「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井

文字の大きさ
38 / 77

37

外から見ると古く見えた小屋だが、意外と中は清潔に保たれていた。
孤児院と対照的だな、とブライアンはぼんやりと考える。

だが、ブライアンは妙な違和感も感じていた。
この小屋は何かが日常と決定的に違う。

(けど、一体何が?)

「お客様用のお茶がないの。私のブレンドしたハーブティーしかなくて悪いわね」

「いや……」

リリアが用意したお茶からは清涼感のある良い香りがした。
色々な事があったせいでギチギチと固まったブライアンの身体と心が、リリアのお茶でほっと弛緩する。

忙しそうに動くリリアは以前と変わらない。
だが各段に綺麗になった。

いつも泥や煤まみれだったが、今はどこにも汚れはない。
髪の毛の艶は増し、動きに合わせてさらさらと流れる様に目を奪われる。

何より笑顔だ。

楽しそうに動き回っている。
目を伏せて何かを諦めていたようなリリアが、今は表情を緩めて微笑んでいる。
余裕の表れなのか、ブライアンにも優しく手を差し伸べて助けてくれた。

(むかつく)

リリアの変化に関わっているのは、斜め向かいに座って自分を冷たく見下ろしている人物だろう。
口を開くこともなく、ブライアンを監視している。

(いや、人なのか?)

正直なところまったく「人」には思えない。
底冷えする程の美貌だ。

内から輝くように光を纏い、全身が白く瞳は暮れゆく空。
そんな加護の色は聞いたこともないし、全身でとある存在を主張している。
だが、まさかという思いがあと一歩の思考を中断させる。

ブライアンを全く意に介していない不思議な生物たち(水で出来た金魚に、鳥に、ドラゴン?)を見て確信に変わりつつある。
おそらく、精霊。それもとんでもなく上位の。
しかしなぜ無加護であるリリアの元に?

「あの、はじめまして。ブライアンと申します」

「……」

美貌の青年はブライアンの挨拶など聞こえなかったように全く表情を変えない。
何を考えているのか全く分からないが、敵意だけは存分に伝わる。

挨拶を返さないのは失礼な行為ではあるが、そもそも対等ではないのだとブライアンは腑に落ちた。
じっと睨まれると呼吸も上手く行えない程緊張する。
ブライアンは縋るように、リリアの淹れてくれたお茶の入ったカップを握りしめた。
その様子にエレスの眉の険がわずかに深くなったのを、ブライアンは気づかない。

村にいた頃より自信に満ち、美しく笑うリリアになんて声をかければいいのか、ブライアンには分からなかった。
ブライアンはリリアに対して立場を誇示し、力で支配下に置くやり方しか知らない。

ただでさえリリアには相手にされていなかったのに、これでは自分の側にいてくれるはずがない。
村で評判の自分の顔も、目の前にいる人ならざる完璧な容姿の前ではあくまで人の中の誤差だ。

リリアはブライアンの向かいの椅子、エレスの隣に腰を下ろした。

「エレス。この人はブライアン。村にいた時の……えーっと、知り合い」

「知り合い?」

「知り合い?」

エレスとブライアンの声が被る。

「知り合い、じゃなかったらなんて言えばいいのよ。友達でもないのに。顔見知り?」

友達でもない。

その言葉にブライアンは一人ショックを受けていた。
ゆくゆくは自分の愛妾なのに、友達でもなく、知り合いで、顔見知り。

「ブライアン、こちらはエレス。精霊王なんだけど今は私のお手伝いとかをしてくれているわ。それでが右から大精霊のアエラス、フォティア、ウォネロよ」

途端、ブライアンは椅子から転がり落ちた。
リリアの紹介の情報量の多さとギャップに気持ちも何もかもが追い付かない。
感想 121

あなたにおすすめの小説

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

きさらぎ
恋愛
テンネル侯爵家の嫡男エドガーに真実の愛を見つけたと言われ、ブルーバーグ侯爵家の令嬢フローラは婚約破棄された。フローラにはとても良い結婚条件だったのだが……しかし、これを機に結婚よりも大好きな研究に打ち込もうと思っていたら、ガーデンパーティーで新たな出会いが待っていた。一方、テンネル侯爵家はエドガー達のやらかしが重なり、気づいた時には―。 ※『婚約破棄された地味令嬢は、あっという間に王子様に捕獲されました。』(現在は非公開です)をタイトルを変更して改稿をしています。  お気に入り登録・しおり等読んで頂いている皆様申し訳ございません。こちらの方を読んで頂ければと思います。

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

恐怖侯爵の後妻になったら、「君を愛することはない」と言われまして。

長岡更紗
恋愛
落ちぶれ子爵令嬢の私、レディアが後妻として嫁いだのは──まさかの恐怖侯爵様! しかも初夜にいきなり「君を愛することはない」なんて言われちゃいましたが? だけど、あれ? 娘のシャロットは、なんだかすごく懐いてくれるんですけど! 義理の娘と仲良くなった私、侯爵様のこともちょっと気になりはじめて…… もしかして、愛されるチャンスあるかも? なんて思ってたのに。 「前妻は雲隠れした」って噂と、「死んだのよ」って娘の言葉。 しかも使用人たちは全員、口をつぐんでばかり。 ねえ、どうして?  前妻さんに何があったの? そして、地下から聞こえてくる叫び声は、一体!? 恐怖侯爵の『本当の顔』を知った時。 私の心は、思ってもみなかった方向へ動き出す。 *他サイトにも公開しています

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~

日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】 https://ncode.syosetu.com/n1741iq/ https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199 【小説家になろうで先行公開中】 https://ncode.syosetu.com/n0091ip/ 働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。 地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

政略結婚した旦那様に「貴女を愛することはない」と言われたけど、猫がいるから全然平気

ハルイロ
恋愛
皇帝陛下の命令で、唐突に決まった私の結婚。しかし、それは、幸せとは程遠いものだった。 夫には顧みられず、使用人からも邪険に扱われた私は、与えられた粗末な家に引きこもって泣き暮らしていた。そんな時、出会ったのは、1匹の猫。その猫との出会いが私の運命を変えた。 猫達とより良い暮らしを送るために、夫なんて邪魔なだけ。それに気付いた私は、さっさと婚家を脱出。それから数年、私は、猫と好きなことをして幸せに過ごしていた。 それなのに、なぜか態度を急変させた夫が、私にグイグイ迫ってきた。 「イヤイヤ、私には猫がいればいいので、旦那様は今まで通り不要なんです!」 勘違いで妻を遠ざけていた夫と猫をこよなく愛する妻のちょっとずれた愛溢れるお話