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宣戦布告のその後で
「桃、明日も早起きして学校行くの?」
リビングのソファに腰掛けたあたしに、ママは質問をする。あたし、朝が弱いからママに起こしてもらってたんだよね。
「ううん、もう早起きはいいの。朝早く学校に行く意味、なくなったし」
「……? そう、それならいいけど」
ママは不思議そうな顔をして、夕ご飯の支度に戻っていく。
最近リフォームしたリビングダイニングはママのお気に入りで、料理をしながらあたしに話しかけてくるのだ。
これからは、生きもの係の仕事を手伝って鮫嶋くんとの時間を作るのは難しいだろう。たぶんそうとは思ってたけど、愛奈ちゃんも鮫嶋くんのことが好きらしいし。
あたしはネイルオイルを爪に塗りながら、今朝のことを思い出す。愛奈ちゃんは面と向かってあたしに宣戦布告をしてきた。さすがにそんなの、予想もしていなかったよ。愛奈ちゃんって誰にでも優しいからさ。自分が引いてあたしの恋を応援してくれると思ってたのに。
「……ウケるよね、マジで」
ただ優しいだけの子じゃない。愛奈ちゃんは本当に鮫嶋くんが好きだからこそ、あたしに真正面からぶつかってきた。恋に対して、そしてあたしに対しても誠実なような気がする。だからこそ、あたしも本気でこの恋を諦めない。そう決めたの。
甘皮を丁寧に処理して、爪の形を整える。校則違反をしなくても、ほんのちょっとの手間で可愛さは作れる。
ただ、この恋は可愛さだけでは掴みとれないだろう。鮫嶋くんにとって愛奈ちゃんが特別なのはわかるし。それが恋愛感情なのかはまだわからないけれど……。一緒の家に住んで、一緒の係で仕事をして、誰よりも長い時間を過ごしてるんだもん。そこに割って入るには、生きもの係の仕事を手伝うくらいしかできなかったのに。これからは、鮫嶋くんとの時間をどう作ったらいいんだろう……。
あたしは頭を抱える。そのとき、ふと壁に掛けてあるカレンダーが目に入った。
「そうだ、文化祭があるじゃん!」
文化祭なら準備はもちろん当日にだってチャンスは作れる。準備で一緒に長い時間を過ごせば、恋愛対象として意識してもらえる機会だってあるかもしれない。とはいえ鮫嶋くんが鈍感なのはすでにわかっている。できるだけ恋愛を意識させるには……。
「――演劇? それに、恋を題材にした作品ならいいかも!」
あたしは自分の膝を打つ。文化祭でなにをするかはロングホームルームで決めるはず。そのときに、具体的でわかりやすい案を出してみんなを納得させればいい。演目は……美女と野獣がいいかな。あたしの大好きな演劇だし、主人公が美女って設定ならたいていの生徒はベルの役をやりたがらないだろう。
「あたし、天才!? これはいけるでしょ!」
「桃ー? 誰かと喋ってるの?」
っと、声が大きすぎた。心配そうにこちらを見るママにペロっと舌を出して謝る。
「ごめんね、独り言」
愛奈ちゃん。今日言った通り、あたしは遠慮しないよ。あたしに愛奈ちゃんみたいな優しさはないけれど、それは恋を諦める理由にはならないんだから。
あたしは本棚から美女と野獣の絵本を取り出す。その最後のページを捲ると、野獣とベルのキスシーンの絵が開いた。キスシーンはさすがにちょっと恥ずかしい……かもしれない。けれど、うん。したくないわけじゃ、ない。
リビングのソファに腰掛けたあたしに、ママは質問をする。あたし、朝が弱いからママに起こしてもらってたんだよね。
「ううん、もう早起きはいいの。朝早く学校に行く意味、なくなったし」
「……? そう、それならいいけど」
ママは不思議そうな顔をして、夕ご飯の支度に戻っていく。
最近リフォームしたリビングダイニングはママのお気に入りで、料理をしながらあたしに話しかけてくるのだ。
これからは、生きもの係の仕事を手伝って鮫嶋くんとの時間を作るのは難しいだろう。たぶんそうとは思ってたけど、愛奈ちゃんも鮫嶋くんのことが好きらしいし。
あたしはネイルオイルを爪に塗りながら、今朝のことを思い出す。愛奈ちゃんは面と向かってあたしに宣戦布告をしてきた。さすがにそんなの、予想もしていなかったよ。愛奈ちゃんって誰にでも優しいからさ。自分が引いてあたしの恋を応援してくれると思ってたのに。
「……ウケるよね、マジで」
ただ優しいだけの子じゃない。愛奈ちゃんは本当に鮫嶋くんが好きだからこそ、あたしに真正面からぶつかってきた。恋に対して、そしてあたしに対しても誠実なような気がする。だからこそ、あたしも本気でこの恋を諦めない。そう決めたの。
甘皮を丁寧に処理して、爪の形を整える。校則違反をしなくても、ほんのちょっとの手間で可愛さは作れる。
ただ、この恋は可愛さだけでは掴みとれないだろう。鮫嶋くんにとって愛奈ちゃんが特別なのはわかるし。それが恋愛感情なのかはまだわからないけれど……。一緒の家に住んで、一緒の係で仕事をして、誰よりも長い時間を過ごしてるんだもん。そこに割って入るには、生きもの係の仕事を手伝うくらいしかできなかったのに。これからは、鮫嶋くんとの時間をどう作ったらいいんだろう……。
あたしは頭を抱える。そのとき、ふと壁に掛けてあるカレンダーが目に入った。
「そうだ、文化祭があるじゃん!」
文化祭なら準備はもちろん当日にだってチャンスは作れる。準備で一緒に長い時間を過ごせば、恋愛対象として意識してもらえる機会だってあるかもしれない。とはいえ鮫嶋くんが鈍感なのはすでにわかっている。できるだけ恋愛を意識させるには……。
「――演劇? それに、恋を題材にした作品ならいいかも!」
あたしは自分の膝を打つ。文化祭でなにをするかはロングホームルームで決めるはず。そのときに、具体的でわかりやすい案を出してみんなを納得させればいい。演目は……美女と野獣がいいかな。あたしの大好きな演劇だし、主人公が美女って設定ならたいていの生徒はベルの役をやりたがらないだろう。
「あたし、天才!? これはいけるでしょ!」
「桃ー? 誰かと喋ってるの?」
っと、声が大きすぎた。心配そうにこちらを見るママにペロっと舌を出して謝る。
「ごめんね、独り言」
愛奈ちゃん。今日言った通り、あたしは遠慮しないよ。あたしに愛奈ちゃんみたいな優しさはないけれど、それは恋を諦める理由にはならないんだから。
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