「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井

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リリアはそっとブライアンの横に膝をつく。
村で尊大に振る舞っていたブライアンだが、今は泥だらけでサラサラだった金髪は見る影もなくもつれていた。
女の子の憧れだった整った顔は真っ青で、涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしている。

へたり込んでなお恐ろしいのか、全身をぶるぶると震わせているのが痛ましい。
これがあのブライアンなのだろうか。

「もう大丈夫よ。怖い人達は追い払ったから」

太陽を背にし微笑むリリアが、ブライアンにはどう見えたのだろうか。
ブライアンは救いを求めるように手を伸ばし、リリアの背中に手を回そうとする。

「何をしている」

瞬間ビシ、と空気が張り詰めた。
そして引き絞った弦を弾くようにその場の空気が爆ぜる。
森を揺らす凄まじい轟音と共に土埃が舞い上がる。

そこに現れたのはエレスだった。
精霊王は日の光すら霞むほどの眩さをもってそこに顕現する。

そして流れる水のような動作でリリアを奪いさった。
ふわりとリリアを抱きかかえると、地面に転がるブライアンを見下ろす。

「誰に触れようとしていた、人間」

初夏も過ぎようかという季節、精霊王に睨まれたブライアンは氷漬けにされた気分だった。
先ほどまで賊に追われていたが、そっちの方がまだマシだと思わされる。
ブライアンが伸ばした手はだらりと下がり、ピクリとも動かせない。

「ちょっとエレス、降ろしてちょうだい。それに、ブライアンが怖がってるわよ。そんな怖い顔をして」

「だがこの人間は今リリアに」

エレスの様子がいつもと違う。
その原因に、リリアは思い当たった。

エレスはどうも自分の事を気に入っている、らしいとリリアは思っている。
気づかなかったが、きっと見えない所でブライアンがいつものように自分に危害を加えようとしていたのだろう。

それに怒っているのだ。エレスは優しいから。
エレスの見た事のない怒りにリリアはそう結論付けた。

だが今のブライアンはリリアにとってあまり脅威ではなかった。
それはブライアンどころか、今も空中でぐるぐると回転している山賊たちも同じだ。

精霊たちが側にいてくれることが、リリアには頼もしかった。
知り合いの前で抱えられている事は恥ずかしいが、回される腕は優しい。

「私は大丈夫よエレス」

なおも不服そうな精霊王をなだめてリリアは腕の中から降りる。
未だに地面で固まっているブライアンに、リリアはしゃがんで目線を合わせた。

「ブライアン、あなたきっと用事があってここまで来たのよね」

こくり、とブライアンはやっとのことで頷いた。

「私たち落ち着いて話をするべきだと思うの。今私たちが住まわせてもらっている小屋に来てちょうだい」

リリアがブライアンに手を差し出す。
しかしエレスが風でブライアンを強制的に立たせたのでリリアは苦笑しながら手を引いた。


「ねえねえ! あれどうしたらいい?」

いつの間にか近くにいたアエラスが、羽の先で器用に上空の山賊たちを指す。
どうする、と聞かれてもリリアも困る。

「またやってきても面倒だ。殺してしまえばいい」

「だめよエレス! もう、いつも優しいのにどうしてそんな事言うの」

確かに近くに降ろしてまたやってこられても問題だが、命を奪うなんてやりすぎだ。

「じゃあ遠くに飛ばすね~! 死ななきゃいいんだよね!」

言うや否や、三人の大男たちはどこかへ飛ばされる。
豆のように小さくなっていく大男たちを見送りながら、リリアは少し不安になる。

「すごい勢いだけど本当に死なないの……?」

「死なない死なない! ふわっと降ろすからね~! 降りた先で生きていけるかどうかは知らないけど!」

あの山賊たちに同情する気はないが、アエラスのあまりにも無邪気な物言いに困惑してしまうリリアだった。
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