[完結]要らないと言ったから

シマ

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前編

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「お前なんか要らない。お前と婚約は間違いだった」

 私の目の前で吐き捨てる様にそう言ったのは、親が勝手に決めた婚約者だ。昔、一目惚れしたからと当時、婚約していた相手を陥れてまでした婚約だったはず。この人は、そんな事も忘れたのでしょうね。

「お前の顔も見たくない!出ていけ!」

 もう疲れてしまいた。格上の家からの婚約で増えた勉強にも、私を見下し嫌がらせする義母にも。そして、私を顧みない婚約者にも疲れました。

 ベランダの外には綺麗な湖や雄大な山々が広がり、鳥達が自由に飛び回っています。ベランダから見える庭には、私の両親が義両親と何か話をしている姿も見えます。そうですね、二度と顔を見なくて済む方法が、やっと分かりました。これで私は自由になれる。

「まて!そっちはベランダだぞ!」

 私を止めようと伸ばされた手を振り払い、ベランダの手摺に足を掛けた。

「何をする気だ!」

 可笑しな事を言います。顔を見たくないと仰ったのは、貴方の方ではないですか。

「や……止めて下さい……お嬢様……」

 お嬢様?私なそんな価値は無いと言って、身仕度の手伝いは愚か、私の部屋の掃除すらしないのは誰?私、令嬢のはずなのに掃除も洗濯も出来る様になったわ。ほら、その証拠に手入れもしていないから、私の指先は傷だらけでしょう?
 婚約者にもよく見えるように、自分の手を空に翳す。傷だらけの指先から血が滲んでいた。

「どういう事だ?」

 貴方ですよね?私が婚約を無視して出て行く事を望んだのは。だから上に倣って使用人も同じ事をしただけでしょう?

「は?……そんな……バカな……誰一人、そんな事は言わなかったぞ」

 私が貴方に相談したら無視されましたもの。それ以後は誰にも世話されておりません。逸れも、貴方が望んだ事でござましょう?

「そ……そんな事は望んでない」

 でも、放置された。回りは貴方が承認したと思ったのでしょうね。もう、良いでしょう?自由にしてください。



「さようなら」


 私は一言だけ言うと、手摺を乗り越えて外へ飛び出した。ここは二階だけど、どうせ誰も私を気にしないもの。医者も呼ばれるはずないわ。

 不思議ね。落ちる私を止めようと手を伸ばす婚約者が見える。ゆっくりと落ちる感覚と後、背中に強い衝撃を受けて痛みを感じた。直ぐには死ねないのですね。

「何事だ!」

「キャー、ど、どうして……」

 どうして?皆様、不思議な事を仰る。私を要らない者として扱っていたのに……目の前で死ぬのは嫌なのかしら?

「医者だ!医者を呼べ」

 止めて下さい。もう、良いでしょう?自由にしてください。

「君は、何を言ってる?」

だって、私は望まれていない人間なのですよね?
この家には釣り合わない、クズなのですよね?
もう、私の顔など見たくないないのですよね?

「誰がそんな事を……」

 誰って、貴方の息子と奥様と使用人ですよ。痛いので、もう、良いでしょう?

「さ……な…………ら」




 
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