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第6幕 計画は入念に、愛情込めて
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悠斗の誕生日が目前に迫っていた。プレゼントも無事完成し、仕込みの準備も万端だ。サプライズが楽しくて堪らない。当日悠斗がどんな反応をするのか考えただけで、顔が自然と綻んでしまう。
学校に登校する途中、悠斗に「瀬菜は最近凄くご機嫌だね」と言われ、冷静を装いながら必死にいい訳を探した。ご機嫌になるに決まっている。悠斗の誕生日は俺にとっても大切で、おめでたいことなのだ。
十一月十日、午前五時三十二分──悠斗が産まれた日。
誕生日の日付は知っていたが、産まれた時刻までは知らなかった。俺の誕生日に悠斗がさらりと口にした俺が産まれた時刻。自分でも忘れていたことだ。
誕生日と一括りに言っても、その日の何時というのは結構大切なのかもしれない。一分前はその子はまだ誕生していないのだ。変に拘り過ぎかもしれないが、些細な言葉が純粋に嬉しかった。
贔屓目で見ても悠斗はやはり凄い奴だと、俺もおばさんに出生届のコピーを見せてもらったのが一ヶ月前のこと。そのとき、おばさんは懐かしむように誕生秘話を俺に教えてくれた。
産まれたばかりの悠斗は平均より小さく、ちゃんと育ってくれるのか、おじさんと二人でずいぶん心配したようだ。今はそんな心配もなく、俺よりも大きく立派に成長した。「きっと育った環境が良かったのね」と、おばさんは笑っていた。
「とうとう明日だね。こっちは俺達に任せて!」
村上がウィンクしながらニシシと笑う。
「うん、頼んだぞ!」
お昼休みに久々に村上と二人で昼食を取りながら、明日の計画をおさらいした。
明日は残念ながら木曜日で時間に限りはあるが、生徒会にもお願いし夕方の業務はお休みにしてもらった。最後の確認に仕掛け人達へメッセージを一斉送信した。なんだか今から緊張してしまう。
ひと息ついてから教室に戻ると、三浦さんから綺麗にラッピングされた包みを渡される。
「瀬菜っち明日って立花君お誕生日だよね? これ渡して欲しいな。セラゾファン同士、細やかな贈り物! あ、私のは恋愛感情とかやましい気持ちじゃないからね!」
「ありがとう……って、三浦さん自分から渡せばいいじゃん」
「うーん。分かってないな~。たぶん瀬菜っちからじゃないと、立花君受け取らないからさ」
「ん……どうして? 三浦さんからなら受け取るだろ?」
首を傾げる俺に、三浦さんは「鈍い~。鈍感受け萌え♡」と言ってくる。プレゼントは贈る人が本人に渡すことが、一番喜ばれるではないか。悠斗のことだ。きっとファンの子から、明日は沢山プレゼントを贈られるはず。分かりきっていることだ。
憂鬱になる自分を今から想像できる。それでもおめでたいこと。三浦さんは俺達の関係を知っているからか、妙に気を使っていた。
今日は村上と帰宅する。悠斗は多澤に任せ、無理矢理予定を作ってもらった。家に帰ると早速最後の仕上げをする。ラッピング袋にプレゼントを入れリボンを括る。
「……あれ? ダメだなリボン縦になっちゃう」
「柳ちゃん下手くそ~。方向が逆だよ」
村上にレクチャーしてもらい綺麗に結ぶ。
「おお! 本当だ。リボンとかネクタイってコツがあるのな」
「コスとかのリボンはちゃんとできていたじゃん! 同じでしょうが」
「上手くできるときと、できないときがあるんだよ!」
「柳ちゃんらしいけど……」
不器用な俺に村上は呆れている様子だ。
「村上も悠斗にプレゼントするのか?」
「もちろん! 俺の今回やばいよ?」
「えーーなになに⁉︎ 超気になる!」
「それは当日のお楽しみ~♪」
「あっ‼︎ てかお前まさかと思うけど……」
「フッフッフッーー。内緒ーーー♪」
「ちょっとなんだよ! 俺のときみたいなの絶対禁止!」
「王子へのプレゼントだも~ん♪」
ニヤニヤと笑う村上を白い目で見つめながら、どうか変なアダルトグッツじゃありませんようにと、村上本人ではなく神様にお願いをしておいた。
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