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婚約破棄編
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「ではハリソン・フォーラス侯爵子息は常日頃から貴女に不満を持っていたと言う事で間違い無いのですね」
「はい」
別室にて騎士様に元婚約者のハリソン様が普段から魔法が使えない私との婚約に不満があった事や、先程の様に怒鳴り散らす事がよくある事。そして、あの場で知らない女性を連れて婚約破棄を宣言された事を話終えると、騎士様が深いため息を吐きながら調書を作成されました。
大きな会場でしたが入場前に二階から会場を見渡していた両陛下にあの現場をバッチリ見られ国王陛下は怒り心頭なのだとか。そりゃ、自分主催の舞踏会の最初で和やかな雰囲気をぶち壊しましたものね。
兄と調書を書き終わるのを待っていると部屋にノックの音が響きました。調書を書いていた騎士様が対応されて慌てた様子でドアを開けると、黒曜石を思わせる艶やかな黒髪に金色の瞳の男性が入って来ました。ドアを開けた騎士様より一回り身体の大きなその人の瞳は、よく見ると瞳孔が縦に長くなっています。
「今回の警備責任者でリュカ・フリューゲルであります。こちらの不手際でご迷惑をお掛けして申し訳ない」
そう言って騎士が来るのが遅かった事を詫びた。突然の謝罪に驚いていると、顎に手を添えて少し考える様に首を傾げながら私を見ています。何か変な事をしたかしら?
「急にこんな事を聞いてすみません。もしかして、アランの言っていた魔法が使えない学園の生徒は貴女の事でしょうか?」
「フリューゲル様が仰るアラン様が学園の講師でしたら間違い無いかと」
“アラン”と聞いて思い出せるのはアラン先生だけでしたので、そう答えると納得したように首を縦に振っています。
「あぁ、良かった。彼が貴女が見つからないと心配していました」
「まぁ、先生の仰っていた龍人のご友人様でしたか。重ね重ね、手を煩わせてすみません」
「いえ、魔法が使えない原因も今回の騒ぎの原因も貴女ではありません」
「「え?」」
思わず兄と二人で声を上げる。今回の騒ぎは兎も角、魔法も?一体、何が起きているの?
兄と顔を見合わせているとフリューゲル様は、両陛下と共に二階から騒ぎを見ていたと言います。
「我々、龍人は力が強すぎる為に人混みの中で何かするには向きません。その為、お二人の元には部下を向かわせ私は直接フォーラス侯爵子息の後を追ったのですが、彼が禁制の呪具を身に付けていたので捕縛致しました」
“呪具”
それは大きな山々が連なるこの国の北部に住む『氷の魔女』が作る呪いの為の魔法の道具を指している。彼女の作る道具は性能がよく便利だが、大金を払えばどんな物でも作る為、相手を呪う呪具は禁止されている。
“呪具”は使わずとも所持するだけで、取り締まりの対象になるほど危険な道具である。
「フォーラス侯爵子息は貴女から魔力を奪う呪具を身に付けていました。貴女も対になる呪具が渡されているはずです」
「妹も捕縛対象になるのですか?」
フリューゲル様の言葉に先に反応したのは兄でした。兄が口にするまで自分も捕縛対象になる可能性に気付いていませんでした。
「それは今は断言出来ませんが恐らく対象外だと思います」
「上の判断ですか……」
部屋の中は重苦しい空気に包まれていた。
「はい」
別室にて騎士様に元婚約者のハリソン様が普段から魔法が使えない私との婚約に不満があった事や、先程の様に怒鳴り散らす事がよくある事。そして、あの場で知らない女性を連れて婚約破棄を宣言された事を話終えると、騎士様が深いため息を吐きながら調書を作成されました。
大きな会場でしたが入場前に二階から会場を見渡していた両陛下にあの現場をバッチリ見られ国王陛下は怒り心頭なのだとか。そりゃ、自分主催の舞踏会の最初で和やかな雰囲気をぶち壊しましたものね。
兄と調書を書き終わるのを待っていると部屋にノックの音が響きました。調書を書いていた騎士様が対応されて慌てた様子でドアを開けると、黒曜石を思わせる艶やかな黒髪に金色の瞳の男性が入って来ました。ドアを開けた騎士様より一回り身体の大きなその人の瞳は、よく見ると瞳孔が縦に長くなっています。
「今回の警備責任者でリュカ・フリューゲルであります。こちらの不手際でご迷惑をお掛けして申し訳ない」
そう言って騎士が来るのが遅かった事を詫びた。突然の謝罪に驚いていると、顎に手を添えて少し考える様に首を傾げながら私を見ています。何か変な事をしたかしら?
「急にこんな事を聞いてすみません。もしかして、アランの言っていた魔法が使えない学園の生徒は貴女の事でしょうか?」
「フリューゲル様が仰るアラン様が学園の講師でしたら間違い無いかと」
“アラン”と聞いて思い出せるのはアラン先生だけでしたので、そう答えると納得したように首を縦に振っています。
「あぁ、良かった。彼が貴女が見つからないと心配していました」
「まぁ、先生の仰っていた龍人のご友人様でしたか。重ね重ね、手を煩わせてすみません」
「いえ、魔法が使えない原因も今回の騒ぎの原因も貴女ではありません」
「「え?」」
思わず兄と二人で声を上げる。今回の騒ぎは兎も角、魔法も?一体、何が起きているの?
兄と顔を見合わせているとフリューゲル様は、両陛下と共に二階から騒ぎを見ていたと言います。
「我々、龍人は力が強すぎる為に人混みの中で何かするには向きません。その為、お二人の元には部下を向かわせ私は直接フォーラス侯爵子息の後を追ったのですが、彼が禁制の呪具を身に付けていたので捕縛致しました」
“呪具”
それは大きな山々が連なるこの国の北部に住む『氷の魔女』が作る呪いの為の魔法の道具を指している。彼女の作る道具は性能がよく便利だが、大金を払えばどんな物でも作る為、相手を呪う呪具は禁止されている。
“呪具”は使わずとも所持するだけで、取り締まりの対象になるほど危険な道具である。
「フォーラス侯爵子息は貴女から魔力を奪う呪具を身に付けていました。貴女も対になる呪具が渡されているはずです」
「妹も捕縛対象になるのですか?」
フリューゲル様の言葉に先に反応したのは兄でした。兄が口にするまで自分も捕縛対象になる可能性に気付いていませんでした。
「それは今は断言出来ませんが恐らく対象外だと思います」
「上の判断ですか……」
部屋の中は重苦しい空気に包まれていた。
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