え…?」
 振り返ると同時に、ものすごい力で頰を張り飛ばされる。
「!」
 死にかけているが故か、痛みはそう感じない。だがそれ以上に、驚くべき人影がそこに立っていた。

「オリ…バー…?」

 河原に倒れかかった姿勢のまま、俺は相手を見て驚愕する。

 見上げる長身に、恵まれた体格。さっぱりと切り揃えた赤い髪。だが見慣れた快活な笑みはそこにはなく、厳しい目を俺に向けている。
「馬鹿野郎、何やってるんだ! あっさりと死んでんじゃねぇ!」
 俺はただ呆然として、相手を見つめることしかできなかった。

「ティアラさんが待ってるんだろ! シュゼット嬢だって、救えるだけの手駒を揃えたんだ。さっさと戻れ! 戻って、俺の分まで救って来い!」

「オリバー…君は…!」
「ああ。俺はもう戻れない。だが、お前は違う。まだ戻れるんだ。さっさと行け、行って…を片付けて来い!」

 彼の言葉が遠くなってゆく。視界が、ぐにゃりと歪む。
「討ってくれるんだろ、俺の仇? 誓ってくれたの、嬉しかったぜ」
 
 遠くなる彼の姿。最後に浮かべた快活な笑みに、俺は叫び返した。

「ああ、必ず! 必ず仇は討ってやる! だから…」

 安心して、眠ってくれ…。



 そして…。
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