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第一章 藤咲美結
~屋敷1~
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夏休みも終わり、今日から2学期になる。
9月は秋だなんて言われるが、そうは思えないほど暑い。
「美結!久しぶり」
校門付近で縁が話しかけてきた。
「久しぶり。夏休みの間あまり遊べなかったね」
「ほんとにね。でもやっぱり夏休みはすぐに終わるなー。後1ヶ月くらい欲しかった。」
「どれだけ長くても新学期にはそういう事言ってるでしょ」
「……まぁそうだけど」
そう言う縁は眠そうにあくびをしている。
彼女は秋野縁といい、高校に入学してから仲良くなった。元々誰とでも仲良くできるタイプの子だったけど、いつの間にか一番の仲良しは私になっていた。
今年度も同じクラスになった。
縁の家は父子家庭らしく、家事を分担しているからしょっちゅうは遊べない。
縁くらいしか友達と呼べる相手がいない私にとって、彼女がいないと暇になってしまう。
「そうだ。今度美結と一緒に行きたいところがあって…」
「行きたい所?」
思わず聞き返した私を見て、縁は笑った。
「ちょっと離れたところにあるんだけど……。ここのカフェに行きたいの」
縁がスマホでカフェのホームページを開いた。
「わぁ!オシャレなお店。でも、少し遠いね」
「そうなの。……ここ、お父さんの大切な場所の1つなんだって」
「お父さんの?」
「うん。お父さんが昔住んでた村の近くにあって、よく行ってたんだって」
「へぇ……。今度行こっか」
「うん!」
縁は嬉しそうに頷いた。
私は「お母さんは?」と聞きかけたが口を閉じた。
縁があまり触れないことを聞くのは悪いと思ったから。
言葉を濁したり、誤魔化すような仕草をされた場合、それは“聞かれたくない。聞かないでほしい”と言っているようなものだ。
それをわざわざ「何で?」と聞けるわけがない。
誰にだって触れられたくない部分がある。
私は……時々視界がおかしくなることがある。
突然赤っぽく、濁って見えるのだ。
こんなこと、誰かに話せない。
“そんなわけない”と笑って流されるだけだ。
別に縁のことを信じていないわけじゃない。話したくないだけで嫌いっていうわけでもない。
自分の中だけに置いておきたいものがある。
それを聞き出したいという素振りを見せられたら……その途端相手のことが不快に思えてくる。
それが積み重なって起こる感情が“嫌い”というのかもしれない。
9月は秋だなんて言われるが、そうは思えないほど暑い。
「美結!久しぶり」
校門付近で縁が話しかけてきた。
「久しぶり。夏休みの間あまり遊べなかったね」
「ほんとにね。でもやっぱり夏休みはすぐに終わるなー。後1ヶ月くらい欲しかった。」
「どれだけ長くても新学期にはそういう事言ってるでしょ」
「……まぁそうだけど」
そう言う縁は眠そうにあくびをしている。
彼女は秋野縁といい、高校に入学してから仲良くなった。元々誰とでも仲良くできるタイプの子だったけど、いつの間にか一番の仲良しは私になっていた。
今年度も同じクラスになった。
縁の家は父子家庭らしく、家事を分担しているからしょっちゅうは遊べない。
縁くらいしか友達と呼べる相手がいない私にとって、彼女がいないと暇になってしまう。
「そうだ。今度美結と一緒に行きたいところがあって…」
「行きたい所?」
思わず聞き返した私を見て、縁は笑った。
「ちょっと離れたところにあるんだけど……。ここのカフェに行きたいの」
縁がスマホでカフェのホームページを開いた。
「わぁ!オシャレなお店。でも、少し遠いね」
「そうなの。……ここ、お父さんの大切な場所の1つなんだって」
「お父さんの?」
「うん。お父さんが昔住んでた村の近くにあって、よく行ってたんだって」
「へぇ……。今度行こっか」
「うん!」
縁は嬉しそうに頷いた。
私は「お母さんは?」と聞きかけたが口を閉じた。
縁があまり触れないことを聞くのは悪いと思ったから。
言葉を濁したり、誤魔化すような仕草をされた場合、それは“聞かれたくない。聞かないでほしい”と言っているようなものだ。
それをわざわざ「何で?」と聞けるわけがない。
誰にだって触れられたくない部分がある。
私は……時々視界がおかしくなることがある。
突然赤っぽく、濁って見えるのだ。
こんなこと、誰かに話せない。
“そんなわけない”と笑って流されるだけだ。
別に縁のことを信じていないわけじゃない。話したくないだけで嫌いっていうわけでもない。
自分の中だけに置いておきたいものがある。
それを聞き出したいという素振りを見せられたら……その途端相手のことが不快に思えてくる。
それが積み重なって起こる感情が“嫌い”というのかもしれない。
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