私の大好きなドラゴン

どら娘

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紫といえば...

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採集だし動きやすい服装がいいので
あの後、ワンピースじゃなくてパンツスタイルに着替えた。

私は最初「アランさん」と言おうとしたら

「アラ...んさ..」

「アランだけで良いし
 無理にしゃべらなくて良いって言ったよな?ほら!さっさと行くぞ」

私の頭をポンポンと叩いてさっさと外に行ってしまった。
昭和世代で育った私は大人の人に呼び捨ては慣れていないが
そこは子供だし,まあいっか...。
ああ~久しぶりの外出するからなのかワクワクしてきた。



カイルは最初からハイテンションで先頭に立って私たちの前を突っ走る勢いで
雪の中をサクサクと軽快に進んで行った。



「アラ..どこ....いく?」

気だるそうにアランが”上の方”を見ながら答えた。
そう、今私はサクラに乗ってゆーっくりと木を倒しながらも歩いているのだ。
寒い中、雪に埋まった道を歩くのは病み上がりの私は無理だと
サクラが言い出したからだが...。



「カインの大好物のココの実がよく取れる所だな。
 まあ、狩りはお前といると、
 もれなくデカいのがついてくるから獲物が逃げて使えねーし
 モノは使いようで採集だったら、
 デカいのに木を揺らして実を取れる上に荷物持ちで便利だしな。」



アランが、モノを使いようと言ったあたりからサクラは怒り出した。

「この男!私を何だと思ってるのかしら?
 私はあんたの為に微塵も力なんて貸してやらないんだから!」


サクラは軽く抗議をするかのように尻尾でアランを吹っ飛ばそうとしたが
アランは華麗にかわして鼻で笑い、前方にいるカインの方へ走っていった。
怒りながら興奮しているサクラを撫でながら私はサクラに話しかけた。

(サクラ、アランってサクラの事怖くないのかな?
 普通あんな言い方ドラゴンに言えないと思うよね。)

「完全に怖がってはないし、アイツ身のこなしは只者じゃないわ。
 あくまで予想だけど、アイツ今までにドラゴンと接した事あると思うわ。
 ライルが倒れてアイツの家で初めて会った時もしばらく無言で私を観察したら
 あっけなく家に入っていったもの....普通あんな反応はしないもの
 怪しいわ......まあ私達も怪しいからお互い様だけど。」

(そうだよね....。でも私達のこと詮索しないよね....。)

「そう、詮索しないから余計に怪しいのよ。
 まあ根は良い奴みたいだけど。」



私とサクラで話ていると下の方からカインが木を指でさしながら声をかけてきた。

「おーいライルあの木だよ、あの木
 ココの実がなってる!めっちゃ!うめーんだ。」


「どれ..?」



「淡い赤色の実がなってるだろ?冬の時期にしか採れねーんだぞ。
 すっげー甘いんだぜ!ライルも気に入るよ。
 ただちょっと待てよ。」


カインが指さした方に沢山実がついた木があった。
私は最初リンゴぐらいを想像していたが、はるかに想像を上回る大きさだった。
実といってもメロンサイズの大ぶりなサイズだった。
異世界だからなのかなあ...
木にメロンサイズの実が沢山ぶら下がってる異様な光景だった。
(あんなのメロンサイズの実が高い所から落ちてきたら死んじゃうんじゃないの?)

私はサクラに下ろしてもらい、
カインの隣に立つとココの実の取り方を説明しだした。

「いいか!ココの実は色が変わってから取らないといけないんだ。
 青色になってから取るんだ。見とけよ。」

カインは木によじ登って実がなってる枝の所にたどり着くと実をコンコンとグーの手でたたきだした。
すると、生きてるみたいに実がふらふらと勝手に揺れだし淡い赤が真っ赤になり
赤→黄色→青に変化していった。
信号みたいだなあと呑気に考えてたら青色になった瞬間カインがスパッと実をとり地面へ落した。
すると熱いのかシューっと煙が立ったあと、紫色に染まった。
カインが木から下りると成功だと言いながら紫の実を持ちながら言った。

「ココの実は振動を与えたりすると、どの色の時に実を取るかで味も変わるんだ。
 赤は苦くて大人は飲み物としてよく飲むんだ、黄色は甘酸っぱい、青はめっちゃ甘いんだ。
 実をとると紫色に代わって熱くなるから雪の上に落として冷めてから食べるんだ。
 取るタイミングが難しくて揺れだしてほっとくと最後は爆発するんだ。
 爆発するギリギリに取ると最高に甘くなるんだ。その見極めが難しいんだぜ。」

そう言ってる間に、アランが私を後ろから抱えると内緒話をするように
私の耳元で話した。

「 果汁は飲んだらうまいし、家に帰って食わせてやるから
 デカいのに木を揺らして、全体が揺れるようにしてと頼んでくれ。」

(サクラ?木をチョット揺らしてくれない?)
すると、アランに抱えられている私の所に首を近づけ、ついでにアランを睨みながら言った。

「どうせ、こいつに言われたんでしょ。
 何かムカつくんだけど。」

私は手を伸ばしながらサクラの顔をヨシヨシしながらもう一度頼んだ。

(サクラお願い。甘いみたいだしサクラも食べてみたら?)
結局、不貞腐れながらもサクラは
ゆっくりと歩きだし木を倒さない程度にしっぽで、はたいた。
すると、木全体が揺れ実がブラブラと揺れだした。
途端にアランが私を思いっきり上のほうに投げ飛ばすと

「おいデカいの!ライルを頼む。
 カイン!行くぞ。お前は振り分けろ。」

私はサクラの背に乗り見守った。
実が真っ赤になるとアランはものすごい速技で弓で矢を3本一気に引き
実の茎の所に矢をさして一気に落としていった。
その後も、黄色、青色の時も同じようにすごい早業で落としていった。

最初の色が赤色だったのは6個、黄色は3個、青色は11個取れた。
落ちたら全部の実は紫色だからパッと見分からないから
カインが落ちた実を色別に振り分けて軽くナイフで印をつけていった。
赤色はナイフで縦線、黄色はナイフで×の印、青は何もなしという風に...。


(紫の果物なんて変な色だなあ。まあ異世界だからか.......あ!)
私は紫という色が頭の中で何か引っかかって....大事なことを思い出した。

「ああああああああああああ」

(サクラ、サクラ、サクラあ~、紫のドラゴンはどうなったの?
 今まですっかり忘れるなんて...私ってサイテーだあ。)
私はオロオロと動揺して一人でどうしようとその場を歩いたり回ったりしてパニックになった。

突然私が前触れもなく叫んで騒ぎ出したので
アランとカインは実を網に入れているのをやめて私に話しかけた。

「どうした?」

「ライル急に何だよ!何か見つけたのか?」

私は今まで忘れていた自分が情けなくて涙をボロボロと流しながらいると
サクラが私の方に移動して抱え込むように私を包みながら話しかけた。


「落ち着いてライル紫の子だったら大丈夫よ。
 今は体を癒してる冬眠の状態だから、ほっといても大丈夫なの!
 私も何回か見に行ったけど大丈夫だから!」


(大丈夫なのあの子?苦しんだりしてない?)

「ドラゴンは、そんなにやわじゃないわ!
 心配だったら今から行ってみる?ここからも大して遠くないわ!」


(行く!行くよ)

「おい!どうしたんだ?」

「むら..ちゃき....会う....行く!」
私は心配そうに近づいたアランに突然飛びかかるように抱きつくと
アランの服を力一杯強くつかみながら見上げて言った。


「ああ~お前が現れた森で一緒にいた紫のドラゴンだろ!」
思い出したようにカインが叫んだ。


「行く!」
私は再度、力強くみんなに訴えるように
それぞれアラン、カイン、サクラを見渡しながら言った。


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