婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井

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舞踏会2

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 まだ来客との挨拶があるセシリアたちと別れたあと、ステラはそういえばと胸元を確認した。

(さっきセシリアがなにか言いたそうだったけれど……え!)

 ステラの胸元には、宝石で出来た繊細な薔薇のブローチが輝いていた。
 ハウンドの瞳のような薄紅色の薔薇がシャンデリアの光を乱反射してきらきらと色どりを添えている。

 まるで、『この薔薇の持ち主はハウンドのものだ』と主張しているかのようだ。

(か、考えすぎよ)

 見上げるとハウンドは涼しい顔をしている。
 もちろん彼はステラを騙そうとしているのだから、その可能性もないことはない、のだろう。

 しかしここ数日、ステラは彼が詐欺師ではないと考え始めていた。
 詐欺師だとしたら……どうやっても割に合わないのだ。

 だからといって誰なのかと言われれば相も変わらず謎で、今の状況も説明しろと言われたら困る。 
 ステラは自分でドレスやアクセサリーを選んだものの、舞踏会の中にいると飾り気がないような気がしていた。

 家で見るのと華やかな人々の中で見るのでは印象がまるで違う。
 彼はそれを見越してアクセサリーを用意していたのではないだろうか。
 なにせ、ステラの普段の服や舞踏会への低い理解度を知っているのだから。

(私に期待していなかっただけ。だからなんの意味もないはずよ)
 


 しばらくするとゆったりとした音楽が流れる。
 セシリアやアーノルドは主催として賓客と踊ったり乾杯を交わしたりと忙しそうにしていた。

 磨き上げられたホール。
 眩いシャンデリア。
 未知の世界に迷い込んでしまったかのようで、見ているだけで圧倒される。

(はっ、そうよ! ちゃんと声をかけて婚約者になってもらえるよう頑張らないと……!)

 ダンスを誘うのは男性からが一般的だが、雑談ならルールがあるわけではない。
 自分が男性から声をかけられることなどないのだから、自分から近づこうとステラは作戦を立てていた。
 ダンスの腕前は自信がないものの、男性と親しくなる機会などそうそうないのだから頑張るしかない。

「ハウンド、私ちょっと……いろいろ見て回るわね」

「危ないので私も参ります」

「えっ」

 困る。

 男性に話しかける時に男性を連れていたらだめなことくらいはステラにも分かる。
 そもそも彼には1人でいてもらい、ご令嬢たちの関心を集めていてもらわないといけないのだ。

「エスコート役としてはもうじゅうぶん役目を果たしてくれたわ。ありがとう。あなたも舞踏会を楽しみたいでしょう?」

「あなたなしでどうやって楽しめとおっしゃるのです」

「気になるご令嬢でもダンスに誘ったらいいじゃない」

「そうしたいのはやまやまですが、まだ主催たちが踊り終わっていないので我慢しているんです。それに、断られるかもしれないと思うと少し不安で」

 ステラは言葉にはしないものの内心驚いていた。
 この男が気になる女性というのが純粋に気になったのだ。
 そして、彼が断わられるかもしれないと思っていることも意外だった。

「大丈夫よ。あなたに誘われて断る人はいないわ」

「そうですか? ステラ様も?」

「わ、私はだめよ。えーっと、すごく下手だから……」

 自分の発言を自分で覆す結果になってしまってばつが悪いくなって俯く。
 しかし仕方ないのだ。
 彼と踊るととにかく目立ってしまう。
 今だって、彼はご令嬢からの視線を一身に集めているのだ。

「だめですよ」

「え?」

 音楽が鳴りやむ。
 拍手の音に紛れて、ハウンドが腰を軽くかがめてステラの耳元で熱っぽく囁く。

「断わらせてあげません。今日はずっと、私とだけ踊ってもらいます」

 言われた意味が分からず、顔を上げると至近距離のハウンドと目が合った。
 薔薇色の瞳が鋭い光を宿している。

 周囲は次のダンスのために準備でうるさいくらいなのに、ステラだけ時間が止まったように視線に縫い留められていた。

(こわい)

 このままではハウンドに丸のみにされてしまう。
 そんな予感に怯えたステラは、思わず逃げ去ってしまった。
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