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そら汰★

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 最近のドタバタで、すっかり忘れていたことを思い出す。教室に入り席に着くと談笑している佐藤と視線が合う。俺を見るとフッと笑い近付いて来る佐藤。
 暫くシカトしていたというのにどういう風の吹き回しだろうか。見ていないフリをしながら頬杖を付き明後日の方向へと視線を逸らす。

「はよ。棉紅利。この間は悪かった」
「……いや、別に」

 そっぽを向きながら、不貞腐れ気味で挨拶を返すと、肩に腕を回してスキンシップをしてくる。馴れ馴れしいのは前からだが、妙にねっとりとしたスキンシップだ。やはり気持ちが悪い。

「そうツンケンするなよ。俺もどうかしていた。でもまぁ、その気になったら教えてくれよな」
「アホか。お前となんかしたら流血沙汰じゃ済まなそうだ」
「俺、結構上手いって評判よ?」
「ふんっ、女限定だろ? 俺としたいのなら、まずはお前がテク磨け。お前がネコでもいいんだぜ? 優しくしてやるよ」

 目を細めながら口角を上げ佐藤を見つめると、垂れた目尻をさらに下げながら俺の髪を弄り始める。

「ならお前が俺を育成してくれよ。まぁ、冗談は置いておいて……たまにはガス抜きぐらい付き合えよな」
「はぁ? 冗談だろ? お前全然懲りてねぇのな」
「ははっ、馬鹿だな~。シコリ合いなんて単なる遊びだろ?」
「ふんっ、脳内ちんこめっ!」

 フッ……と息を耳に吹き掛けられ、ゾワリと寒イボが立つ。

「棉紅利君は意外に純情だねぇ~」
「言ってろよ。俺ってば生娘なのよ?」

 一頻りケラケラと笑うとポスッと肩を叩き、佐藤は席に戻って行った。全く反省が見られない。佐藤にはまだ警戒が必要かもしれない。
 節操なしの佐藤と関係を持たずに良かったと息子にそっと視線を移すが、自分も佐藤に負けず大概だ。背筋にぶるりと悪寒が走り両手で腕を擦り振り向けば、蒼海がこちらの様子を窺っていた。
 昨日も森永同様に蒼海とも身体を重ねることはなかった。清い健康的な外出は、セックスよりも妙な恥ずかしさを感じた。

 んー、なんだろ……ムラムラしてきた。
 こんなことなら誘えば良かったか?
 いやいやそれじゃ解決しないだろ。

 難しいことを考えるよりも、セックスしているほうが楽なのだ。ただ快感に身を委ねていればいい。
 吐息を漏らしペロリと渇いた唇を舐めると、蒼海は俺から顔を背け朝の挨拶もせずに自分の席に行ってしまった。

 うわっ~。感じ悪ぅっ~!
 挨拶は基本だろが……クソメガネ。
 あー、でもおかげで息子が寝てくれたわ。

 何度目かのため息を漏らす。ここ最近ずっと自分に問い掛けている。
 枝分かれした未来の可能性はいく通りも存在する。道筋を選ばなければ進まない。いまさら後退するなど不可能なのだ。
 どちらかひとりを選ぶか。それとも両方終わりにするか。どちらにしてもひと悶着ありそうだ。
 先の見えない状況に、今日も思い悩む俺だった──。
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