私の大好きなドラゴン

どら娘

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別れの不安

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私はいつも来る川辺に座ってぼーっと座っていた。

(やっぱり此処にいたか)

私は声が聞こえる方へ頭を上げてオジさんを見つめた。
するとオジさんは私の頭をポフポフッと撫でた後
しゃがみ込み明るい調子で言った。

(おいおい勘違いすんなよ。
 置いていくんじゃなく”預ける”んだ。
 ちょっと仕事が入ってなあー
 しばらくかかる上にちょっと危険なところなんだ。
 必ず迎えに来るから待っていてくれねーか。
 早くなるかも知んねーし遅くてそうだなあー1年
 何とも言えねえけど。
 なあ、ライル、俺とゼガンが帰る所はお前の所だけだ。
 帰ったらお前の我がまま全部叶えてやるから待っていてくれ。)

私は口を結びながらも、オジさんに手を広げた。
オジさんは私を抱えしばらくの間、背中をポンポンとして
お互い黙って抱きしめていた。

そんなシンミリとした雰囲気を壊すかのように
空から旋回してサクラが話しながら降りてきた。

「ちょっといいかしら。
 何よ!今生の別れみたいに。
 ライル、ゼガンは強いからちゃっちゃかと、
 やっつけてすぐに帰ってくるわよ。
 それに、カイルもゼガンも
 あなた一筋で一途だから、浮気の心配は無いから心配無用よ。
 何よりこれからは私が一緒なのよ。私との時間も大切にして頂戴。
 私だってジェラシーを感じるのよ。

 カイル、このまま私は伝言を伝えに御ばば様の所に
 行ってくるから明日か明後日には来れるわ」


「ライルちびとコーンにも挨拶しとくと良いわ。
 いつ帰れるかハッキリわからないから。
 御ばば様の所は此処から通える所ではないもの
 私はさっき話したわ。二人にもっと強くなりなさいってね!
 じゃーまた迎えに来るから」


サクラは話したら空へ飛んで行った。
私はオジさんに抱えながら二人して無言で洞窟までゆっくり歩きながら戻った。



その日の夕食後に私はお兄ちゃんの座ってるところに行った。
そういえばお兄ちゃんとも離れるんだ。
急に別れが来るなんて悲しいよ。
遅くて1年って長いよ。一緒にいた時間より長いなんて。


「お兄ちゃん、早く迎えに来てね。
 でも無理して体を壊しちゃ駄目だからね。」

「必ず。」

「うん。待ってる。私がもし迷子になっても探し出してくれる?」

「もちろんだ.。」

「早く戻らなかったら私いっぱいいっぱいドラゴンを見つけて
 仲良くして探しに行くかもしれないよ。」

「ライルは浮気者だ。
 前から思ってたんだがセッソウナシと言うらしいが....。」

「だ・だ誰がそんなこと言ったのお兄ちゃん!
 セッソウナシの意味が分からないよ。何処が?」

「ライルは良く皆にチューをする。年長者がそうゆう者を指すと...。」

「前もその年長者の人の事言ってたよね。
 絶対違うもん。
 チューは私の癒しだし挨拶だもん。子供の特権だもん。」

私はもうなりふり構わず子供言葉で弁明した。
私はこんなにも人に甘えた行動は初めてかもしれない。
ちょっと言って恥ずかしくなってきた。
そんな中小さい声でお兄ちゃんが言った。


「......帰ったらしてくれるか?」


私は不安と悲しみといっぱい胸に押し込めながら
今の私はしてもらいたい、甘えたいから、
そして約束をしたら必ず帰ってくると願いを込めて
お兄ちゃんに涙をこらえながら言った。



「お兄ちゃんからして。いっぱい。
 その後私がしてあげる。待ってるから.....。
 約束なんだから。
 約束破ったら許さないんだから。
 来なかったら私が探しに行くんだから、...
 私寂しいと居なくなっちゃうかもしれないんだから
 早く帰ってきてね」



今日の私は本当に子供の駄々っ子みたいに
お兄ちゃんにしがみ付きながら泣き続けた。
泣き続けてる私を見かねたのかオジさんは声かけてきた。


「おい!ライル鼻水と涙とよだれを拭かねーと。
 顔が見れたもんじゃねーぞ」



(うーーーーっつ鼻水じゃないもん。涙だもん。)
私はオジさんが言った同時に怒りながらポコポコと体中を使って叩いた。


「それだけ元気だったら大丈夫だな。
 せっかく可愛いい顔だから笑え!」

私は可愛いという言葉にちょっと感動して笑顔になったとたん...。


「ああ!可愛いじゃなかった、鼻水だらけの顔のお前は、
 水も滴るなんとかって言葉があったな。ハハハ...。」


オジさんは単なる慰めるつもりで言ったかもしれないけど
やっぱり、もうちょっと言葉を選んで欲しい。
私の乙女心は鼻水と連呼されて
厭味ったらしいい言い方にプチとっと切れて笑顔で
私は抱っこの合図の意味を込めて両手を広げた。
オジさんがしゃがんだ瞬間私は二度目の、
今度は両指を使ってオジさんの顔に引っかきキズを作ってやった。




何だかんだあった夜だが、私は結局オジさんの
胸にしがみついたまま寝た。
それから、二日後にサクラが帰ってきた。

直ぐに帰って来れたらしいが、気を使ってくれたみたいだ。
オネエなサクラに感謝感謝だ。
多分普通のドラゴンは絶対気を使わないだろう。
お兄ちゃんとルカだけしか見てないから分からないかもしれないけど。

おかげで混乱していた私も丸一日オジさんとお兄ちゃんにくっつきまくって
不安ながらも覚悟を決めた。
もちろん、その間にちびとコーンちゃんともお別れの挨拶をした。

 
  
いよいよ明日はサクラと御ばば様?の所に行く日だ。
私もいい加減..................強くならなきゃ。





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