インキ喰います 【第二部完】 完結 <インキシリーズ 2>

樫村 和

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第十章

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 自由になった腕に涼風を抱き込み、荒立つだけ荒立った気を静める。
 ふしゅーふしゅーとおかしな呼吸を繰り返す匠に、いやそうな顔をするものの涼風は匠の膝から下りようとしない。
 夏乃も瑞葵の膝に座り、背中をさすってもらっている。
 夏乃もそろそろ体力が尽きるだろう。顔色があまり良くない。疲れ果てたという様子で瑞葵に凭れている。
 有川はお茶を人数分淹れた後、何か食べる物を調達してまいりますと、少し前に扉から出て行った。
 そういえば、腹が減った。
 午前中からここにいる。外はもう闇だ。一体、何時ごろなのだろうか。

「俺のも外せ」

 匠の膝の上で手首の戒めを解こうと涼風が悪戦苦闘していたが、どうにもならなかったらしい。
 だが、長は知らんふりでお茶を口にしている。外せば暴れると決めつけているようだ。

「まだ、話は終わってない」
「まだ?!まだ、なんかあんのかよぉ!」

 さすがに涼風も疲れたぁと匠に凭れかかってきた。匠と目が合うと、へしょっと顔を歪める。

「腹減ったぁ」
「減ったな」

 匠も頷く。想定外の事が起こり、完全に飯を食いっぱぐれた。と、その時、有川が戻ってきた。

「遅くなりました」

 手に大きな盆を手にしている。その上に山盛りの握り飯が見え、涼風がぴょこっとはねた。
 有川が握り飯を配っていく。夏乃も腹が減っていたのだろう。もくもくと食べだした。それを見て、涼風も食べだす。

「有川、向こうは」
「はい」

 有川が握り飯を配り終わり、新しいお茶の支度をしながら長に頷く。

「今、皆さまで食事をしていらっしゃいます。ご遺体も、本宅に移す手筈がついたそうです」

 ご遺体と聞いて喜屋を思い出す。そう言えば佐倉翁の急変時から見ていない。

「喜屋は?」

 長に熱いお茶を渡しながら、有川が匠を見る。

「お食事に呼ばれています。そのあと、挨拶を受けて終わりかと。こちらに戻ってくるとおっしゃってました」

 うわぁ……あの佐倉妻と娘達から挨拶を受けるのか……。
 思いっきり、いやそうな顔になったのだろう。瑞葵の膝の上で、二個目の握り飯をあむあむと食べていた夏乃が、くふと笑う。ようやく笑ったかと、匠がほっとする。涼風は睨んだようだが、瑞葵の膝の上なら夏乃も睨まれても怖くないのだろう。また、くふっと笑った時、ぽろぽろと米粒が瑞葵の膝に落ちた。

「兄者」

 瑞葵はどこかぼんやりした顔で、夏乃が落とした米粒を拾いながら長に声をかけた。

「あの子供は……どうしたんでしょう」
「……うん」

 あの子供?誰の事だ?と匠が膝の上で二個目の握り飯を食べている涼風に目で聞くが、涼風も分からないのか首を横に振る。

「涼風が生まれた後、姿を見てません」

 ん?と思った。まだ胎児だった涼風に陽の気を送っていたという子供の事か。
 今の涼風と同じくらいの年だと瑞葵は言っていたか?
 長は三つ目の握り飯を有川にもらいながら顔をしかめて瑞葵を見た。

「あの父ならお役御免で放り出したかもしれんな」

 匠が顔をしかめる。せっかく笑った夏乃がまた顔を曇らせる。瑞葵もあり得ると思ったのか口を閉じた。

「あの」

 思わぬところから声がし、皆が有川を見た。有川が真面目な顔で長を見る。いつも浮かべている柔らかい笑みが顔から消えている。

「なんだ」
「その子供の事です。よろしいでしょうか」

 瑞葵が驚いたように有川を見て、長を見た。長が頷くと、有川が事務的な口調で話し始めた。
 涼風が生まれた日を境に姿が見えなくなったこと。捜索願を出したこと。行方不明のまま七年後、失踪宣告を受け戸籍上死亡したことになったこと。
 事実だけ言葉にすれば……これだけのことなのだろうが。

「捜さなかったのか?」

 思わず匠が聞いたが、聞いた瞬間、自分でそうかと気が付いた。
 涼風は生まれたばかりだ。瑞葵も三歳ほど。長も十歳前後だっただろう。捜せるわけがない。

「内藤様」

 有川が匠に向かい、困ったように口を開く。

「先程、当主様もおっしゃっておりましたが……皆様のお母様が、奥様が亡くなられて……」

 そうだった……。匠が口を押え、悪いと顔を伏せる。
 涼風の母親が急変し、亡くなった日でもあるのだ。皆がそれどころではなかっただろう。有川もだ。
 顔を伏せた匠の腕を涼風が大丈夫だと軽く叩く。

「竹内がどうにか落ち着いたころ、その子が家出をして帰ってこないと連絡がありました」
「家出?」

 瑞葵が不思議そうに聞き直す。はい、と有川が頷く。

「ずっと田舎暮らしがいやそうだった。役目が終わったなら、もういいだろう思ったんじゃないだろうか。そのうち帰ってくるだろう」

 田舎暮らし。匠が腕の中の涼風を見る。今も……携帯の電波が入らぬほどの田舎。涼風ぐらいの年の子供なら……あり得ない話ではないのだろうか。
 そのうち帰ってくるだろう……だが、帰ってこなかった。
 今、どこにいるのだろうか……。町のどこかで暮らしているのだろうか……だが、戸籍が……。

「内藤様」

 んぁ?と変な声が出た。有川が今度はまっすぐに匠を見ている。そして、深々と頭を下げた。匠が慌てて姿勢を正そうとして、膝の上の涼風がひっくり返りそうになる。

「申し訳ございませんが、内藤様の事を調べさせていただきました」
「へ?」

 匠がきょとんとする。涼風が匠の膝の上に戻りながら、有川を睨む。

「俺を?」

 はい、と有川が匠を見て、自分の事を睨む涼風を困ったように見る。

「涼風ぼっちゃまに、変な虫がついたら困りますので」

 ぷ、と夏乃が吹き出した。瑞葵が仕方がないよなぁと匠を見る。
 変な……虫。変な虫かぁ……。虫扱いされ匠が頭を掻く。涼風が口を尖らせたまま有川に「で?」と聞く。

「変な虫ではございませんでしたが……」

 有川がスーツの内ポケットから一枚のコピー用紙を取り出した。

「気になる事がございました」

 紙を開き長に渡す。長はいぶかし気にそれをざっと見た後、軽く目を見開いて今度は時間をかけてそれを読んだ。

「なんだ。これは」

 長が匠に紙を渡しながら有川に聞く。匠が読もうとすると、涼風が首を伸ばしてくる。

「十六年程前の崖崩れの記事でございます」

 新聞の切り抜きのコピーのようだった。だが、匠が良く知る新聞社の新聞ではない。どこかの地方の物なのだろうが……。だが、匠がなぜか聞いたことがある新聞社だと思いながら、記事に目を通す。

『長く降り続いた雨により未明に鉄砲水が発生。崩れた土砂に親子二人が巻き込まれ、内藤……』

「え」

 思わず記事を読み直す。
 鉄砲水。崩れた土砂……巻き込まれた親子二人。
 内藤朱音さん(38)死亡。匠君(10)……意識不明の重体。
 これは……なんだ?

「え?これは……」
「朱音さんという方は内藤様のお母様……でございますよね」

 有川が言いにくいという口調で匠に聞いてくる。匠は口元を押さえて頷く。
 事故死したと聞いていた。土砂災害?それは……聞いていない。それに……。

「俺も……事故にあっていたのか……」

 意識不明の重体。先程の心気を思い出す。色が切れていると夏乃が言った。
 俺は……俺はこの時、死にかけ……いや、死んだのか?
 唖然と記事に見入る匠を心配そうに見上げる涼風に、長が「日にちを見ろ」と言った。長の顔も険しい。
 涼風が無理やり匠の腕の中に頭を突っ込む。そして、記事の端に載っていた日付を見て目を見開いた。

「俺が生まれた……次の日か?」
「さようでございます」

 有川が頷く。そして……と有川がもう一度、それぞれの顔を見た。
 まだ、何かあるのかと瑞葵が夏乃を抱きなおす。夏乃も握り飯を食べることを忘れている。

「その崖崩れがあった場所が、本宅の県境の裏手でございました」

 物が言えない。その場にいた全員が有川を見つめる。
 有川は困り果てたという顔で顔を伏せた。

 ◇

 カチッ、カチッ……。
 時計の音がひどく耳につく。時計の音しか聞こえない。
 畳の上に胡坐をかいた匠の口元から、一本の糸が垂れていた。匠の心気の糸だ。匠はこれを歯で噛んで、意識を集中させている。
 この糸の先には長がいる。長は佐倉翁が亡くなった時に使った術場の中だ。
 持ち帰るために解体されていたが、急遽、有川と瑞葵が組み立て直した。
 術場の幕は下ろされている。その中に長と夏乃がいる。匠からは見ることができない。
 意識を集中させる。意識を深い所に下ろしていく。
 記憶を手繰る。
 心気の刻みをたどり下りていく。

『匠の中にあの子供がいれば全てつじつまがあう』

 まだ母親の腹の中にいた涼風に陽の気を送り込んでいた子供。涼風が生まれ姿を消した子供。
 家出をしたのだと言われ……探してもらえなかった子供。そして、失踪宣告を出され、死んだことにされた子供。

『放っておけばいい!』

 噛みついたのは涼風。

『そいつが匠の中にいようがいまいが、今更関係ねぇだろうがっ!』

 匠には涼風が言う言葉とは思えなかった。長に噛みつく涼風の横顔を見て、なぜだ?と思う。
 なぜか、怖がっているように見える。何が、そんなに怖い?そう考えて……涼風が怖がっている『事』に気が付いた。匠が思わず涼風の腕を掴む。
 長も涼風の言葉に一度、頷いた。長もそう思うところはあるのだろう。

『涼風が言うように、捨て置いてもいいのかもしれない』

 だが、と長は涼風を静かに見つめる。

『俺は今のお前ぐらいの子供が、毎日、あの山を登って母の腹に気を送っていた姿が、どうにも忘れられん』

 長が『俺』という言葉を使った。涼風が唇を噛む。有川に術場を運ぶように指示をしていた瑞葵も頷く。

『俺とも遊んでくれたんだ』

 そうか。涼風にはその子供の記憶はないが、長と瑞葵にはあるのだろう。

『夕食を食べた後、有川が送るまで一緒に遊んでくれた。俺は兄者以外の子供が珍しくて、まとわりついていた』

 夏乃が有川になにかできないかと聞いている。有川が何か言い、二人で扉を出ていく。その二人を長と瑞葵が見送る。

『大人に言い含められていたのかもしれないが……それでも、あれだけ真面目に役目を行っていた子供が、急にいなくなることが、おかしかったんだ』
『それなのに……大人はそう考える方が都合がよかった。涼風が生まれて役目は終わったからね』

 涼風が一歩、匠に寄った。
 その体を腕を回し、しっかりと抱きしめてやる。
 涼風の横顔が強張っている。涼風は気が付いている。だから、怖がっている。
 匠がもう一度、ぎゅっと涼風の体を抱きしめた。涼風が何を考えているのか分かって……悲しい。だから、違うと言ってやる。

『お前のせいじゃない』

 びくっと涼風の体が震えた。匠も気が付いたのかと涼風の顔が歪む。気が付いてほしくなかったと横顔に書いてある。

『わからない……』

 匠の顔も歪む。本当の事はわからない。もし、二人の考えている『事』が正しいなら。
 その子供は鉄砲水が出るほどの雨が降る中、山道を歩いていたことになる。おそらく、涼風が生まれると知ったからだ。

『それでも、お前のせいじゃない。生まれたばかりのお前には何もできない』

 涼風の体を腕に抱き込み、強い口調で言う。絶対に、涼風にできるわけがない。生まれたばかりの赤ん坊に何ができる。
 だが、涼風は乾いた口調で言い返した。まるでそれが事実だというように。

『囮にはなれる』

 匠が思わず呻いた。佐倉翁のように……死にかけていても、体を動かすことができなくても、囮にはなれる。
 その存在だけで。涼風はそう言いたいのだ。言うと思ったが!

『このくそ猿っ!』

 涼風の体を無理矢理反転させた。自分の方を向かせ、顔を手で挟み込む。
 涼風は視線を逸らして、匠と目を合わせようとしない。真っ青な顔であらぬ方を向いている。

『生まれたばかりだぞっ?!生まれたばかりの赤ん坊だったんだぞっ?!もしそうなら、俺は仕掛けた人間がクソだと思う!涼風!俺を見ろ!涼風!』

 人を陥れるため、笑って罠を仕掛けることができる人間がいる。

 くそったれがいる!

 自分を見ようとしない涼風を抱き込んで長を睨んだ。術場を運んできた有川が何事だろうかと扉から覗く。

『俺の中にその子供がいる可能性が高いんだな?』

 瑞葵が先に頷いた。涼風を見ていた長がゆらりと顔を上げて匠を見据える。
 長の目にも怒りが見える。匠と同じ怒りを誰かに向けている。

『俺はいると思う』
『俺もそう思う』

 長と瑞葵が口を揃えた。匠が涼風の頭を自分の胸に押し付けながら、なぜだ?と聞く。

『俺の名前がお前の口から出た』
『名前?』

 教えてもらっていない。聞いた記憶もない。それは先程、確かめたはずだ。

『いつ?』

 瑞葵が術場の柱を床に置きながら『電話の時だ』と言った。

『電話?』
『お前はもう、半分寝かかっていた。俺に涼風の伝言を頼んだ時だ』
『……ああ、あの時か』

 その電話は記憶があるが……。名前など口にした記憶がない。
 考え込んでいると、くいとシャツを引っ張られた。ようやく顔を上げた涼風が、言っていいのか分からないという顔で考えながら口を開く。

『お前は瑞葵がバナナが駄目だとも知っていた』
『バナナ?』

 なんだ?それは?さすがに目が丸くなる。甘党だとは知ってはいるが、バナナが駄目など聞いたこともない。瑞葵も、ぽかんとした。だが、すぐに、だからか!と涼風を睨んだ。

『俺にしつこく聞いたのは、だからか!』

 涼風がぶすくれて、また、匠の胸の顔を埋める。なるほど。甘党なくせにバナナが嫌いだったか。
 えーと……と匠が涼風の頭を撫でながら長を見た。

『この場合……どうしたらいいんだ?供養とか?』
『まず、いると確定したい』

 長がぽつりと言った。そうか。いると確定しない事には、供養もなんもないか。
 長が夏乃を見てふぅと溜息を吐いた。夏乃は何が起こっているのだろうと息をのんで立ち尽くしている。

『夏乃。心気下りを行う。おいで』

 有川の隣にいた夏乃の手からばさっと折り畳まれていた白と黒の幕が落ちた。

 ◇

 術場が出来上がるまで、長は難しい顔で壁に向き合っていた。その横に夏乃が立ち、父親の顔を必死に見ている。
 何か長が口を小さく動かしている。手順か何かを口に出すことで確認しているように見える。
 誰もが黙々と作業をしている中、騒ぐのは涼風だ。

『いやだってんだろ!』

 匠が涼風の手の戒めを解きながら、あのなと言い聞かせる。

『もうすぐ、薬が切れんだよ。さっきみたいに暴れ出したらどうすんだ。また、取っ組み合いになるぞ?』

 ぐっと涼風も唇を噛む。頬の蚯蚓腫れがまだ痛そうだ。大丈夫かと匠が傷を見ようとすると、涼風がその手を取った。

『だからって、お前を一人にできるか!』
『一人じゃない。お前の兄ちゃんたちがいる』

 術場を組み立てていた有川がちらと匠達を見た。有川もいるか。

『涼風』

 ぎゅーっと涼風を抱きしめる。もう、兄弟がそばにいるとか、人前だとかなど考えない。ほとほと疲れた。
 体も心もくたびれ果てたが。
 まだ、やることがある。やらなければならないことがある。
 いや、絶対にしなければならないことだ。
 涼風の為に。

『いやだ』

 匠が物を言う前に、いやだという涼風にどうにか笑う。お前も疲れたなと労わる様に頭を撫でてやる。

『先に行って、淫気喰っとけ。お前が喰い終わる頃にはこっちもすましておくから』 

 涼風の耳に囁く。さすがに夏乃に聞かれたらまずい。

『好きなだけ、いちゃいちゃしよう』

 突き飛ばされるかと思ったが、涼風はぎゅううとしがみついてきただけだった。
 耳だけが赤くなっていたのが可愛いかった。
 本当に……いちゃいちゃしてぇ。
 いきなり、ドガッ!と背中を蹴られた。

「っ、おっ?!」

 誰だ?と振り返り、自分がどこにいるのかわからなくなった。
 え?いったいここは……どこだ?
 周りを見回そうとして、目の前に一人の男がいることに気が付く。

「え?」

 見たことがある。だって、そうだ。この男は……。
 俺じゃねぇか。
 匠が立っていた。
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