王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第6幕 計画は入念に、愛情込めて

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***


 Pipi……Pipi……。
 ジリジリ……ジリジリ……。

 薄暗い室内に音が鳴り始める。モゾモゾと身じろぎするが起きられない。布団を被り騒音を遮る。けれどどんどん音は大音量になっていく。

「──うぅぅ……うるさぃ……」

 聴こえないふりをしていると、騒がしい音楽が鳴り出す。小さな音はスヌーズ機能で、部屋中に響き渡るようなハードな爆音を轟かせる。それはまるで俺に起きろ起きろと訴えているようだ。
 ガバっと布団を捲りあげ、鳴り止まぬ音のプロ達を探す。ふらふらとしながらどこにあるんだと、自らセットしたにも関わらず悪態をついてしまう。
 ベッドを降りてまず一つ……歩いてから二つ目の目覚まし君を止めると、三つ目の強敵なスマホ君を探しに行く。冴えない頭でどこに置いたのだとウロウロしていると、ベッドから一番遠い床の隅で充電器を差しながらそいつはブルブルと震え、大音量のロックを歌っていた。
 タップして完全に止めると、スマホの画面にそっと笑い掛ける。

「お前ってば優秀だな……朝の弱い俺でも頑張れたぞ!」

 ふぁ~っと大きなあくびをしながら、昨日の夜にまとめて置いた荷物を脇に抱え部屋をあとにした。



 鍵をそっと開け静かに扉を開き室内に入り込む。そのまま抜き足差し足で階段を上がる。扉の横に荷物を置くと、注意を払いそっと中へ忍び込む。

 へへっ……俺、怪盗になれるかも……。
 気付かれて……ないな……。

 布団をそっと持ち上げ、気付かれないようにゆっくりとベッドに潜り込み横になると、身動ぎされ狼狽えるが、どうやら寝返りを打っただけのようだ。
 小さなため息と共に脱力すると、横で寝息を立てている悠斗から天井を見上げ、笑いを堪えてしめしめとニヤける。カウントダウンは始まっている。眠ってしまわないようにしなければならない。瞳を閉じ瞼を擦ろうとしていると、不意打ちに手首を掴まれベッドに張り付けられていた。

「……瀬菜……なにしているの? とても魅力的な夜這いだね」

 暗い室内でも悠斗の顔が分かるほど間近で覆い被さられていた。

「──お、お前ッ! ね、寝ていたんじゃないのかよ!」
「うん、寝ていたよ? でもなんだかいい匂いがしたから、気付いたら身体が勝手に動いてた」
「匂いって……お前は犬か⁉︎」
「犬じゃなくて狼だよ? 美味しいご馳走が目の前に自ら迷い込んで来るなんて♡」

 ペロリと頰を舐められ、この展開はヤバイと固まる俺は、慌てながら悠斗を引き離そうとする。

「違う違う‼︎ ご馳走じゃない! 俺、あのぉ~~‼︎」
「なにが違うの? 本当に可愛いことしてくれるよね♡」

 悠斗はそう言うと、俺の唇を塞ぎ口腔を貪ってくる。時間がないのだ。これでは計画が台無しになってしまう。
 まだ空けない夜。静まり返る室内に、淫靡な水音だけが響いている。

「はんぅ……ふぅ……っ、うぅ……んっ」
「ん……っ、……ふっ……ん」

 唇から唾液が零れ落ちそうになり、濃厚なキスにふにゃりと力が抜けていく。舌を吸われちゅぽんと唇が離れると、痺れた思考で本来の目的を口にする。

「……んっ……ゆーとぉ、おたんじょうび……おめれとぅ……」

 舌ったらずな言葉でそう呟く。何度も練習したのに感動もなにもあったものではない。
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