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その後もストライクやスペアはほとんどなかったが、結構いいスコアで八十点はなんとか取れた。蒼海は根暗の癖に、二百点近くを叩き出していた。隣のレーンの同じ年ぐらいの女子チームは、俺よりも上手くて百以上の点数を出しており、男として微妙な気持ちにはなったが……。
すっきりしない気持ちを発散させるため、ボウリングをしたあとはバッティングセンターへ向かった。すっきりしたいはずなのに、俺ってこんなに運動神経悪かったか? と頭を悩ませることになる。
「雪ちゃん、見た目倒し? 体育の時間とか、結構運動神経良さそうだったのに」
「球遊びがダメなんだろ? なんで当たんねぇの!?」
「あっちの球遊びはすぐに覚えて今じゃ……」
「う、うるせぇッ! 真顔でセクハラ発言すんなッ! ムッツリ野郎っ!」
座って俺を眺めていた蒼海は、オヤジみたいな発言をしてくる。エロいことを被せながらクスクスと笑い楽しんでいるようだ。
立ち上がり俺の側まで来ると、うしろから抱き締めてきた。
「お前……なにやってんの」
「やだな、期待してるの? まさか人目があるのにエッチなことする訳ないでしょ? 雪ちゃんはそういうのお望みかもしれないけど」
「人をビッチみたいに言うなよ。クソメガネ……」
「ククッ、ほらもうちょっと重心下げて。バットはこの辺で。ボールをよく見て、下から上に叩きつける感じ。ボールはベースの上を通過するだけだし、絶対に自分には当たらないから怖がらないで」
力抜いてと出て来たボールを蒼海に合わせてバットを振ると、見事に当たりカコーンッーっと音を響かせる。当たると気持ちがいいものだ。
次のバッティングをひとりで挑戦すれば、面白いほどにカコーンッーと遠くへ飛んで行く。振り向いて当たったと喜ぶと、優しい笑顔で返される。
「雪ちゃんはやっぱ飲み込み早いね」
「蒼海先生の指導がいいのかね」
「違うよ……雪ちゃんが変わろうとしたから……じゃない?」
「俺が……変る?」
急に真面目なことを言い出す蒼海に、キョトンと首を傾げてしまう。一体なにを言いたいのだろうか。
「変わりたい気持ちがあれば前に進むよ。ほかのことでもそうじゃないの? 雪ちゃん次第で周りも、雪ちゃん自身も変わって行くよ。受け入れたら自然とね」
「……蒼……海……」
真っ直ぐに見つめる蒼海の視線と絡み合う。まるで見透かされているようですぐに視線を逸らしてしまう。
どういうつもりで、蒼海がそんなことを言ったのか。変ることに恐怖していた最近の俺の胸の奥に、血液が沸騰したように昇っていきギュッと締め付けられる。
確かに変わろうという意欲があれば、人はいくらでも成長し変わっていく。けれどそれを恐れるのもまた人間なのだ。変化に対応できなければ衰退するか平行線で過すだけだ。
言葉で言うのは簡単でも、実行することができないもどかしさ。踏み出せず飛び込めない俺には、まだ悩む理由が一つ残されていた。
すっきりしない気持ちを発散させるため、ボウリングをしたあとはバッティングセンターへ向かった。すっきりしたいはずなのに、俺ってこんなに運動神経悪かったか? と頭を悩ませることになる。
「雪ちゃん、見た目倒し? 体育の時間とか、結構運動神経良さそうだったのに」
「球遊びがダメなんだろ? なんで当たんねぇの!?」
「あっちの球遊びはすぐに覚えて今じゃ……」
「う、うるせぇッ! 真顔でセクハラ発言すんなッ! ムッツリ野郎っ!」
座って俺を眺めていた蒼海は、オヤジみたいな発言をしてくる。エロいことを被せながらクスクスと笑い楽しんでいるようだ。
立ち上がり俺の側まで来ると、うしろから抱き締めてきた。
「お前……なにやってんの」
「やだな、期待してるの? まさか人目があるのにエッチなことする訳ないでしょ? 雪ちゃんはそういうのお望みかもしれないけど」
「人をビッチみたいに言うなよ。クソメガネ……」
「ククッ、ほらもうちょっと重心下げて。バットはこの辺で。ボールをよく見て、下から上に叩きつける感じ。ボールはベースの上を通過するだけだし、絶対に自分には当たらないから怖がらないで」
力抜いてと出て来たボールを蒼海に合わせてバットを振ると、見事に当たりカコーンッーっと音を響かせる。当たると気持ちがいいものだ。
次のバッティングをひとりで挑戦すれば、面白いほどにカコーンッーと遠くへ飛んで行く。振り向いて当たったと喜ぶと、優しい笑顔で返される。
「雪ちゃんはやっぱ飲み込み早いね」
「蒼海先生の指導がいいのかね」
「違うよ……雪ちゃんが変わろうとしたから……じゃない?」
「俺が……変る?」
急に真面目なことを言い出す蒼海に、キョトンと首を傾げてしまう。一体なにを言いたいのだろうか。
「変わりたい気持ちがあれば前に進むよ。ほかのことでもそうじゃないの? 雪ちゃん次第で周りも、雪ちゃん自身も変わって行くよ。受け入れたら自然とね」
「……蒼……海……」
真っ直ぐに見つめる蒼海の視線と絡み合う。まるで見透かされているようですぐに視線を逸らしてしまう。
どういうつもりで、蒼海がそんなことを言ったのか。変ることに恐怖していた最近の俺の胸の奥に、血液が沸騰したように昇っていきギュッと締め付けられる。
確かに変わろうという意欲があれば、人はいくらでも成長し変わっていく。けれどそれを恐れるのもまた人間なのだ。変化に対応できなければ衰退するか平行線で過すだけだ。
言葉で言うのは簡単でも、実行することができないもどかしさ。踏み出せず飛び込めない俺には、まだ悩む理由が一つ残されていた。
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