黄金竜のいるセカイ

にぎた

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第二章 大都市オルストン

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 涙で曇った瞳のバルが上目遣いでヒカルを見つめる。

 そんな顔、卑怯じゃないか……。

「原付の乗り方を教えてやるよ!」

 途端に、バルの目に光が入ってきた。ヒカルもさっそく原付バイクのカギに手をかける。

「まずは、ここにあるカギを回します。それから、左のブレーキを……ここを握りながら、下のこのボタンを押すんだ」

 原付バイクにエンジンがかかる。大きな音にバルは少しだけ驚いたけれど、すぐにきゅっと口を結んだ。

「やってみな」

 エンジンを切って、バルにバイクを差し出す。

「けっこう重たいから気を付けるんだぞ」
「は、はい」

 おっとっと……。
 言ってるそばから原付バイクに負けそうだ。ヒカルがとっさに支えてやると、バルがその手を払った。

「大丈夫。自分で出来るから」

 鼻声で強がる少年は、なんとか自力で原付バイクを安定させた。そして、ヒカルが教えた通りにやってみる。

「ここをこうして。このボタンを押す」
「違う違う。左のそれを握りながらだ」
「あ、そっか」

 ブルンブルン。エンジンがかかった。

「やった!」バルが満面の笑みでヒカルを見る。
「よし。じゃあ今度は実際に走ってみよう。一回俺が手本を見せるから、交代だ」

 説明しながら走り出すヒカル。バックミラーには、後ろから必死になって追いかけてくるバルが写っていた。

「イテテテ……」

 何度も転んだりはしたけれど、バルはなんとか原付バイクを運転できるようにはなったのだ。

 バルの体のあちこちに擦り傷が出来てしまった。元々ぼろぼろだった原付バイクにも。

「宿で休もう。明日から仕事なんだからさ」
「うん」

 コクリ、とバルはうなずいた。眠たいのだろう。頭が垂れたままだ。

 続きは明日だ。仕事終わりにでも迎えに行こうか、とヒカルは思っていた。メモとペンも手に入れたのだから、それまでは懐中時計と向き合おう。

 ようやく分るのだ。不思議な力を持った、この時計の内部が。ヒカルの胸は静かに高鳴っていた。

 大きな満月の下――しかし、闇は突然襲い掛かる。前触れもなく、予兆もない。気配を消して、幸せを粉々に壊そうと企みながら。

 カランカランカラン!

 町中に鐘の音が響いた。昼間に登った展望塔にある鐘だ。

 カランカランカラン! 

 鐘の音は止まない。さっきまで静かだった町が騒がしくなる。

「なんだ!?」

 バルも辺りをキョロキョロと見渡す。眠気が飛んだみたいだ。足音があちらこちらから聞こえてくる。悲鳴も聞こえた。

 カランカランカラン! 

 何を知らせるための鐘だっけ?
 ヒカルは、展望塔にあった鐘の説明文を記憶の中でさがしてみたけれど思い出せない。

 鐘の音に混じって、遠くから爆発の音が聞こえた。火薬の匂いも風に混じってやってくる。煙があがる。それもどんどん増えてきた。

 二人の目の前を兵士たちが掛けていく。何人も、何十人も、馬に乗った奴もいた。

 バルがぎゅっとヒカルの手を握る。

「あ!」

 思い出した。

 カランカランカラン!
 あの鐘は「敵襲」の合図だ!


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