黄金竜のいるセカイ

にぎた

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第四章 迷い山の地下神殿

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 照らされた大広間は、あたかも無限に広く感じられた。

 雄大はいずれ偉大へ。
 偉大はいずれ伝説へ。
 伝説はいずれ夢へ。

 夢は現実に起こり得ないからこそ夢なのだ、と何度も聞いたことはある。

 しかし、もし夢と現実の両方が存在するとなると、ヒカルの見るこの光景がまさしくそうなのではないだろうか。

 あたかも夢。あたかも現実。到底言葉では言い表せないほどの雄大で偉大で、夢物語のような大広間が、まさに今ら彼らの目の前に広がっているのだ。

 燃える小熊パッチによって、何十、何百もの柱が規則正しく、そしてずっと奥まで並んでいるのが分かった。

 柱には、一つ一つ装飾がしてあった。

 幾何学的な模様に、読むことのできない文字。そして、上へ登ろうとするかのように柱に巻き付く「竜」たち。

 誰が作ったのか。何のために作ったのか。そんな疑問など飛んでいけ。例え神が作ったと言われても、すんなり頷いてしまうほど、この大広間は神秘的であった。

 ヒカルは大広間のあちこちを歩いて回った。他の兵士たちも同じように、バラバラになって大広間を見ている様子だ。

 どこまで進んでも、パッチの炎が照らしてくれる。だからこそ油断があったのかもしれない。ずっと張っていた緊張の糸が緩んだから、ヒカルはリュックの中身よりも、目の前の珍しい光景しか見られなかった。

 ただ、ブリーゲルとウインだけは、ずっとパッチの側にいるようだ。

 二人の「脅し」のお陰でうるさく喚くことは無くなったけれど、それでも口は閉じないようで、ブツブツと不平不満を漏らしている。

 「解放されたら覚えておけ」だとか、「出ようと思えばすぐに脱獄できるんだ」とか。

 言葉の意味はヒカルには分からなかったけれど、そんなことはどうでもよかった。

――小熊のくせに。

 しばらく進むと、ヒカルは同じ方向に歩いていた「マフラー」が、柱に寄りかかって蹲っているところを見つけた。

 震えている様子で、彼もまた何やらブツブツ呟いている。

 声を掛けようとしたけれど、また怒られるかもしれないからやめた。明るくなったから、文字通り小言を言われるのが「目に見えた」のだ。

 ヒカルは早足で彼を追い越すと、この広間がどこまで続いているのか確かめようと考えた。パッチの炎がいかに明るくても、この大広間の隅っこまで綺麗に見えるほどではなかったのだ。

 それほどここは広く、そして偉大な雰囲気もあった。
 いったい、ここは山のどのあたりなのか。いったい、誰が何の為に拵えたのか。
 ヒカルのいた世界だってそうだ。古代エジプトだとか、インカ帝国、海に沈んだと噂だけのアトランティスだって、現代人には想像しがたい超文明を持っていた。

 憶測だけのロマンは人々の夢だ。過去も未来も関係ない。得体の知れない、という決まり文句には、不思議とロマンが込められている。

 宇宙や深海も同じ。どの時代のどこに行ったって、人々は未知の隙間を「情熱」で埋めたがるのだから。

 歩きながらヒカルはようやく疑問に気がついた。

――あの小熊はどこから現れたのか?

 くしゃくしゃに丸めて捨てたはずの記憶を広げて、シワを丁寧に伸ばして考える。

 だけど、ヒカルはついに歩くことを止めてしまった。そんな疑問なんかよりも、大きな疑問を見つけてしまったから。

 目の前の柱。他の物と一見同じように見えるそれに、どこかで見たことがあるような文字があった。

「アイ……エス……エー……エイチ?」

 柱の幾何学的な模様に沿って刻まれたその文字は、「i」「s」「a」「h」のような英語に似ていた。

 妙にデフォルメされ判断しにくく、一見はただの模様のようではあるけれど、「英語」のようにも見てとれる。

 はてな――。この文字が何を意味しているのか。
 続きの文字があるのか、と柱に刻まれたその文字をヒカルは手でなぞる。

 「h」に続く文字、もしくは「i」以降の文字はどこか。

 ザラリ、とした触感。ツルツルの、大理石を思わせる柱のはずが、嫌にトゲトゲしく感じた。
 それもそのはず、その「四文字」に続く文字があったであろう場所が、何者かによって削り取られていたのだ。

 ヒカルは一歩下がって柱を見つめ直す。
 柱に出来た三本の筋が、パッチの光によって照らされる。
 浮かび上がったそれらの筋は、どれもヒカルの背丈よりも長い。頭上高い場所から、地面にまで。

 爪跡だ。
 それも、人ではない巨大な何物かによってつけられたもの……。
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