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鼠小屋
第2話
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血が流れた。体の奥から滔々と溢れ出して河となり海となり、ついには世界の全てが血潮に沈み自分までもが溺れていく。
風を求め浮上しようとしても、手足は岩に繋がれたように重く沈んで動かない。
潮の流れは好き勝手にあらゆる方向を目指した。
四肢がそれぞれ違う流れに連れ去られ、ついにこの身も捻じ切れる。
皮も肉も流されて骨だけになり、砕け、すり潰されて、巨大な海の小さな飛沫と同じになっても、しかし、ティッサはティッサのままだった。
世界の隅々まで無数に拡散したティッサの体は、各々が無限の叫びを発して滅びに抗い続ける。
何者かがティッサの煮えたぎる海に白い手を差し入れて、ひとすくい、これまで収まっていた世界とは違う器に移し替えた。
途端にティッサは卵のようにつるりとした塊になり、散り散りだった体のほとんど全てを取り戻していた。
紛れた淀みは一つ残らず取り除かれ、ティッサの溺れた海は波の跡を残して沖の彼方へと消え去った。
穏やかな微睡みがティッサを包み、一粒の丸い雫に閉じ込めようとする。
だが、ティッサの失われた部分は世界中のどこを探しても見当たらない。
ティッサを受け止めた新しい器はよく見ると不完全だった。
欠けた縁から罅が入り、埋まらない傷がまた疼き始める。
丸の中から手が生え、足が生え、放り出された土の上でティッサは久しぶりに長い息を吐き出した。
自らを取り巻く風は、飲み込めば鋭い棘と化し、肺の中から胴を貫く。
ほんの少し前まで隣にあったまろやかな安らぎが恋しく、しかしどこか恐ろしく、ティッサは泣き出したい気持ちになった。
呼吸を繰り返すほどに迫る脈動。慟哭。夢の終わりが近づいている。
赤子が産まれてくる時というのはこんなものだろうか。
ティッサは自分が母の体から出てきた日のことを思い出そうとしたが、霧のように曖昧で掴みきれない。
ティッサは海の中から自分をすくい上げた何者かを探し、仰向けのまま手を掲げた。
奇妙に折れ曲がった指がだらりと垂れ下がり、潰れた干葡萄が霰のように胸元へ降り注ぐ。
――母さん!
叫ぶと同時に、ティッサは目を開いた。
目は見えているはずなのに、真っ先に飛び込んできたのは色よりも音だった。
雨。
それなりに激しい雨だ。
土壁と木の扉を大きな雨粒が叩く。
屋根を滑り落ちた雨垂れが広い水たまりに注ぐ音。
傾いだ窓枠を狡猾にすり抜ける隙間風。
家の中では久しぶりに薪が爆ぜている。
炉から漂う煙の、仄かに甘い香りがする。
ティッサは今一度自分の目で見た。
見知った我が家の天井があり、見知らぬ男がティッサの右腕を掴んでいる。
今まで夢の中にいたのだと気づき、そして、小さく息を呑んだ。
まだ少年たちによる折檻が続いているのかと思ったのだ。
しかし、今ティッサの傍らにいるのは干果屋の代わりに殴る蹴るした彼らとは違う人物に見える。
ただ右の目蓋が酷く腫れていて、右側に立つ男の姿が見づらい。
ティッサは男の顔をもっとよく見ようとしたが、何故か少しも首を動かせなかった。
男はティッサの腕を音もなく床におろし、ティッサに見えるように軽く身を乗り出した。
「まだおとなしくしていなさい。傷だらけだ」
やや掠れた囁き。
言われてみればあちこち痛むような気がした。
息をするのも少し苦しい。
それに右手は――彼に持ち上げられた腕の先には掌がなかったように思う。
そうだ、石を叩きつけられ潰れてしまったのだった。
あれは夢のようで夢ではなかったのだ。
喉の奥からせり上がる酸い味を飲み込む。
ティッサは再び自分を目覚めさせたきっかけを思い出し、恐るおそる口にした。
「かあさんは?」
乾いた舌をようやく動かし、男に問う。
彼は瞬き、その表情を隠すように睫毛を伏せた。
正直な人だ。
聞かずとも答えが分かる。
「亡くなったよ。間に合わなかった」
涙がひとすじ、眦からこぼれ落ちていった。
ああ、本当はそんな気がしていた。
だから焦って、盗んでまで食べさせようとしたのに。
間に合わなかった。
それどころか、せっかく掴んだ干葡萄も右手ごと失くしてしまった。
全身から生きる力がすっかり失われたようでいて、この世界から消え去りたいと思うほど遠くへ近くへ痛みばかりが鳴り響く。
いなくなることはまだ許されない。
それらの痛みは裏路地で嬲られながら感じたものや、夢の中で血の海に引き裂かれながら感じたものと地続きだ。
しかし、一枚の薄い膜が覆い隠したかのごとく、痛みはどこかティッサの手の届かない場所にあった。
どこもかしこもむず痒いのに、どこを掻いてよいのか分からない。
肺から喉へと血が滲み、肋は軋み、背には痣、腹の奥が潰れて裂けて、右手は今も穿たれ続けて焼かれた蛇のようにのたうち回っている。
ティッサはそれら全ての痛みを識っていながら、全て他人事のように思った。
幾度か眠り、幾度か目覚め、その度に炉の中で燃える火のやわらかな暖かみが、こぼれ落ちそうなティッサの心を抱きとめた。
ずっと伏したままでいると昼も夜も分からない。
窓はあるが、壁と壁が所狭しとひしめく路地裏には、陽の光はあまり入ってこないのだ。
代わりに焔の光が天井に映し出す男の陰をティッサは眺めた。
時折彼は木の匙でティッサの口に薬湯を運び、顔や体のあらゆる所に貼られた湿布を丁寧に取り替える。
うまく飲み込めずに汁をこぼしてしまったり、自力で寝返りを打つことができず彼の手でうつ伏せ転がされたりするうちに、ティッサはようやく彼方の苦痛と自分の負傷とを同じものとして考えられるようになっていった。
つまり、今のティッサは腕一本動かすことのできない、完全なる木偶坊なのだった。
幸い、彼はティッサの生白い肌を目にしても、母が連れ込んだ客のようなティッサを品定めする素振りは一つも見せなかった。
排泄物の世話をされる時だけはティッサもさすがに恥ずかしくなり、割合無事だった両足で彼を蹴飛ばそうとしたが、一切無駄だった。
これが一人で体を起こしていられるようになるまで続くと知り、羞恥で身悶えしそうになる。
しかし今の体では悶えることすら容易ではない。
ありがたいと言えばありがたい、しかしある意味無遠慮とも言えるこの男は一体何者なのか。
そういえば互いにまだ名乗ってすらいないのだと気づいて、今更ながらに誰何する。
すると、彼もすっかり名乗った気でいたらしく、ティッサの指摘に声をあげて笑った。
他の鼠たちと遜色ないほど静かな人だと勝手に思っていたので、明るく笑う様にティッサは驚いた。
「チズンだ。言いづらければキィスでも構わない」
彼は再び同じ部屋の中でだけ聞こえるよう、声を低くして答えた。
チズン。
口の中で転がしてみると、なるほど覚えのない響きだ。
彼の言うとおり、「キィス」の方がティッサにとって舌滑りの良い音に思える。
「そして君は、ティッサ」
「そう、ティッサ」
ティッサはキィスの言葉をやや上の空で繰り返した。
彼の発言には疑問も推測も含まれなかった。
彼があまりにも当然のようにティッサの名を言い当てたので、ティッサもごく自然に聞き流すところであった。
はっとして彼の顔を見ようとするが、やはり首がうまく回らない。
「どうして知ってるの」
仕方なく訝しみをたっぷり込めて問うと、キィスの声色に困惑が滲んだ。
「何故って、君の母親が最期まで君の名前を呼んでいたからだよ」
どうしてそんな分かりきったことを聞くのだろう、と心の声が聞こえるようだ。
そうか、この人は母を看取ってくれたのか。
何故かその可能性を失念していた。
間に合わなかった、というキィスの言葉を無意識に自分と重ねてしまったせいだろうか。
彼はもしかして、ティッサにするのと同じように母の看病も試みたのかもしれない。
しかし治療が間に合わなかった。
ならば、キィスは少なくとも母の死に目には間に合っていたのだ。
わたしがそこにいるべきだったのに。
いや、母が最期に独りきりでなくて良かった。
ティッサはまた涙の溢れそうな眼をぎゅっと閉じた。
風を求め浮上しようとしても、手足は岩に繋がれたように重く沈んで動かない。
潮の流れは好き勝手にあらゆる方向を目指した。
四肢がそれぞれ違う流れに連れ去られ、ついにこの身も捻じ切れる。
皮も肉も流されて骨だけになり、砕け、すり潰されて、巨大な海の小さな飛沫と同じになっても、しかし、ティッサはティッサのままだった。
世界の隅々まで無数に拡散したティッサの体は、各々が無限の叫びを発して滅びに抗い続ける。
何者かがティッサの煮えたぎる海に白い手を差し入れて、ひとすくい、これまで収まっていた世界とは違う器に移し替えた。
途端にティッサは卵のようにつるりとした塊になり、散り散りだった体のほとんど全てを取り戻していた。
紛れた淀みは一つ残らず取り除かれ、ティッサの溺れた海は波の跡を残して沖の彼方へと消え去った。
穏やかな微睡みがティッサを包み、一粒の丸い雫に閉じ込めようとする。
だが、ティッサの失われた部分は世界中のどこを探しても見当たらない。
ティッサを受け止めた新しい器はよく見ると不完全だった。
欠けた縁から罅が入り、埋まらない傷がまた疼き始める。
丸の中から手が生え、足が生え、放り出された土の上でティッサは久しぶりに長い息を吐き出した。
自らを取り巻く風は、飲み込めば鋭い棘と化し、肺の中から胴を貫く。
ほんの少し前まで隣にあったまろやかな安らぎが恋しく、しかしどこか恐ろしく、ティッサは泣き出したい気持ちになった。
呼吸を繰り返すほどに迫る脈動。慟哭。夢の終わりが近づいている。
赤子が産まれてくる時というのはこんなものだろうか。
ティッサは自分が母の体から出てきた日のことを思い出そうとしたが、霧のように曖昧で掴みきれない。
ティッサは海の中から自分をすくい上げた何者かを探し、仰向けのまま手を掲げた。
奇妙に折れ曲がった指がだらりと垂れ下がり、潰れた干葡萄が霰のように胸元へ降り注ぐ。
――母さん!
叫ぶと同時に、ティッサは目を開いた。
目は見えているはずなのに、真っ先に飛び込んできたのは色よりも音だった。
雨。
それなりに激しい雨だ。
土壁と木の扉を大きな雨粒が叩く。
屋根を滑り落ちた雨垂れが広い水たまりに注ぐ音。
傾いだ窓枠を狡猾にすり抜ける隙間風。
家の中では久しぶりに薪が爆ぜている。
炉から漂う煙の、仄かに甘い香りがする。
ティッサは今一度自分の目で見た。
見知った我が家の天井があり、見知らぬ男がティッサの右腕を掴んでいる。
今まで夢の中にいたのだと気づき、そして、小さく息を呑んだ。
まだ少年たちによる折檻が続いているのかと思ったのだ。
しかし、今ティッサの傍らにいるのは干果屋の代わりに殴る蹴るした彼らとは違う人物に見える。
ただ右の目蓋が酷く腫れていて、右側に立つ男の姿が見づらい。
ティッサは男の顔をもっとよく見ようとしたが、何故か少しも首を動かせなかった。
男はティッサの腕を音もなく床におろし、ティッサに見えるように軽く身を乗り出した。
「まだおとなしくしていなさい。傷だらけだ」
やや掠れた囁き。
言われてみればあちこち痛むような気がした。
息をするのも少し苦しい。
それに右手は――彼に持ち上げられた腕の先には掌がなかったように思う。
そうだ、石を叩きつけられ潰れてしまったのだった。
あれは夢のようで夢ではなかったのだ。
喉の奥からせり上がる酸い味を飲み込む。
ティッサは再び自分を目覚めさせたきっかけを思い出し、恐るおそる口にした。
「かあさんは?」
乾いた舌をようやく動かし、男に問う。
彼は瞬き、その表情を隠すように睫毛を伏せた。
正直な人だ。
聞かずとも答えが分かる。
「亡くなったよ。間に合わなかった」
涙がひとすじ、眦からこぼれ落ちていった。
ああ、本当はそんな気がしていた。
だから焦って、盗んでまで食べさせようとしたのに。
間に合わなかった。
それどころか、せっかく掴んだ干葡萄も右手ごと失くしてしまった。
全身から生きる力がすっかり失われたようでいて、この世界から消え去りたいと思うほど遠くへ近くへ痛みばかりが鳴り響く。
いなくなることはまだ許されない。
それらの痛みは裏路地で嬲られながら感じたものや、夢の中で血の海に引き裂かれながら感じたものと地続きだ。
しかし、一枚の薄い膜が覆い隠したかのごとく、痛みはどこかティッサの手の届かない場所にあった。
どこもかしこもむず痒いのに、どこを掻いてよいのか分からない。
肺から喉へと血が滲み、肋は軋み、背には痣、腹の奥が潰れて裂けて、右手は今も穿たれ続けて焼かれた蛇のようにのたうち回っている。
ティッサはそれら全ての痛みを識っていながら、全て他人事のように思った。
幾度か眠り、幾度か目覚め、その度に炉の中で燃える火のやわらかな暖かみが、こぼれ落ちそうなティッサの心を抱きとめた。
ずっと伏したままでいると昼も夜も分からない。
窓はあるが、壁と壁が所狭しとひしめく路地裏には、陽の光はあまり入ってこないのだ。
代わりに焔の光が天井に映し出す男の陰をティッサは眺めた。
時折彼は木の匙でティッサの口に薬湯を運び、顔や体のあらゆる所に貼られた湿布を丁寧に取り替える。
うまく飲み込めずに汁をこぼしてしまったり、自力で寝返りを打つことができず彼の手でうつ伏せ転がされたりするうちに、ティッサはようやく彼方の苦痛と自分の負傷とを同じものとして考えられるようになっていった。
つまり、今のティッサは腕一本動かすことのできない、完全なる木偶坊なのだった。
幸い、彼はティッサの生白い肌を目にしても、母が連れ込んだ客のようなティッサを品定めする素振りは一つも見せなかった。
排泄物の世話をされる時だけはティッサもさすがに恥ずかしくなり、割合無事だった両足で彼を蹴飛ばそうとしたが、一切無駄だった。
これが一人で体を起こしていられるようになるまで続くと知り、羞恥で身悶えしそうになる。
しかし今の体では悶えることすら容易ではない。
ありがたいと言えばありがたい、しかしある意味無遠慮とも言えるこの男は一体何者なのか。
そういえば互いにまだ名乗ってすらいないのだと気づいて、今更ながらに誰何する。
すると、彼もすっかり名乗った気でいたらしく、ティッサの指摘に声をあげて笑った。
他の鼠たちと遜色ないほど静かな人だと勝手に思っていたので、明るく笑う様にティッサは驚いた。
「チズンだ。言いづらければキィスでも構わない」
彼は再び同じ部屋の中でだけ聞こえるよう、声を低くして答えた。
チズン。
口の中で転がしてみると、なるほど覚えのない響きだ。
彼の言うとおり、「キィス」の方がティッサにとって舌滑りの良い音に思える。
「そして君は、ティッサ」
「そう、ティッサ」
ティッサはキィスの言葉をやや上の空で繰り返した。
彼の発言には疑問も推測も含まれなかった。
彼があまりにも当然のようにティッサの名を言い当てたので、ティッサもごく自然に聞き流すところであった。
はっとして彼の顔を見ようとするが、やはり首がうまく回らない。
「どうして知ってるの」
仕方なく訝しみをたっぷり込めて問うと、キィスの声色に困惑が滲んだ。
「何故って、君の母親が最期まで君の名前を呼んでいたからだよ」
どうしてそんな分かりきったことを聞くのだろう、と心の声が聞こえるようだ。
そうか、この人は母を看取ってくれたのか。
何故かその可能性を失念していた。
間に合わなかった、というキィスの言葉を無意識に自分と重ねてしまったせいだろうか。
彼はもしかして、ティッサにするのと同じように母の看病も試みたのかもしれない。
しかし治療が間に合わなかった。
ならば、キィスは少なくとも母の死に目には間に合っていたのだ。
わたしがそこにいるべきだったのに。
いや、母が最期に独りきりでなくて良かった。
ティッサはまた涙の溢れそうな眼をぎゅっと閉じた。
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