「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井

文字の大きさ
50 / 77

49

そこにいたのは美しい少女だった。
ブライアンは見惚れて動きを止まってしまった。

「ブライアン?」

「あっ、ああ。ちゃんと着付けできてる」

「良かったわ」

そうしておかしい所がない事を確かめた彼女はややためらうような、恥じらうような態度で精霊の王を呼ぶ。

「あの、エレス。どう……かしら」

リリアが語りかけると空気を揺らして精霊王が現れた。
精霊王はあらゆる生物が見惚れるであろう笑顔を、ただ一人の乙女に向ける。

「その姿も愛らしいな、リリア。確かに人の技は良いものだ」

精霊王はブライアン自身は気に入らなくともその技術に関しては区別しないようだ。

精霊王が簡単に人の制作物を褒めるのはやめた方が良いのではないか、とブライアンは思う。
大精霊や精霊王でなくとも、一般的な精霊に愛された職人の大体は王宮お抱え技術者として生きた国宝扱いを受ける。

敬意をこめて「精霊の兄弟(フラーテル)」とも呼ばれる存在は、全職人の憧れであり到達点なのだ。
だから、精霊王が褒めるとまでいかずとも制作物を認めるだけでその職人は国を挙げての重用になるだろう。
辺鄙な片田舎の、一人前でもなくまだまだ見習いのがリメイクしただけのドレスであっても、だ。

しかし精霊王は人間側の都合などどうでもよいのだろう。
実際褒めているのはドレスではなく「ドレスを着たリリア」なのだから、ブライアンは聞かなかった事にする事にした。

(そしていつか何も知らない人間の前で賞賛を口にして、困ってしまえばいい)

精霊王に対するちょっとした嫌がらせの気持ちから口を噤んだブライアンは、徐々に図太くなってきているなと自分でも感じていた。
ともかく今はリリアの仕上げをしなければならない。

「後ろ向いて動かないでくれよ。今から帽子とレースを整えるから」

ブライアンはドレスと同じ色合いの、腰まで垂れた布が揺れるブーゲルフードでリリアの髪を隠す。
器用に前髪を帽子の下にしまい込んで、薄いレースを目元側に垂らし、フードに縫い付けた。

リリアの視界は若干悪い。
だが他人からレース越しに見るリリアの瞳は黒というより濃い色の瞳という印象だ。
赤い紅を引けば白い肌と桃色のドレスが奇妙な一体感を見せ、不思議と目を離せない。
その完成度に呆けていると精霊王が口を出す。

「隠すのか? 勿体ないな」

「エレス……。ありがとう。その言葉だけで十分よ」

この髪も瞳も忌むべきものだと信じて疑わなかった。
精霊が王に気を利かせた結果の人間と精霊の価値観のすれ違いだっとしても、真っすぐに褒められるとやはり嬉しく、照れてしまう。

「ブライアン?」

そこに、高い声が店の奥から響く。いきなりの事にリリアは体を硬直させ、エレスはリリアの肩に手をおいたまま姿を消す。
見えずともその温もりはリリアを落ち着かせるのに役に立った。

ややもしてブライアンとよく似た金髪の結い上げた女性が顔を出す。
多少年月は感じたが、まだ精霊の事も知らないほど幼い頃、村の子供たちと遊んでいた時に見たブライアンの母親だ。
ブライアンの母親は基本的に店番をしているようで、リリアはあまり会ったことがない。
リリアの記憶の中では表立って嫌な顔もしなかったと思うが、いい顔もしてない人だった。

「誰かいるの?」

「……友達の準備を手伝ってたんだよ」

「あんたが? 珍しいわね」

ブライアンの母は着飾り髪と目を隠したリリアを見止め、そこでははーんとしたり顔になる。

「……あ、そういう事ね。時間はあるのに手伝いを前倒しで終わらせて変だと思ったら。ま、楽しんでいらっしゃい、お嬢さん」

にこっと笑って手を振る。

「別にそういうんじゃねーよ!」

「はいはい。そんな事言ったら女の子が悲しんじゃうわよ」

「え、っと」

「ほら、祭りに行くんだろ」

ブライアンに押し出されるような形で戸惑うリリアは店を出た。
そのまま店の影になる場所で一度止まる。
いつの間にか日は昇っていたようで、浮足立ったような人の声や気配もしていた。

「周り見てみろよ」

「え? わ……っ」
感想 121

あなたにおすすめの小説

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

きさらぎ
恋愛
テンネル侯爵家の嫡男エドガーに真実の愛を見つけたと言われ、ブルーバーグ侯爵家の令嬢フローラは婚約破棄された。フローラにはとても良い結婚条件だったのだが……しかし、これを機に結婚よりも大好きな研究に打ち込もうと思っていたら、ガーデンパーティーで新たな出会いが待っていた。一方、テンネル侯爵家はエドガー達のやらかしが重なり、気づいた時には―。 ※『婚約破棄された地味令嬢は、あっという間に王子様に捕獲されました。』(現在は非公開です)をタイトルを変更して改稿をしています。  お気に入り登録・しおり等読んで頂いている皆様申し訳ございません。こちらの方を読んで頂ければと思います。

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

恐怖侯爵の後妻になったら、「君を愛することはない」と言われまして。

長岡更紗
恋愛
落ちぶれ子爵令嬢の私、レディアが後妻として嫁いだのは──まさかの恐怖侯爵様! しかも初夜にいきなり「君を愛することはない」なんて言われちゃいましたが? だけど、あれ? 娘のシャロットは、なんだかすごく懐いてくれるんですけど! 義理の娘と仲良くなった私、侯爵様のこともちょっと気になりはじめて…… もしかして、愛されるチャンスあるかも? なんて思ってたのに。 「前妻は雲隠れした」って噂と、「死んだのよ」って娘の言葉。 しかも使用人たちは全員、口をつぐんでばかり。 ねえ、どうして?  前妻さんに何があったの? そして、地下から聞こえてくる叫び声は、一体!? 恐怖侯爵の『本当の顔』を知った時。 私の心は、思ってもみなかった方向へ動き出す。 *他サイトにも公開しています

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~

日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】 https://ncode.syosetu.com/n1741iq/ https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199 【小説家になろうで先行公開中】 https://ncode.syosetu.com/n0091ip/ 働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。 地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

政略結婚した旦那様に「貴女を愛することはない」と言われたけど、猫がいるから全然平気

ハルイロ
恋愛
皇帝陛下の命令で、唐突に決まった私の結婚。しかし、それは、幸せとは程遠いものだった。 夫には顧みられず、使用人からも邪険に扱われた私は、与えられた粗末な家に引きこもって泣き暮らしていた。そんな時、出会ったのは、1匹の猫。その猫との出会いが私の運命を変えた。 猫達とより良い暮らしを送るために、夫なんて邪魔なだけ。それに気付いた私は、さっさと婚家を脱出。それから数年、私は、猫と好きなことをして幸せに過ごしていた。 それなのに、なぜか態度を急変させた夫が、私にグイグイ迫ってきた。 「イヤイヤ、私には猫がいればいいので、旦那様は今まで通り不要なんです!」 勘違いで妻を遠ざけていた夫と猫をこよなく愛する妻のちょっとずれた愛溢れるお話