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⑫飛べた

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生まれてからもう2か月と半分ぐらいは立った今日この頃
旅行から帰ると私はこそっと出て使用人の話しを盗み聞きするようになった。


そもそも、何故盗み聞きと言える位見つからないように出来たのかというと、
そう、なんと!瞬間移動が出来るようになったのである。
私が夜中にちょっとお腹が空いて食堂に行きたいなあと頭いっぱいに思っていたら、
内側から何かこうっ湧き出る感じ?がしたと感じた途端
食堂の扉の所に行けたのである。
びっくりして私は部屋に戻りたいと思ったら戻れたのである。
今日はノエルと一緒に寝ていたが、運よくノエルは起きてなかったらしい。
よかったと安堵していたら、体の力が無くなり私はそのまま寝た。

その後、なかなか目が覚めない私に気が付いたアンナが急いで主治医を呼び
ちょっとした騒動になってしまった。
どうやら魔力を使いすぎたらしい。瞬間移動もどきは結構魔力を消費するみたいだ。


そして、今も盗み聞きの真っ只中である。

「ご主人様はこの頃うれしそうですね。」
「屋敷全体が幸せな雰囲気だ」
「ノエル様とモナ様が変えてくれたみたいですね。」

どれもかれも、結局聞けない。
やっぱり自分の家だと黒龍を怖がらせてる理由をいう人なんていない。
それに、やっぱり外に行かないと分からないのかなあ?
そして、すぐに部屋へ戻った。
今の所一日に一回瞬間移動をしただけでヘトヘトになった。
これは結構疲れて何も出来なくなる上に家族に心配かけそうだ。
現に今も疲労困憊でなんかやばい気がする。
この頃、瞬間移動していた私は頻繁に倒れるのが増えてしまい
家族全員過保護になってしまい、常に見張られる...見守られるようになった。
まずは、やはり飛ぶ練習が先決みたいだ。暫くやめておこう。
そう反省したにもかかわらず結局今日もバッタリ倒れてしまい心配された。

そして現在に至る。
つまり、私のパパの執務室に連れていかれたのだ。
心配のあまりパパが様子を見るようになったのだ。
だが、毎日毎日同じ光景の繰り返しである。
ずっと紙切れの音やペンで書く音そして、
たまにパパが私を見てニコッと笑う。このエンドレスである。
私は暇でたまらなくなり、この頃毎日毎日飛ぶ練習をしばらくしていた。

「飛ぶ練習は焦らずゆっくりでいいんだよ。
 私も飛ぶのは遅かったんだよ。」
そして、合間合間にパパが休憩がてら私の傍にきて毎日撫でながら言うのだ。




でも、今日はこの頃休んでいたせいか体の調子がいい気がする。
私はできる気がして集中した。
必死にトイレで踏ん張ってるように身を丸くしてブルブルと震えながら、
私の魔力を引き出すようにイメージした。


実は瞬間移動してる時に自分の魔力を外に出す感覚は少しつかめたのである。
はたから見たら思いっきり猫が逆なでしてるような姿だっただろう。
自分の魔力を精一杯振り絞って出すイメージをした途端。
私は天井へピンポン玉が跳ねるようにぶつかって地面に落ちた。

「モナ大丈夫かい?」
すぐに駆け寄ったパパは私の体を触りまくり大丈夫か確認した。
こういう時やはり、結構な勢いで天井にぶつかったがドラゴンだから無傷だった。
少しは成長してるみたいだ。生まれたばかりより皮膚も硬くなったような気がする。
私はパパの手から逃げまたトイレに踏ん張る体制に戻った。
表現がちょっと嫌だが私の姿はまさにそんな姿なのである。
ちょっと、落ち込みながらも必死に私は踏ん張った。

「ふふふっつモナはやはり、私の子だね。
 私も負けず嫌いで何度も何度も練習したよ。
 父上に大丈夫だよと言われながら...。モナ、天井に当たった事は覚える?」


「ピーーーーーーー」
天井に当たったって事は飛べたって事よね!
私は翼をバサバサしながら興奮してきた。


「そう、飛べたんだよ。落ち着いてもう一度してごらん。」



私はもう一度深呼吸して目を閉じた。
私は食堂に行きたくて瞬間移動ができた時の事を思い出した。
あの時は、私は寝る前にリラックスしていたよね。
魔力を引き出す感じで.......。
するとゆっくり、ゆっくりとファサッと自然と浮いた。
目を開けると膝をついていたパパの顔の前で浮いていた。

「ピピピピピ」
私は大きい目をパチパチしながら喜んだ。
そして、翼を動かしたら横に動けた。興奮して部屋を一周すると
電池が切れたようにストーンと落ちたがパパの腕の中だった。

「おめでとう!モナ。」
私はそうつぶやきながら笑っている父の中で眠りについた。
これで、やっと飛べるんだ!外にも行ける!
もっともっと外の世界を見れると思いながら....。
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