私の大好きなドラゴン

どら娘

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遭遇からの

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ポカポカと気持ちの良い寝心地で
朝だなあとぼんやり考えながら
私はゆっくり目を開けるとオジさんと目があった。
いつも寝起きが悪く寝坊する事が多いのにオジさんは
しっかりした眼差しで私を見ていた。

「起きたか?ぐっすり寝れてよかった。
 俺は感傷的なのは苦手だから最後に手短に言う。
 何度も言うが、お前の帰る場所は俺とゼガンの所であり
 俺とゼガンの帰る場所もライルの所だ。
 必ず迎えに行く。それだけは覚えとけよ、分かったな。」

私はオジさんの手を取り私の両ほほに持っていき
私もオジさんの無精ひげを生やしたホホを両手に挟み
まるで忘れないように、何度も何度も触った。
そして、オジさんの手を私のホホにのせた。

「忘れるなと言ってるのか?
 お前がしゃべれねーでも分かるよ。」

私は何で分かるんだろうと思いながらびっくりと目をパチパチさせながら
オジさんを見た。

「忘れるわけねーよ。
 それに、お前の鼻水だらけのぐちゃぐちゃの顔を忘れるわけねーだろ!」


私は寂しい気持ちの方が強いのかいつもは怒ってしまうけど、
心配かけないように笑顔を向けた。
(私今笑えてるよね...。強くならなきゃ)

「おっ!笑えたな。これで今までより強くなったな。
 これから辛い時や寂しい時こそ笑え。気分も上がるし
 きっとお前だったら周りの奴らも助けてくれる。
 暗くなったり、卑屈にだけはなるなよ。
 泣きたい時は俺かゼガンの前だけにしろ。」
 
「ちょっと!私を抜かさないでよ。」

オジさんと話していたらすかさず、サクラが声をかけてきた。

「そうだったな。サクラの前ではいい。
 まーとにかく笑え」

やはり、いつもの大雑把なオジさんが一番だと思いながら
私は心の底から笑っていた。


何だかんだで時間がたつのが早く、
あっという間に出発の時を迎えた。
洞窟の前でオジさんとお兄ちゃん
ちびとコーンちゃん勢ぞろいで私を囲むように見送ってくれた。

「いってこい!サクラ頼むぞ!
 ライル分かってるな!」

私はあまりいると踏ん切りがつかないと思い小走りしながらサクラの元へ行き、
クルッと振り向いて満面の笑みでグットのポーズをしてサクラに乗って出発した。


「おい.....ゼガン、ライルの親指を出した手を
 握ってかざした意味は分かるか?」

「嫌、だが笑っていたからそれで良いんじゃないか?」

「ああ、そうだな。笑っていればいいな....。」

私はグットのポーズがこの世界で通用しないとこの時は知らなかった。







しばらく私とサクラは一点の曇りもない青空が広がる中
無言のまま飛んでいた。





すると突然森林が広がる地上のほうから
とても苦しそうな、悲しそうな雄叫びが聞こえてきた。
下を見ると何か黒い煙みたいなものが漂っていた。
サクラが下降して近づいてみると紫色のドラゴンが苦しそうにもがきながら
周りの木々を倒し暴れたせいか、ドラゴンを囲むように空き地になっていた。
よく見ると体全体を覆う黒ずくめの男がドラゴンを囲むように数人立っていた。




「サクラ紫色のドラゴンが鳴いてるみたいだよ。とても苦しそうだよ。
 降りてみよう。」


「私よりは小さいけど、大型ドラゴンだし
 怪しい人間もいるから危ないわよ。
 それに寄り道したら時間がかかってしまうわ。」


「でも苦しそうに鳴いてるよ。」


「しかたないわねえ。ちょっと待ちなさい。
 まずは、怪しい人間をどうにかするわ。
 ライルは私の背に身を低くして隠れてなさい。」


そうゆうとサクラは口から矢のような鋭い光線を
雨のように降り注ぐように地上へ放ち、
怪しい人間を1か所に集めるように誘導した。


「あなたたち何をしてるのよ。
 あからさまに怪しい奴らね。目障りだから消えなさい。」

サクラは威嚇しながら、男達をこちらに近寄らせないように炎を吹いた。



「こんなに都合よくまた1匹ドラゴンが現れるとは...。
 だが、こちらに分が悪い状況だな。
 まあ良い、計画は成功しつつある。
 あとは紫のドラゴンの亡骸を葬り去る事だけだ。」


「去れ」


黒ずくめの男の中で一番背の高い男がそう一言いうと
傍に控えていた数人の男達が何か呪文を唱えるように
ボソボソと言ったかと思うと黒い煙が周りを囲うと
スーッと背の高い男以外の数人の男達は忽然と消えていった。

「さて、2匹とも転移してしまうが
 もったいないが...。まあいい。
 今回は亡骸さえここに残らなければ...上々。」

その男が、またボソボソと呪文を唱えたら周りが異様な地響きが立ち、
周りにうっすらと光の粉が蛍の光のように浮かび上がってきた。

「ではあの世で、ドラゴン達よ。」

そう一言言ったら、黒ずくめの背の高い男は何か唱えたら消えた。
消えた後も光の粉が増えてき始めたころ、思い出したかのように
紫のドラゴンが暴れだした。

「そこのおちびさん何を怒ってるの?
 それとも痛いのかしら......。っと」


紫のドラゴンは鳴きながら口から光の玉をサクラにぶつけてきた。


「危ないわね。こうなったら実力行使と行くわ。」


サクラは何か魔力みたいな光を体にまとい体全体を紫のドラゴンを
覆いながら力をねじ伏せるように押さえつけた。


「何か変な匂いがするわ。何か飲まされたのかもしれないわ。
 この子から変な黒い霧も出てるし....。」

その紫のドラゴンは押さえつけられても
暴れようとしたがサクラは有無を言わせないぐらい力押しでさらに押さえつけた。
やはり、サクラは伊達にいつも自分で自画自賛するぐらい圧倒的に強かった。

「サクラ下して、この子とても苦しそうだもの。
 私治せるかもしれない。」

「また暴れるかもしれないわよ。
 だいたい、結構時間が経ってるし遅れちゃうわよ。」

「サクラ.......」

「分かったわよ」


私は地面に卸してもらい、先程の紫のドラゴンのそばに立った。
大きい小さいの定義は良く分からないが、
そのドラゴンはちょっと小さめのドラゴンだった。
まあサクラが体長8m~9mとしたらその半分ちょい6mといった所だ。
アメジストのような紫の鱗が一つ一つ神秘的に輝いてるが
鱗の間から不気味な黒い霧みたいなのが出ている。

私はちびを治した時を思い出し、このドラゴンが治るように願い、
ふと体中に何かめぐってるように感じながらドラゴンの中の
うごめく黒い悪いものを押し出すようにイメージしながら
ひたすら良くなる事だけを祈った。
するとこのドラゴンから黒い靄が逃げるように体中のうろこの間から
出てきて消えていった。
先程まで隙があれば襲い掛かるような雰囲気だったが、
スースーとまるで深呼吸してるかのように落ち着き大人しくなった。



私は紫のドラゴンの顔が見える方へ移動して話しかけた。

「とても苦しかったでしょう。もう大丈夫よ。
 ドラゴンも色々な性格がいるように人間も
 いい人間と悪い人間がいるのだから、全てがさっきの人達だけじゃないのよ
 誤解しないでね。人間を嫌わないでね。」


覗き込んでドラゴンを見ると、引き込まれそうで何も濁ってない
透き通った紫の目で見つめられた。


「あなたは、とてもキレイな目をしてるわ。
 これからも、そのままで、ありのままのあなたでいてね。」
 

「あなたライルが助けたんだからまっとうにありがたく生きなさいよ。
 あなたも分かってるだろうけど
 私達の世界は弱い者が死に、強いものが残るのよ。
 あなたを治すことなんてライルしかできないわ。
 自分の幸運を喜びなさい。
 当事者に恨みを晴らすならともかく
 助けてもらったんだから関係ない人間に復讐なんて思わないで頂戴。
 まあ人間のためではなく、助けてもらったライルのためにね。」 





すると突然、先程の光の粉が舞っていたのに急に固まりだし
ライルと二匹のドラゴンを囲むように光の柱が立ち始め壁を作り空へ垂直に解き放った。
すると突然眩しくなったと思ったら、
気が付けば、そこは先程いた場所と全く違う世界が広がっていた。
まるで私がこの世界に来た時みたいに
そう、さっき迄青空が広がり森林の中にいたのに、.......。




辺り一面の真っ白な白銀の雪の中だった。



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