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第二章 藤咲美結
~友達1~
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見せてもらった洋服の中から選んだのは、一番質素な大人しいデザインのワンピース。
私は断ったが季乃璃はあげると言ってきかなかった。欲しいという気持ちは正直あったから、結局貰うことにした。
季乃璃の部屋は私の部屋の何倍も広く、高校生が暮らしているとは思えないほど大人っぽいデザインで統一されている。
「季乃璃ちゃんはどこの学校に通っているの?あなたも高校生なんでしょ。」
「季乃璃でいいよ。……私は学校には行っていないの。昔から体が弱くてね」
「そう…じゃあずっと1人だったの?」
「そうよ。だからせめて誰かと仲良くなりたくて、いつもバルコニーにいるの。だから、美結ちゃんがいい人で良かった」
真っ直ぐ私を見つめる季乃璃を見ていると、なんだか照れくさかった。
「別に私はいい人じゃないよ」
「いい人だよ。だって私と一緒にいてくれるもの」
「え?そんなの普通でしょ」
「違うわ。少なくとも私の周りにそんな人はいなかった。」
そう言って季乃璃は一冊のアルバムを取り出した。
「母に無理を言って中学校だけは通わせてもらったの。どうしても行ってみたくて。…でも周りの人達は私に近寄らなかった。私の家が“布崎”だから。私が…お嬢様だから。
私はただの人間に過ぎないのに……。
私に近づいてくる子達には下心があった。お金が欲しいとか、そんな人ばっかり。それで怖くなって高校には行ってないの」
「そう…」
「でも不思議。美結ちゃんと話すのは全然怖くないの」
季乃璃はにっこりと微笑んだ。
特別な何かを持つ人は、当たり前の何かが欠けているんだ。
私が普段当然のように思っているものでも、季乃璃にとっては何よりも欲しいものだっただろうに。
「……ねぇ。また…遊びに来てもいい?」
「え?」
季乃璃は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに満面の笑みを浮かべた。
「えぇ。もちろんよ。いつでも来て」
「じゃあ約束。ずっと友達でいてくれる?」
「こちらこそ。離れていかないでね」
「うん」
高校生になって、あえて言葉で『友達になって』と伝えるのは中々恥ずかしいものだ。
普通なら自然と一緒にいるようになった人が『友達』だから。
私は断ったが季乃璃はあげると言ってきかなかった。欲しいという気持ちは正直あったから、結局貰うことにした。
季乃璃の部屋は私の部屋の何倍も広く、高校生が暮らしているとは思えないほど大人っぽいデザインで統一されている。
「季乃璃ちゃんはどこの学校に通っているの?あなたも高校生なんでしょ。」
「季乃璃でいいよ。……私は学校には行っていないの。昔から体が弱くてね」
「そう…じゃあずっと1人だったの?」
「そうよ。だからせめて誰かと仲良くなりたくて、いつもバルコニーにいるの。だから、美結ちゃんがいい人で良かった」
真っ直ぐ私を見つめる季乃璃を見ていると、なんだか照れくさかった。
「別に私はいい人じゃないよ」
「いい人だよ。だって私と一緒にいてくれるもの」
「え?そんなの普通でしょ」
「違うわ。少なくとも私の周りにそんな人はいなかった。」
そう言って季乃璃は一冊のアルバムを取り出した。
「母に無理を言って中学校だけは通わせてもらったの。どうしても行ってみたくて。…でも周りの人達は私に近寄らなかった。私の家が“布崎”だから。私が…お嬢様だから。
私はただの人間に過ぎないのに……。
私に近づいてくる子達には下心があった。お金が欲しいとか、そんな人ばっかり。それで怖くなって高校には行ってないの」
「そう…」
「でも不思議。美結ちゃんと話すのは全然怖くないの」
季乃璃はにっこりと微笑んだ。
特別な何かを持つ人は、当たり前の何かが欠けているんだ。
私が普段当然のように思っているものでも、季乃璃にとっては何よりも欲しいものだっただろうに。
「……ねぇ。また…遊びに来てもいい?」
「え?」
季乃璃は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに満面の笑みを浮かべた。
「えぇ。もちろんよ。いつでも来て」
「じゃあ約束。ずっと友達でいてくれる?」
「こちらこそ。離れていかないでね」
「うん」
高校生になって、あえて言葉で『友達になって』と伝えるのは中々恥ずかしいものだ。
普通なら自然と一緒にいるようになった人が『友達』だから。
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