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第四章 第一の復讐
18話 最善
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「何か、気に障ることでもあったの?浮かない顔をしているわ。」
夕食中、神楽が話しかけてきた。
「…復讐を始めると、気分が良くなったり悪くなったり…。忙しいわ。だってまた嫌な人と会うんだもの」
「そういうものよ。けれど、それ以上に湧き上がるものもあるんじゃなくって?」
私はフォークをぎゅっと握りしめた。
「そうね。これからあの女が見せる顔を想像すると、思わず笑ってしまうわ。」
家族が死んだあの日から、笑ったことなんて無かったのに。作り笑いを除いて。
翌日、私は院長先生に会いに行った。
「杠様。ご指令通りにこの時間は院長室への立ち入りを禁止にしておきました。」
「そう、ご苦労様。忙しいのにごめんなさいね」
「お気になさらず。…それで、お話とは?」
「この間、小野真琴さんの資料をお願いしたでしょう?」
「はい」
私は院長にぐっと近づいた。
「小野真琴さんに出している薬、あれらを効果の低いものに変えて下さらない?」
「え、えぇっ!?薬を…ですか?いや、しかし…」
「そうね。徐々に弱ることは分かっているわ。」
「何故そこまで彼女にこだわるのですか?」
「貴方には関係ないわ。…それで?どうなさるの?」
「………」
院長はうなだれた。
私はにっこりと笑った。
「大丈夫。病院に迷惑をかけることはしないわ。いつも通り、最善の手を尽くしましたって言えば良いの」
翌日から、院長は私の指示通りに薬を変えた。
案の定、真琴は日に日に弱っていった。勿論、若菜に勘づかれないようにしてある。卑怯な頼み事をされた日から2週間も経っているし、分からないくらいゆっくりと弱るように調整済みだ。
そして、ついに私は直接動くことにした。
真琴が一人で起き上がれなくなった三日後、夜に真琴の病室に忍び込んだ。
手にしていたのは注射器。
中の液体は、ネットショップで買った毒薬だ。
私は点滴を一度外し、管から逆流させるように注射器の中身を注ぎ込んだ。
これで毒薬は点滴と混じって分からなくなる。
朝を迎える頃には、全てが終わるわ。
ごめんなさい、真琴さん。貴方に罪は無い。
ただ、私の復讐の為に利用させて貰うわ。
翌日、真琴は亡くなっていた。
若菜に伝えられたのはその日の昼。
若菜は職場から駆けつけた。
横たわる母親を見た若菜はその場に崩れ落ちた。
担当医は俯いて言った。
「申し訳ございません。最善を尽くしましたが…。」
その言葉を聞いた若菜は、担当医に掴みかかった。
「先生!!母を、治してくれるって……そう言ってくれてましたよね!?全部嘘だったんですか!?」
「嘘はつきません。私は医者として…」
「綺麗事はやめてください!どうせあなた方にとってたかが一患者なんでしょ!?あなたが、この病院が母を殺したのよ!…母を返して。返してよ!」
私は冷たい目を若菜に向けた。
あの日……。家族が死んだ日を思い出す。
あの日私は絶望した。絶望したけど…医者のせいにして怒鳴るような非常識では無かったわ。
私は若菜に言った。
「医者のせいじゃないわよ。それくらい分かってるでしょ。貴方は、医者を憎むことで楽になろうとしているだけ。」
「なっ。何よ!……ねぇ、私。頼んだよね?あんたも、分かってくれたじゃない。違うの?」
若菜は私を睨みつけたかと思ったら、突然擦り寄ってきた。
やれやれ。次はこっちか。
私はしゃがんで若菜を睨み返した。
「関係ない人に八つ当たりしたり、平気で誰かを傷つけるような貴方は、幸せにはなれないのよ」
「何…何のことなの。私が何をしたっていうのよ!!」
私は何も答えず、若菜の元を去った。
去り際、「お母さん!」と泣き叫ぶ彼女の声が聞こえた。
どう?若菜。
貴方は一生孤独のままでいればいい。
大事なものを無くした世界で一人、生きていけばいい。
あの日の私のように。
そして、そのまま死ね。
夕食中、神楽が話しかけてきた。
「…復讐を始めると、気分が良くなったり悪くなったり…。忙しいわ。だってまた嫌な人と会うんだもの」
「そういうものよ。けれど、それ以上に湧き上がるものもあるんじゃなくって?」
私はフォークをぎゅっと握りしめた。
「そうね。これからあの女が見せる顔を想像すると、思わず笑ってしまうわ。」
家族が死んだあの日から、笑ったことなんて無かったのに。作り笑いを除いて。
翌日、私は院長先生に会いに行った。
「杠様。ご指令通りにこの時間は院長室への立ち入りを禁止にしておきました。」
「そう、ご苦労様。忙しいのにごめんなさいね」
「お気になさらず。…それで、お話とは?」
「この間、小野真琴さんの資料をお願いしたでしょう?」
「はい」
私は院長にぐっと近づいた。
「小野真琴さんに出している薬、あれらを効果の低いものに変えて下さらない?」
「え、えぇっ!?薬を…ですか?いや、しかし…」
「そうね。徐々に弱ることは分かっているわ。」
「何故そこまで彼女にこだわるのですか?」
「貴方には関係ないわ。…それで?どうなさるの?」
「………」
院長はうなだれた。
私はにっこりと笑った。
「大丈夫。病院に迷惑をかけることはしないわ。いつも通り、最善の手を尽くしましたって言えば良いの」
翌日から、院長は私の指示通りに薬を変えた。
案の定、真琴は日に日に弱っていった。勿論、若菜に勘づかれないようにしてある。卑怯な頼み事をされた日から2週間も経っているし、分からないくらいゆっくりと弱るように調整済みだ。
そして、ついに私は直接動くことにした。
真琴が一人で起き上がれなくなった三日後、夜に真琴の病室に忍び込んだ。
手にしていたのは注射器。
中の液体は、ネットショップで買った毒薬だ。
私は点滴を一度外し、管から逆流させるように注射器の中身を注ぎ込んだ。
これで毒薬は点滴と混じって分からなくなる。
朝を迎える頃には、全てが終わるわ。
ごめんなさい、真琴さん。貴方に罪は無い。
ただ、私の復讐の為に利用させて貰うわ。
翌日、真琴は亡くなっていた。
若菜に伝えられたのはその日の昼。
若菜は職場から駆けつけた。
横たわる母親を見た若菜はその場に崩れ落ちた。
担当医は俯いて言った。
「申し訳ございません。最善を尽くしましたが…。」
その言葉を聞いた若菜は、担当医に掴みかかった。
「先生!!母を、治してくれるって……そう言ってくれてましたよね!?全部嘘だったんですか!?」
「嘘はつきません。私は医者として…」
「綺麗事はやめてください!どうせあなた方にとってたかが一患者なんでしょ!?あなたが、この病院が母を殺したのよ!…母を返して。返してよ!」
私は冷たい目を若菜に向けた。
あの日……。家族が死んだ日を思い出す。
あの日私は絶望した。絶望したけど…医者のせいにして怒鳴るような非常識では無かったわ。
私は若菜に言った。
「医者のせいじゃないわよ。それくらい分かってるでしょ。貴方は、医者を憎むことで楽になろうとしているだけ。」
「なっ。何よ!……ねぇ、私。頼んだよね?あんたも、分かってくれたじゃない。違うの?」
若菜は私を睨みつけたかと思ったら、突然擦り寄ってきた。
やれやれ。次はこっちか。
私はしゃがんで若菜を睨み返した。
「関係ない人に八つ当たりしたり、平気で誰かを傷つけるような貴方は、幸せにはなれないのよ」
「何…何のことなの。私が何をしたっていうのよ!!」
私は何も答えず、若菜の元を去った。
去り際、「お母さん!」と泣き叫ぶ彼女の声が聞こえた。
どう?若菜。
貴方は一生孤独のままでいればいい。
大事なものを無くした世界で一人、生きていけばいい。
あの日の私のように。
そして、そのまま死ね。
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