王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第17幕 上級生と下級生 〜高校三年生編〜

08

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 モサモサと毛玉のように重苦しい髪は綺麗にカットされ、染めた明るいブラウンの癖毛を生かしフワリとセットしている。眼鏡で隠れていた瞳は、コンタクトに変えたことで、二重のハッキリとしたアーモンド型を覗かせていた。華奢ではないし綺麗という部類でもないが中性的で、まぁ……所謂……普通にイケメンだったのだ。
 まるでサナギから蝶へと孵化した森山君は自信に溢れ、作業にも気合が入っている。自分には真似できないことに、嫌味のひとつでも言いたくなってしまう。

「はぁ~あ、身長もそこそこあるし、カッコイイってなんか詐欺にあったみたいだ」
「本当だよね~。悠斗さん気づいていたの?」
「まさか。元がよかったんだよ。でも、やり過ぎたかなーって後悔中」
「どうしてだ? 滅茶苦茶カッケーじゃん!」
「うん、そういうことだよ。瀬菜は意外と面食いだから」

 悠斗は俺に意味深な視線を流し、俺の腰に腕を回すと自身へと引き寄せた。

「俺のどこが面食いだって? それ、お前のことを言っているのか?」
「ははは、森山君。悠斗さんに敵視されてる。きっと今後は指導が厳しくなるよ~♪」
「えぇ~……それは……嫌かも……です。……でもどういうことなんでしょう……」
「これも人を見極めるいい勉強だね。どういうことか僕と瀬菜を観察したらいいよ」
「悠斗くん……少し黙れな」

 これ以上は黙れと悠斗に肘鉄をお見舞いし、実千流の横に逃げ込むと腹を抱えて笑い出す始末だ。

「プププッ! 観察するまでもないよね。瀬菜もいまさら隠さなくたっていいのに。森山君、その調子で業務もよろしく! 期待してるから!」
「は、はい……努力します」

 外見が変わっても傲ることがない純粋さが、ほんわかと心を和ませてくれる。王子気質はないが、生徒会を引っ張って導く女房役に育ってくれるはずだ。
 先ずは第一段階クリア……と、残る課題はまだ多いが久々に胸を撫で下ろした。


***


「……また来られたんですか?」
「へへへ、諦め悪いって思っているだろ!」
「俺たちも……だけど、君も諦めが悪いよね♪」

 うんざりした顔で眉間に皺を寄せる通川君。俺たちは開き直ったように、満面の笑みで対抗だ。

「生徒会も、相当暇なんですね。あぁ……だから……森山のイメージチェンジも暇つぶしで?」
「まぁーね♪ 暇つぶしにしては上出来だろ?」
「うちにはセンス抜群の参謀が居るからな!」
「まるで道化師集団ですね。おかげで朝からクラスが騒がしくて迷惑しているんですよ」

 辛辣な返しに安定を感じる。氷結の王子は今日も絶好調なご様子だ。

「まぁ、君も毎日俺たちが来て回りの目も気になるだろ?」
「ええ、そう思うなら弁えていただきたいのですが」
「うんうん。そうだろ!」
「おかげで変な噂も立ち始めている」
「それは申し訳ないね」

 申し訳ない……そう言いつつ実千流の言い方には全くその気が感じられない。その姿はなんとなく環樹先輩を想像させられる。飄々とした様子の実千流はスッと表情を真面目なものに変え、通川君へと詰め寄った。

「なら提案だ」
「提案? 僕にメリットでも?」
「こんな風に毎日押し掛けられるのも困るだろ? だから一度生徒会室に来てくれないか?」
「……一度ですか? 伺えばお二人で接待でも?」
「おお、接待か! 俺の入れるお茶を振る舞うぞ? 結構好評なんだ」
「確かに瀬菜のお茶は美味い。ほかに君が望むものがあれば聞かないでもない」
「ほぉー、それはずいぶんと大盤振る舞いですね」
「ただで君が動くとは思えないからね♪」

 実千流はどや顔で通川君を挑発している。そんな実千流に挑むように、通川君も細めた瞳で思案している様子だ。
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