私の大好きなドラゴン

どら娘

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まだ起きない

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(ああ、眠ってるかな....。)

あれから私が駄々をこねて無理やり連れてきてもらったのは、
私がここの雪山で一番最初に居た場所である。
そこには目を閉じてまるで銅像のように何も感じない紫のドラゴンが座っていた。


「サクラ大丈夫よね。来た時黒いモヤが出て、具合が悪そうだったけど...。」


「あなたが、治したから大丈夫。
 この状態は死んでるわけでも、悪い状態じゃないから安心して」

私は紫のドラゴンに近づき表面のうろこを触り
黒いモヤらしき悪いものがないのか意識を集中して目を閉じてじっとしていた。

「なあ大丈夫そうか?俺も何度か来てみて
 最初っからずっとその状態だったぜ。」

カインが後ろから話しかけてきた。
そして手にはココの実が6個ぐらい入った網を持ちながら引きづって来たみたいだった。
私は目を開け、振り向いてカイン顔を見た。

「だいたいお前この紫のドラゴンと知り合いか?」

「........」
私は首を横に振った。

「知り合いでもないのに怖くないのか?」


「こわ...く....ない」
私とカインが紫のドラゴンの前で話していると、
突然後ろのほうから、しゃがれた怒鳴り声で話しかけてきた。



「そこで何やってる!
 恐ろしいド ドラゴンが2匹も!
 お前が呼び寄せたのか!
 やはりお前は不吉だ早くどこか行け! 疫病神が!」

すると突然年配のおじいちゃんが私の前にいるカインを指さしながら叫びだした。
何事だと後ろを向いていた私が振り向いて見ると更に年配の人の顔の剣幕が酷くなり喚き散らした。
あまりの恐ろしさにカインの隣に立ってカインの腕を握ってギューッと抱き着いた。

「な..おびき寄せたのか?もう一人疫病神が増えてる。
 お前たち出ていけ化け物!」

「...........。おい」
するとお爺さんの後ろに高い柱ができたように無表情に立ち
お爺さんはゆっくりと振り返るとその迫力にびっくりして倒れそうにりながらも
絞り出すように動揺しながらもアランへ話しかけた。

「お....お前さんも何で疫病神にかかわるんじゃ!」

「.........関係............ねえ。」
アランは顔の表情筋が前面に不機嫌と書いてるかのようになり
周りも雪に囲まれてるせいか寒々とした空気が伝わり、
余りのオーラにビビったお爺さんは逃げるように走り去った。



「........ライルごめん、俺のせいでお前まで....」
しばらく呆然とお爺さんが去るのを見ていたが
カインが私の前にきて顔を下を向けながら言うのがとても私も切なくて
下を向いているカインの頭を両手でぐちゃぐちゃにかき混ぜるように撫でた。

「カイ....いっ....しょ。うれ...し。あや...まる...じじー....のほ...う。」
私は自分の髪をつかみながらキョトンと首をかたむけながら話した。
カインはパッと顔を上げると苦笑いしながら突然私の頭までぐちゃぐちゃにしてきて

「これで、ぐしゃぐしゃな所も一緒だ。」

「ん..もー」
私はまた仕返ししようとカインの後ろを追いかけて
鬼ごっこみたいにしばらく追い掛け回した。
カインは泣きそうな顔を見えないように必死に逃げ、
そんな姿をアランとサクラが見守りながら眺めていた。

「おーい!いい加減帰るぞ!
 ココの実俺も早く飲みてーんだよ。
 チビ、ついでにデカいのに持って行ってもらうように言ってくれ」

「「はーーーーーーーい」」
カインと私は叫びながらアランのもとへ走りだし
荷物持ちに指名されたサクラがアランさんにしっぽを振り当てようとして
アランはヒョウイヒョイと何事もないようにかわしていた。
私とカイルが傍に駆けつけて来た時も遊んでるようにずっと、
サクラのしっぽから逃げてる姿にカインは言った。

「遊んでないで早くろよ!」

「遊んでねーよ、見て分かんねーのか?
 こいつ、本気で当てようとしてやがるんだぞ!」

(サクラ、大人げないよ。)

「ライル、私は荷物持ちじゃないのよ!」
(分かってるって、アランさんがからかってるんだって!)

何だかんだで、仲良くアランさんとカインと私とサクラはそれから家に帰って楽しんだ。
ココの実は本当においしかった。
取る前の赤色だったココの実は苦くて大人は飲み物と言っていたので
飲んでみたらコーヒーみたいな味。果肉はキュウリの漬物みたいな味。
黄色だったココの実は甘酸っぱい、オレンジジュースみたいで、果肉はリンゴの味。
青色だったココの実は糖度の高いメロンの味。果肉は桃の味。

それぞれココの実や果汁を食べたり飲んだりしていると
私の表情はクルクル変えてる姿をみんながそれを見て大笑いしながら楽しく過ごした。


その頃、山奥の雪の中にいた微動だにしなかった
紫のドラゴンが微かに動きゆっくりとゆっくりと
体が徐々に動き出し、一度だけ目を開け静かにまた閉じた。
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