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僕は君が好き
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「大地。大好き」
「俺も太陽のこと一番好き」
幼稚園児にとってはそれは挨拶と同じぐらい自然に出る言葉。
小学生に上がっても低学年までは「お前ら本当に仲いいな」と言われる程度。
だが、それも学年が上がるたびに、からかいのネタになるのでいつしか口にださなくなった。
それでも僕の心の中は、いつもその言葉で溢れていた。
そして中学生になり、僕は初めて女子からその言葉を告げられた。
「好きです太陽君、私と付き合ってください」
その時僕は初めて彼女の言う好きと、僕が大地に投げかけていた”好き”という言葉が同じものであったと気がついた。
「ごめんなさい」
僕はその”好き”に答えることはできない。でも僕の中の”好き”を好きな相手に伝えることはもっとできない。
そんな事実に打ちのめされた。
僕が自分の”好き”に気がついた後も、大地との関係は変わらず続いた。大地にとって僕は幼馴染であり、一番の親友だった。でも僕の中ではその肩書は辛すぎた。
だから僕は遠い高校に進学した。
初めこそよくメールでやり取りをしていたが、やがてそれも減っていった。
そして大学生になるころには、一切の連絡を絶っていた。
その間僕は、来るものは拒まず数多くの女性と付き合った。気の合う同期に可愛い後輩、しっかりものの先輩。しかし大地より”好き”になる相手は見つからなかった。
そんな出会いと別れを繰り返した僕は一つの結論に達した。
「やっぱり、僕は男が好きなのかな……」
いままであえてそこからは目をそらしていた。
大地以外にも、仲の良い男友達はいたが、付き合いたいとは思ったことはなかった。でもそれも、どこかでそんなことを言ったら嫌われる、避けられると思っているからかもしれない、それを確かめるには──。
僕はその日とうとうゲイバーに足を踏み入れた。
少し薄暗い店内には、思っていた以上に大勢の人がいた。
「あら、坊や、ここには初めて?」
入ってみたはいいが、その後どうしていいか分からず入り口で固まっている僕に、バーのママがそう声をかけた。
「この席どうぞ」
そういって、僕を一つの席に導いた。
「この子も今日初めてなのよ」
そういって隣の席の子を紹介してくれた。
「今日は可愛い仲間が二人もできてうれしいわ」
そういってママはお祝いだとお酒をサービスしてくれた。
「なんか緊張しますね」
僕はぎこちなく、とりあえず隣の席の男性にそう声をかけた。
「実はまだ僕、自分の性癖がよくわからなくて」
初対面の人に何をいっているんだと思ったが、なんとなく隣の男性は気を許せる気がした。
「そうなんですね。実は俺もなんです」
振り返った顔を見て、危うく僕は手にしたグラスを落としそうになった。
「大地!?」
「……太陽?」
大地も僕の顔をみてそのまま固まる。
「どうして、太陽が」
「いや、それは僕のセリフ」
「だって、お前彼女がいただろう?」
「えっ」
「高校に入って、だんだんお前から連絡が減って。俺、お前の家までいったんだ。その時彼女と帰ってくるお前を見たんだよ。だから──」
「あっ……、いや、いまはそんなことどうでもいい、大地、男が好きだったのか?」
「いや、その……わからないんだ」
「わからない」
「太陽に彼女がいるって知ったら、なんだか、裏切られたような気持ちになって。でも、そんなことお前に言えないじゃん、だから俺も、彼女が出来たらまたお前と普通にまた話せるんじゃないかって、何人かの女子と付き合ったんだけど、うまくいかなくて」
「…………大地……」
「だからもしかして俺って、女じゃなくて、男が好きなんじゃないかって、でもそんなのクラスメイトで試すわけにもいかないだろ、だから……」
そうか大地も僕と同じように悩んでいたんだ。
「大地、僕もいままで色んな女の人と付き合ったけど、ダメだった。可愛いと思うし、尊敬できる人もいたけど、大地を思う時のような胸の高鳴りを感じる相手はいなかった。だからきっと自分の恋の対象は女性じゃないのかもしれないと思って、今日ここにきてみたんだけど、どうやらそれも間違いだったらしい」
大地の瞳の中に僕の姿が映っている。
「僕は男とか女とかじゃなく、大地が好きなんだ」
きっと僕の瞳にも大地が映っているだろう。
「だから僕と付き合ってくれませんか?」
「俺も太陽のこと一番好き」
幼稚園児にとってはそれは挨拶と同じぐらい自然に出る言葉。
小学生に上がっても低学年までは「お前ら本当に仲いいな」と言われる程度。
だが、それも学年が上がるたびに、からかいのネタになるのでいつしか口にださなくなった。
それでも僕の心の中は、いつもその言葉で溢れていた。
そして中学生になり、僕は初めて女子からその言葉を告げられた。
「好きです太陽君、私と付き合ってください」
その時僕は初めて彼女の言う好きと、僕が大地に投げかけていた”好き”という言葉が同じものであったと気がついた。
「ごめんなさい」
僕はその”好き”に答えることはできない。でも僕の中の”好き”を好きな相手に伝えることはもっとできない。
そんな事実に打ちのめされた。
僕が自分の”好き”に気がついた後も、大地との関係は変わらず続いた。大地にとって僕は幼馴染であり、一番の親友だった。でも僕の中ではその肩書は辛すぎた。
だから僕は遠い高校に進学した。
初めこそよくメールでやり取りをしていたが、やがてそれも減っていった。
そして大学生になるころには、一切の連絡を絶っていた。
その間僕は、来るものは拒まず数多くの女性と付き合った。気の合う同期に可愛い後輩、しっかりものの先輩。しかし大地より”好き”になる相手は見つからなかった。
そんな出会いと別れを繰り返した僕は一つの結論に達した。
「やっぱり、僕は男が好きなのかな……」
いままであえてそこからは目をそらしていた。
大地以外にも、仲の良い男友達はいたが、付き合いたいとは思ったことはなかった。でもそれも、どこかでそんなことを言ったら嫌われる、避けられると思っているからかもしれない、それを確かめるには──。
僕はその日とうとうゲイバーに足を踏み入れた。
少し薄暗い店内には、思っていた以上に大勢の人がいた。
「あら、坊や、ここには初めて?」
入ってみたはいいが、その後どうしていいか分からず入り口で固まっている僕に、バーのママがそう声をかけた。
「この席どうぞ」
そういって、僕を一つの席に導いた。
「この子も今日初めてなのよ」
そういって隣の席の子を紹介してくれた。
「今日は可愛い仲間が二人もできてうれしいわ」
そういってママはお祝いだとお酒をサービスしてくれた。
「なんか緊張しますね」
僕はぎこちなく、とりあえず隣の席の男性にそう声をかけた。
「実はまだ僕、自分の性癖がよくわからなくて」
初対面の人に何をいっているんだと思ったが、なんとなく隣の男性は気を許せる気がした。
「そうなんですね。実は俺もなんです」
振り返った顔を見て、危うく僕は手にしたグラスを落としそうになった。
「大地!?」
「……太陽?」
大地も僕の顔をみてそのまま固まる。
「どうして、太陽が」
「いや、それは僕のセリフ」
「だって、お前彼女がいただろう?」
「えっ」
「高校に入って、だんだんお前から連絡が減って。俺、お前の家までいったんだ。その時彼女と帰ってくるお前を見たんだよ。だから──」
「あっ……、いや、いまはそんなことどうでもいい、大地、男が好きだったのか?」
「いや、その……わからないんだ」
「わからない」
「太陽に彼女がいるって知ったら、なんだか、裏切られたような気持ちになって。でも、そんなことお前に言えないじゃん、だから俺も、彼女が出来たらまたお前と普通にまた話せるんじゃないかって、何人かの女子と付き合ったんだけど、うまくいかなくて」
「…………大地……」
「だからもしかして俺って、女じゃなくて、男が好きなんじゃないかって、でもそんなのクラスメイトで試すわけにもいかないだろ、だから……」
そうか大地も僕と同じように悩んでいたんだ。
「大地、僕もいままで色んな女の人と付き合ったけど、ダメだった。可愛いと思うし、尊敬できる人もいたけど、大地を思う時のような胸の高鳴りを感じる相手はいなかった。だからきっと自分の恋の対象は女性じゃないのかもしれないと思って、今日ここにきてみたんだけど、どうやらそれも間違いだったらしい」
大地の瞳の中に僕の姿が映っている。
「僕は男とか女とかじゃなく、大地が好きなんだ」
きっと僕の瞳にも大地が映っているだろう。
「だから僕と付き合ってくれませんか?」
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