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第二話 ハラスメントの記憶②
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とりあえずイーデル様に失礼がないように、使用人ではなく私が談話室へと案内した。
イーデル様と向かい合った席に座る。
「いま、使用人にお飲み物を持って来させておりますので、少々お待ちくださいませ」
「ああ」
素っ気ない返事をした後、イーデル様とは目が合わなくなった。
しかしすぐに、イーデル様は口を開く。
「君は、ワタシの婚約者としての自覚はあるか?」
「は、はい?」
「ワタシの婚約者の自覚はあるのかと聞いているんだ」
婚約者としての自覚?あるかと問われれば、まだないかもしれない。
でも、そう答えるわけにもいかない。
「……まだ私にはイーデル様にとって至らない所は多々あると思いますが、妻になる自覚は持つようにしています」
「ふむ……では、その格好はなんだ?」
「え?」
格好と言われて、思わず自分の体を見てしまった。なるべく清潔で良いドレスを着てきたはずだが、どこか気に障ったのだろうか。
「何か、イーデル様の気になることがございましたら、何なりとお申し付け下さい」
「ああ、では遠慮なく言わせてもらう。君のドレスは、少し派手なのではないか?」
「派手、でしょうか?」
確かに綺麗なドレスだと思って着用しているが、パーティ用というわけでもない、無難なものを着用しているはずなのですが……
「……確かに、少し煌びやかに見えるかもしれません。ですが、普段使いもできるように作られたもので……」
「君は、将来の夫であるワタシに口答えをするのか」
「は、はい?」
え、今なんておっしゃいました?
「ワタシは君の旦那になるのだぞ?ワタシの言うことだけ聞いていれば良いのだ」
あの、聞き間違いでしょうか。
いや、流石に聞き間違いですよね。聞き間違いだったら困るので、確認だけさせていただきますね。
「……将来の旦那様になるイーデル様の言う事を全て受け入れる事が、妻になる者の自覚だと?」
「ああ、そうだ。わかってるじゃないか」
あー!ダメだー!
イーデル様と向かい合った席に座る。
「いま、使用人にお飲み物を持って来させておりますので、少々お待ちくださいませ」
「ああ」
素っ気ない返事をした後、イーデル様とは目が合わなくなった。
しかしすぐに、イーデル様は口を開く。
「君は、ワタシの婚約者としての自覚はあるか?」
「は、はい?」
「ワタシの婚約者の自覚はあるのかと聞いているんだ」
婚約者としての自覚?あるかと問われれば、まだないかもしれない。
でも、そう答えるわけにもいかない。
「……まだ私にはイーデル様にとって至らない所は多々あると思いますが、妻になる自覚は持つようにしています」
「ふむ……では、その格好はなんだ?」
「え?」
格好と言われて、思わず自分の体を見てしまった。なるべく清潔で良いドレスを着てきたはずだが、どこか気に障ったのだろうか。
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「ああ、では遠慮なく言わせてもらう。君のドレスは、少し派手なのではないか?」
「派手、でしょうか?」
確かに綺麗なドレスだと思って着用しているが、パーティ用というわけでもない、無難なものを着用しているはずなのですが……
「……確かに、少し煌びやかに見えるかもしれません。ですが、普段使いもできるように作られたもので……」
「君は、将来の夫であるワタシに口答えをするのか」
「は、はい?」
え、今なんておっしゃいました?
「ワタシは君の旦那になるのだぞ?ワタシの言うことだけ聞いていれば良いのだ」
あの、聞き間違いでしょうか。
いや、流石に聞き間違いですよね。聞き間違いだったら困るので、確認だけさせていただきますね。
「……将来の旦那様になるイーデル様の言う事を全て受け入れる事が、妻になる者の自覚だと?」
「ああ、そうだ。わかってるじゃないか」
あー!ダメだー!
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