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第十一章 運命の輪の中心に
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少年2人が白い渦に這入ると、まるで煙のように消えていった。
ウインはひとつ息を吐くと、左手の指輪を静かに光らせた。
「火を喰らってくれ」
現れたのは石盤女だった。彼女はパピーの村でやった時のように、パッチの放った火を勢いよく吸い込んでいき、やがては全てを食らい尽くした。
「ありがとう」
そして、石盤女は元の指輪へと帰っていく。火は消えた。焼け焦げた兵士たちが、ウインたちの前に横たわっている。
「どうした?」
ブリーゲルがウインの肩を叩いた。隣にいるパッチも不満を言うことはなく、ただいつも通りに戻ったウインを見ていた。
「そうだよね。僕たちは戦争をしにきたんじゃない。争いを終わらせに来たんだ」
――このセカイから争いをなくします。
サボテン岩で、パピーたちにそう宣言したヒカルを思い出した。
「行こう。他の砦村で衝突が起きる前に。多くの犠牲者を出る前に」
ウインがそう言ったまさにその時――近くの小屋が勢いよく破裂した。
それは、3メートルを超える巨体であった。人と同じ四肢に、体の割には小さな頭。顔には目や鼻、耳や口はないのっぺらぼうだった。鋼の体は、まるで液体のようになめらかで、左の胸には青白い光が丸く灯っていた。
まさかこれが……。ウインたちの直感が叫ぶ。
顔のないオニが叫ぶ。衝撃で散らばっていた木片と一緒に、アンデッド用の分厚いローブも数枚飛んでいった。
内に秘めたる幾体もの魂の鼓動。それらが混じり合い、さらに強大なパワーに。
オニは本当にいたのだ!
「パッチ!」
ウインが叫ぶと同時に、パッチは走り出していた。両手には最大の炎を宿し、パッチの本能も告げていた。こいつはヤバイ!
そして放った渾身の右腕がオニの顔に命中――しかし、オニの体は微塵も動かなかった。
「え?」
黄金のモグラを殴ったほうが、いくらか手応えはあった。そのままパッチはオニに吹き飛ばされ、地面に激突する。まるでハエだ。オニは容易くパッチの攻撃を受け、そして払いのけた。
よろよろと立ち上がろうとするパッチの顔に、驚きと不安の表情が滲む。こいつは本物だ、と。
オニはパッチに見向きもせず、グラダの前線――保護派と討伐派が争う方へ顔を向けた。パッチは払い終えた。敢えてとどめを刺すことも必要ない。
そして、消えたかと思うくらい高く、速いスピードで跳び跳ねると、一気に前線へと向かっていった。
呆気にとられていたウインたち。これは挟み討ちどころではない。このままでは、オニは本当に黄金竜を討伐してしまう。
◯
――白い渦を抜けた先にヒカルはいる。
そのはずが、バルとウタは瓦礫の山――オルストンにいた。
黄金に輝く竜。
大きな大きな黄金竜は、瓦礫の山の中心にて、眠るかのようにじっと翼を休めていた。猿、蛇、そして大群の昆虫の鱗に守られながら。
オルストンに戻ってこれた。
ノリータのアンデッド軍に拾われた時と同じように、オルストンの空は鉛色の――それよりもずっと濃く、分厚い雲が広がっていた。
「見た?」
「……うん」
バルとウタが顔を合わせて、今、目の前で起こったことの真偽を確認しあってみせた。君もみたよね? うん、確かに見たよ。
ウインは嘘をついていなかった。白い渦を抜けた先にはヒカルが確かにいた。知らない女性と瓦礫の上を歩いていていた。眠る竜に向かって。
でも、突然、ヒカルは消えた。なんの前触れもなく。一瞬で。
(第十二章へ――)
ウインはひとつ息を吐くと、左手の指輪を静かに光らせた。
「火を喰らってくれ」
現れたのは石盤女だった。彼女はパピーの村でやった時のように、パッチの放った火を勢いよく吸い込んでいき、やがては全てを食らい尽くした。
「ありがとう」
そして、石盤女は元の指輪へと帰っていく。火は消えた。焼け焦げた兵士たちが、ウインたちの前に横たわっている。
「どうした?」
ブリーゲルがウインの肩を叩いた。隣にいるパッチも不満を言うことはなく、ただいつも通りに戻ったウインを見ていた。
「そうだよね。僕たちは戦争をしにきたんじゃない。争いを終わらせに来たんだ」
――このセカイから争いをなくします。
サボテン岩で、パピーたちにそう宣言したヒカルを思い出した。
「行こう。他の砦村で衝突が起きる前に。多くの犠牲者を出る前に」
ウインがそう言ったまさにその時――近くの小屋が勢いよく破裂した。
それは、3メートルを超える巨体であった。人と同じ四肢に、体の割には小さな頭。顔には目や鼻、耳や口はないのっぺらぼうだった。鋼の体は、まるで液体のようになめらかで、左の胸には青白い光が丸く灯っていた。
まさかこれが……。ウインたちの直感が叫ぶ。
顔のないオニが叫ぶ。衝撃で散らばっていた木片と一緒に、アンデッド用の分厚いローブも数枚飛んでいった。
内に秘めたる幾体もの魂の鼓動。それらが混じり合い、さらに強大なパワーに。
オニは本当にいたのだ!
「パッチ!」
ウインが叫ぶと同時に、パッチは走り出していた。両手には最大の炎を宿し、パッチの本能も告げていた。こいつはヤバイ!
そして放った渾身の右腕がオニの顔に命中――しかし、オニの体は微塵も動かなかった。
「え?」
黄金のモグラを殴ったほうが、いくらか手応えはあった。そのままパッチはオニに吹き飛ばされ、地面に激突する。まるでハエだ。オニは容易くパッチの攻撃を受け、そして払いのけた。
よろよろと立ち上がろうとするパッチの顔に、驚きと不安の表情が滲む。こいつは本物だ、と。
オニはパッチに見向きもせず、グラダの前線――保護派と討伐派が争う方へ顔を向けた。パッチは払い終えた。敢えてとどめを刺すことも必要ない。
そして、消えたかと思うくらい高く、速いスピードで跳び跳ねると、一気に前線へと向かっていった。
呆気にとられていたウインたち。これは挟み討ちどころではない。このままでは、オニは本当に黄金竜を討伐してしまう。
◯
――白い渦を抜けた先にヒカルはいる。
そのはずが、バルとウタは瓦礫の山――オルストンにいた。
黄金に輝く竜。
大きな大きな黄金竜は、瓦礫の山の中心にて、眠るかのようにじっと翼を休めていた。猿、蛇、そして大群の昆虫の鱗に守られながら。
オルストンに戻ってこれた。
ノリータのアンデッド軍に拾われた時と同じように、オルストンの空は鉛色の――それよりもずっと濃く、分厚い雲が広がっていた。
「見た?」
「……うん」
バルとウタが顔を合わせて、今、目の前で起こったことの真偽を確認しあってみせた。君もみたよね? うん、確かに見たよ。
ウインは嘘をついていなかった。白い渦を抜けた先にはヒカルが確かにいた。知らない女性と瓦礫の上を歩いていていた。眠る竜に向かって。
でも、突然、ヒカルは消えた。なんの前触れもなく。一瞬で。
(第十二章へ――)
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