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第4幕 盛り沢山な夏休み
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家に到着すると、玄関で靴を履きかけている悠斗が居た。心配性の悠斗らしくて思わず笑ってしまうが、絡まれたことに若干肝を冷やしていた俺はホッとする。
「瀬菜、遅いから心配で迎えに行こうと思っていたんだ」
「ああ……うん、平気。ガラの悪そうな同高の奴に話し掛けられたけど、なにもなかったし」
「えっ? なんで電話しなかったの? やっぱり一緒に行けば良かった……」
「それじゃ罰ゲームにならないだろ? てか、本当に平気だったから」
悠斗の腕を掴み二階に上がる。悠斗は詳細を聞きたがっていたが、またなにかあったら言うからとその場は収めておいた。
お菓子を食べながら、夏の夜には持って来いなホラー映画を鑑賞し、村上の悲鳴に映画よりも驚き、それぞれ風呂に入りたわいのない会話をする。こんな大人数でのお泊まり会は今までなかったので、最初こそ膨れていた俺だが楽しくて堪らなかった。
「俺、村上とベッドで寝る」
俺のひと言で全員が硬直した。
「なんだよお前ら黙り込んで。ベッド全員じゃ流石に寝れないだろう? 元々悠斗は多澤んち泊まりだったし、俺のベッドだし妥当じゃね?」
「柳ちゃん‼︎ お願い‼︎ 俺まだ死にたくない‼︎」
村上は本当に泣きそうな顔で土下座をしてくる。
そんな村上を横目に悠斗は啞然としながらぼやいた。
「瀬菜……自分がなに言っているか分かっているの?」
「だって悠斗と一緒に俺が寝ていたら、その……みんなが気を使うだろ! ほら、布団出すの手伝え!」
クローゼットから来客用の布団を取り出す。捨てずに置いておいて良かった。
そんな俺のうしろで、悠斗の悲痛な声が響いている。
「雅臣、なんか言ってよ! 瀬菜の言い分おかしくない⁉︎」
「あー……俺パス……自分で説得しろよ」
「村上君! 瀬菜を説得して!」
「柳ちゃん! 別に俺ら王子と柳ちゃんが、イチャイチャしながら一緒に寝ていても気にしないし‼︎」
「ほら、村上君もこう言っているよ。瀬菜は俺と抱きしめ合って寝るべきだよ!」
布団をテキパキと並べその上に正座をすると、ここに座りなさいとばかりに布団を叩き悠斗を呼び寄せた。
「悠斗くん。俺は怒っているんだよ。それにみんなの前で襲われたくないです」
無表情な顔で淡々と伝えると、悠斗はガーンと青ざめた顔をし、萎れた花のように項垂れた。そんな悠斗に多澤がポンポンと肩を叩き諦めろと言うと、渋々と自分が眠る布団に横になり、タオルケットを頭まで掛け不貞腐れている様子。
「……あれマジで学園の王子様? みんなが見たらショック受けそう」
「みんなが悠斗に幻想抱き過ぎなんだよ!」
「柳ちゃん。俺、本当に血の雨見たくないからね! 襲わないでね!」
「襲うかボケ! 俺マジで眠いんだよ!」
「瀬菜お子様だからな。先に言っとくけどな、悠斗が爆発しても知らねぇぞ」
爆発ってなんだよ!
てかお前ら悠斗にビビリ過ぎ!
一体なにされてきたんだよ!
村上とベッドは一緒だが、タオルケットは流石に別々にした。横になるとすでに二時を過ぎており、すっかり夜ふかしコースだ。大きなあくびを繰り返し、ひと言三言話しているうちに眠ってしまった。
そんな中、三人は小声で会話を続けていた。
「瀬菜、遅いから心配で迎えに行こうと思っていたんだ」
「ああ……うん、平気。ガラの悪そうな同高の奴に話し掛けられたけど、なにもなかったし」
「えっ? なんで電話しなかったの? やっぱり一緒に行けば良かった……」
「それじゃ罰ゲームにならないだろ? てか、本当に平気だったから」
悠斗の腕を掴み二階に上がる。悠斗は詳細を聞きたがっていたが、またなにかあったら言うからとその場は収めておいた。
お菓子を食べながら、夏の夜には持って来いなホラー映画を鑑賞し、村上の悲鳴に映画よりも驚き、それぞれ風呂に入りたわいのない会話をする。こんな大人数でのお泊まり会は今までなかったので、最初こそ膨れていた俺だが楽しくて堪らなかった。
「俺、村上とベッドで寝る」
俺のひと言で全員が硬直した。
「なんだよお前ら黙り込んで。ベッド全員じゃ流石に寝れないだろう? 元々悠斗は多澤んち泊まりだったし、俺のベッドだし妥当じゃね?」
「柳ちゃん‼︎ お願い‼︎ 俺まだ死にたくない‼︎」
村上は本当に泣きそうな顔で土下座をしてくる。
そんな村上を横目に悠斗は啞然としながらぼやいた。
「瀬菜……自分がなに言っているか分かっているの?」
「だって悠斗と一緒に俺が寝ていたら、その……みんなが気を使うだろ! ほら、布団出すの手伝え!」
クローゼットから来客用の布団を取り出す。捨てずに置いておいて良かった。
そんな俺のうしろで、悠斗の悲痛な声が響いている。
「雅臣、なんか言ってよ! 瀬菜の言い分おかしくない⁉︎」
「あー……俺パス……自分で説得しろよ」
「村上君! 瀬菜を説得して!」
「柳ちゃん! 別に俺ら王子と柳ちゃんが、イチャイチャしながら一緒に寝ていても気にしないし‼︎」
「ほら、村上君もこう言っているよ。瀬菜は俺と抱きしめ合って寝るべきだよ!」
布団をテキパキと並べその上に正座をすると、ここに座りなさいとばかりに布団を叩き悠斗を呼び寄せた。
「悠斗くん。俺は怒っているんだよ。それにみんなの前で襲われたくないです」
無表情な顔で淡々と伝えると、悠斗はガーンと青ざめた顔をし、萎れた花のように項垂れた。そんな悠斗に多澤がポンポンと肩を叩き諦めろと言うと、渋々と自分が眠る布団に横になり、タオルケットを頭まで掛け不貞腐れている様子。
「……あれマジで学園の王子様? みんなが見たらショック受けそう」
「みんなが悠斗に幻想抱き過ぎなんだよ!」
「柳ちゃん。俺、本当に血の雨見たくないからね! 襲わないでね!」
「襲うかボケ! 俺マジで眠いんだよ!」
「瀬菜お子様だからな。先に言っとくけどな、悠斗が爆発しても知らねぇぞ」
爆発ってなんだよ!
てかお前ら悠斗にビビリ過ぎ!
一体なにされてきたんだよ!
村上とベッドは一緒だが、タオルケットは流石に別々にした。横になるとすでに二時を過ぎており、すっかり夜ふかしコースだ。大きなあくびを繰り返し、ひと言三言話しているうちに眠ってしまった。
そんな中、三人は小声で会話を続けていた。
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