Sugar & Cacao〜甘さの比率〜

そら汰★

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第6章 積もる砂糖は雪のよう88%

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「色々お世話になりました。食料まで沢山いただいてしまって」
「いいのよ~。郁ちゃんのほうが面倒掛けてるしさぁ。またゆっくりいらっしゃい」
「はい、お言葉に甘えて」

 深く頭を下げる尾鷹に、両親も倣って頭を下げながら「息子をよろしく」と、まるで嫁にでも出す勢いだ。
 三日間の短い滞在だったが、皆それなりに楽しんでくれたようだ。
 一番驚いたのは、あんなに毛嫌いしていた穂奈美が、尾鷹と穏やかに会話をしている姿だった。なにがあったのか気になる反面、和解してくれたのなら郁哉としても一安心だ。

「それじゃ道も混んじゃうし、もう行くね」
「気い付けてな。郁、尾鷹君に迷惑ばかり掛けるな。困ったことあったらたまにゃ連絡寄越せ」
「うん。父さんと母さんも無理しないようにね。もう歳なんだから」
「こら、全くあんたは……ひと言余計だら?」

 ケラケラと笑い七瀬のワゴン車に乗り込む。別れを惜しみながらも車は静かに発進した。
 後部のラゲッジスペースには、手荷物とは別に両親が手塩に掛けた野菜や保存食、米や味噌が山のように積まれている。

「いやぁ~、龍宮城から帰るみたいですね」
「確かに。いい療養になったよ。ありがとう郁哉」
「私も久々にゆっくりできました。凩君、誘って頂きありがとうございます」

 二人にお礼をされ郁哉は頬を綻ばせる。
 なにもない辺鄙な場所でも、喜んで貰えたのなら誘った甲斐がある。


 読みが良かったのか、Uターンラッシュにも巻き込まれず昼過ぎには東京へと到着した。

「先生、運転ありがとうございました。お茶でも飲んで行きませんか?」
「いえいえ。車もありますし、今日はこれで失礼しますよ。ああそうだ凩君、これを」

 尾鷹が居ない隙きを見計らっていたように、七瀬は名刺を郁哉に渡してきた。
 シンプルな白い名刺には『ファルケ総合研究所 七瀬透』と記載されている。

「もしなにかあれば連絡をください。坊っちゃん経由でも構いませんが、言い難いこともあるでしょうし。坊っちゃんには内緒ですよ? ああ見えて僻みっぽいところがあるんで」

 首を傾げる郁哉に、パチンとウィンクをしてくる。確かに七瀬の連絡先を知っていたほうがなにかと助かる。
 貰いものを移動させていた尾鷹が戻ると、軽く挨拶を交わし早々に七瀬の車は走り去っていった。

「また内緒話? 本当に透には素直だよね」
「違うよ! 那津の悪口言ってただけだもん」
「はあ?」
「冗談だよ。ほら、家入ろっ! 凍えちゃうよ」

 温暖な静岡よりも東京のほうがやはり寒い。元日だというのに、空はどんよりと厚い雲で覆われている。これはひと雨降るかもしれない。
 お米を持つ尾鷹に申し訳なさを感じながら、急いで地面に置かれた尾鷹の荷物を代わりに持つと、エントランスを抜けた。
 玄関ホールに入りドスンと上がりがまちに荷物を置く。

「……重っ! これなに入っているの?」

 茶色い米袋を玄関脇に置いている尾鷹に荷物の中身を確認する。
 尾鷹は悪怯れもぜず、さも当たり前に「郁哉のアルバム」と言い放った。

「えっ……なんで?!」
「ん? 欲しかったから」
「ちょい待ち。勝手に持って来ちゃ駄目だよね?!」
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