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今では作り笑いも随分上手になった。
罵られて笑っているのだからさらに気味悪がられる事はあったが、それでもリリアは頬を引っ張りあげて明るく笑える。
リリアは目を開けてよし、と自分を奮い立てる。
精霊の加護のない自分にあの村は居づらい。いや、殺されないだけまだ温情があるだろう。
(それに、本当に私が存在するべきではないのなら、生まれる事もなかったはずよね)
不吉を恐れて、というのが本当のところだろうがリリアは生後間もない頃に世話をされて無事に育ったのだ。
だとしたらこの命には意味があるはず。
リリアはその想いを頼りに生きてきた。
だから、リリアは森へ行く事に決めた。
色々な雑務が終わったのが一昨日、それから準備をして、今から森へ行く。
無加護でなくとも様々な事情があり、隠れるように森に住んでいる人々がいるらしい。
リリアは慎ましく暮らせればそれでよかった。
孤児院の仕事やブライアン達にいじめられなくて済む事を思うとほっとする気持ちもある。
勿論全く村に関わらない事は出来ないだろうが、日常的に石を投げられたりはしないはずだ。
リリアは心の中で叫ぶ。
(目指せ森でのスローライフ! 誰にも迷惑をかけず自分の時間を自分の為に使えるなんて夢みたい!)
強がり半分だった。
だがリリアが足を進めるには希望が必要だったのだ。
噂によると、森の入り口から少し入った所に小さな泉と開けた場所に、村を追われた人の住処や木こりの休憩所として使われていた小屋があるらしい。
しばらく誰も住んでいないはずだから荒れているだろうからと村の人は使おうとはしてなかったがリリアには問題にならなかった。
それどころか渡りに船だ。
荒れ果てた小屋なら掃除すればいい。家事なら記憶も朧げなうちからやってきたのだ。
どうせ荒れているなら少しずつ改装していくのも良いかもしれない。
孤児院は清貧を貴んでいたが、その実お金がない(これはどこの孤児院もそうだろう)ので雨漏りもしょっちゅうで、屋根や壁の補修も自分でやっていたのだ。
森の入り口へ踏み込み、そのまま荷車を引く。
元々自分の持ち物は少なく、最低限の生活が出来る程度の荷物ではあるがそれでもそれなりの重量があり、やや湿った土と下草に車輪を取られて中々大変だ。
ぬかるみを避けようとすれば荷車の重量に負けてしまいそうになる。
「でも、それって森が豊かな証拠よね。素晴らしいことだわ。これから暮らすのにうってつけね」
遠い地や大昔の話では精霊の恵みが途絶えたり偏ったりと大変な場所もあるらしい。
それを思うとリリアには重い荷車も恵みの一部だと思えた。
「とはいえ小屋の掃除が終わったら出来る範囲で道の整備をした方がいいかもしれないわね」
その時リリアの視界の端に森には不自然な程の「白色」が見えた。
罵られて笑っているのだからさらに気味悪がられる事はあったが、それでもリリアは頬を引っ張りあげて明るく笑える。
リリアは目を開けてよし、と自分を奮い立てる。
精霊の加護のない自分にあの村は居づらい。いや、殺されないだけまだ温情があるだろう。
(それに、本当に私が存在するべきではないのなら、生まれる事もなかったはずよね)
不吉を恐れて、というのが本当のところだろうがリリアは生後間もない頃に世話をされて無事に育ったのだ。
だとしたらこの命には意味があるはず。
リリアはその想いを頼りに生きてきた。
だから、リリアは森へ行く事に決めた。
色々な雑務が終わったのが一昨日、それから準備をして、今から森へ行く。
無加護でなくとも様々な事情があり、隠れるように森に住んでいる人々がいるらしい。
リリアは慎ましく暮らせればそれでよかった。
孤児院の仕事やブライアン達にいじめられなくて済む事を思うとほっとする気持ちもある。
勿論全く村に関わらない事は出来ないだろうが、日常的に石を投げられたりはしないはずだ。
リリアは心の中で叫ぶ。
(目指せ森でのスローライフ! 誰にも迷惑をかけず自分の時間を自分の為に使えるなんて夢みたい!)
強がり半分だった。
だがリリアが足を進めるには希望が必要だったのだ。
噂によると、森の入り口から少し入った所に小さな泉と開けた場所に、村を追われた人の住処や木こりの休憩所として使われていた小屋があるらしい。
しばらく誰も住んでいないはずだから荒れているだろうからと村の人は使おうとはしてなかったがリリアには問題にならなかった。
それどころか渡りに船だ。
荒れ果てた小屋なら掃除すればいい。家事なら記憶も朧げなうちからやってきたのだ。
どうせ荒れているなら少しずつ改装していくのも良いかもしれない。
孤児院は清貧を貴んでいたが、その実お金がない(これはどこの孤児院もそうだろう)ので雨漏りもしょっちゅうで、屋根や壁の補修も自分でやっていたのだ。
森の入り口へ踏み込み、そのまま荷車を引く。
元々自分の持ち物は少なく、最低限の生活が出来る程度の荷物ではあるがそれでもそれなりの重量があり、やや湿った土と下草に車輪を取られて中々大変だ。
ぬかるみを避けようとすれば荷車の重量に負けてしまいそうになる。
「でも、それって森が豊かな証拠よね。素晴らしいことだわ。これから暮らすのにうってつけね」
遠い地や大昔の話では精霊の恵みが途絶えたり偏ったりと大変な場所もあるらしい。
それを思うとリリアには重い荷車も恵みの一部だと思えた。
「とはいえ小屋の掃除が終わったら出来る範囲で道の整備をした方がいいかもしれないわね」
その時リリアの視界の端に森には不自然な程の「白色」が見えた。
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