27 / 92
龍人の村編
13
しおりを挟む
目を覚ますとソファーに寝かされていた私の腕に新しい腕輪がつけられていた。あら、可愛い。私の好きな花だわ。
「気付いたかい」
ぼんやりと腕輪を見ていた私に先に声を掛けたのはソフィア様で、その後ろにはリュカ様もいる。この状態からすると私、また倒れたの?
「すみません。ご迷惑お掛けしました」
慌てて謝罪する私を手で制したソフィア様は静かに首を横に降った。
「気にしなくていい。それよりここに来る前に何があった?」
「何がって」
「学園で何か言われたり意地悪されたりしなかったかい?」
学園の事を聞かれて驚いたけど、隠しても仕方ないから“ポンコツ魔法使い”と呼ばれていた事やテストの回答が不正に消された事を話した。でも、急にどうして?
「ルナ、あんたはね自分の魔力で自分を傷つけているだよ」
ソフィア様が教えてくれたのは、魔力が強くなりすぎて身体の内側から壊そうとしている事。そして、それは私自身の心の問題でもある事だった。
「心の問題」
「そうさ、だからあんたは自分を卑下しちゃいけないよ。魔力が高いから魔法使いにならないといけない訳じゃないんだ」
「え、でも」
言いたい事がありすぎて言葉にならない。だって、だって……
お父様は私の魔力量が多いから
侯爵様は侯爵家にとって名誉な事だから
講師達は魔法陣までは成功しているから
『魔法使いになりなさい』
ずっと幼い頃から言われていたわ。周りの人も期待していたわ。でも、一度も魔法が発動しないから次第に私から離れて行ったわ。そう皆、最後には“ポンコツ魔法使い”は必要ないって……
「私は練習しても無駄だから魔法使いにならなくて良いって事ですか?」
グルグルと考えてポロリと溢れた言葉は、ここに来る前にお父様に言われてからずっと疑問だった。どうしてならなくていいの?ポンコツで魔法使いになれないから“ならなくていい”の?
「そりゃ違う」
「でも、私はポンコツだから魔法を発動出来ないですし」
「それも違う。魔法が使えなかったのは呪具のせい。あんたは何も悪くない。さっき、ちゃんと魔法が発動したじゃないか。ルナは何も悪くないんだよ」
ソフィア様の言葉を聞いて肩の力が抜けた。そうか私のせいじゃなかったんだ。努力が足りない訳でもやる気がない訳でもなくて、本当に呪具のせいだったんだ。そう思えたらポロポロ涙が溢れだして止まらなくなった。
「もう私、ポンコツじゃない?魔法使える?」
「そんな言葉、二度と言わせやしないよ。そんな事を言う奴がいたら私がお仕置きしてやるよ」
ニヤリと笑うソフィア様は頼もしくもあるけど、やりずきそうでちょっと怖い。そう思っていたらリュカ様がハンカチを渡してくれた。
「婆さんはやりずきるから俺が仕返ししてやる」
“俺が仕返しする”と聞いて驚いてリュカ様の顔を見上げると、私に向けて得意気な表情をしていた。やりずきるから?……確かにソフィア様が相手を魔法でボコボコに打ちのめす姿しか思い浮かばないわ。
「フフ、ソフィア様なら相手がボロボロになるまでやりそう」
「そう思うだろう。治療のお礼と嘘をついた詫びだと思って、何時でも言ってくれ」
リュカ様が腕を組み胸を張って堂々と言ってくれて、そんな彼の態度にまた笑った。久しぶりに家族以外と楽しい会話をした気がする。
「ルナ、一つ提案なんだが、あんたドラゴンと契約しないかい?」
「え?契約って使い魔契約みたいなものですか?」
使い魔契約なら授業で習ったし、実際に学園内で連れている人もいたわ。確か契約専用魔法陣で呼び掛けて、応えて出てきた魔物と契約するんだったよね。契約には対価が必要で、魔力だったり宝石だったり魔物によって要求が違うから、確認してから契約する事って教科書には書いていたわね。
「いや、ドラゴンだけはちょっと違うんだよ」
ドラゴンと契約するには相手と仲良くなる事が第一条件。
次にドラゴンのご飯と会話をする為の大きな魔力。
この二つが揃って初めて契約交渉が出来るらしい。それって初めて会う私にはかなり厳しい条件じゃない?魔力はともかく仲良くならなきゃダメなんでしょう?
「ネグルに初対面で気に入られていたし、爺さんが呼んでるから大丈夫さ」
「呼んでるって何の話ですか」
詳しく話を聞くと私の魔力に気付いたドラゴンの翁と呼ばれている最長老が呼んでいるらしい。最長老って何歳?何て暢気に考えていたら、体が大きすぎて村に来ると建物を壊すって言うから引いた。
「えっと、家一軒より大きなドラゴンさんですか……想像つかないです」
「そうさね、この家三軒分はあるかね。大丈夫、図体がデカイだけの爺さんだよ。明日、リュカと一緒に行ってきな」
ソフィア様、家三軒分はデカイだけですまないと思います。
「気付いたかい」
ぼんやりと腕輪を見ていた私に先に声を掛けたのはソフィア様で、その後ろにはリュカ様もいる。この状態からすると私、また倒れたの?
「すみません。ご迷惑お掛けしました」
慌てて謝罪する私を手で制したソフィア様は静かに首を横に降った。
「気にしなくていい。それよりここに来る前に何があった?」
「何がって」
「学園で何か言われたり意地悪されたりしなかったかい?」
学園の事を聞かれて驚いたけど、隠しても仕方ないから“ポンコツ魔法使い”と呼ばれていた事やテストの回答が不正に消された事を話した。でも、急にどうして?
「ルナ、あんたはね自分の魔力で自分を傷つけているだよ」
ソフィア様が教えてくれたのは、魔力が強くなりすぎて身体の内側から壊そうとしている事。そして、それは私自身の心の問題でもある事だった。
「心の問題」
「そうさ、だからあんたは自分を卑下しちゃいけないよ。魔力が高いから魔法使いにならないといけない訳じゃないんだ」
「え、でも」
言いたい事がありすぎて言葉にならない。だって、だって……
お父様は私の魔力量が多いから
侯爵様は侯爵家にとって名誉な事だから
講師達は魔法陣までは成功しているから
『魔法使いになりなさい』
ずっと幼い頃から言われていたわ。周りの人も期待していたわ。でも、一度も魔法が発動しないから次第に私から離れて行ったわ。そう皆、最後には“ポンコツ魔法使い”は必要ないって……
「私は練習しても無駄だから魔法使いにならなくて良いって事ですか?」
グルグルと考えてポロリと溢れた言葉は、ここに来る前にお父様に言われてからずっと疑問だった。どうしてならなくていいの?ポンコツで魔法使いになれないから“ならなくていい”の?
「そりゃ違う」
「でも、私はポンコツだから魔法を発動出来ないですし」
「それも違う。魔法が使えなかったのは呪具のせい。あんたは何も悪くない。さっき、ちゃんと魔法が発動したじゃないか。ルナは何も悪くないんだよ」
ソフィア様の言葉を聞いて肩の力が抜けた。そうか私のせいじゃなかったんだ。努力が足りない訳でもやる気がない訳でもなくて、本当に呪具のせいだったんだ。そう思えたらポロポロ涙が溢れだして止まらなくなった。
「もう私、ポンコツじゃない?魔法使える?」
「そんな言葉、二度と言わせやしないよ。そんな事を言う奴がいたら私がお仕置きしてやるよ」
ニヤリと笑うソフィア様は頼もしくもあるけど、やりずきそうでちょっと怖い。そう思っていたらリュカ様がハンカチを渡してくれた。
「婆さんはやりずきるから俺が仕返ししてやる」
“俺が仕返しする”と聞いて驚いてリュカ様の顔を見上げると、私に向けて得意気な表情をしていた。やりずきるから?……確かにソフィア様が相手を魔法でボコボコに打ちのめす姿しか思い浮かばないわ。
「フフ、ソフィア様なら相手がボロボロになるまでやりそう」
「そう思うだろう。治療のお礼と嘘をついた詫びだと思って、何時でも言ってくれ」
リュカ様が腕を組み胸を張って堂々と言ってくれて、そんな彼の態度にまた笑った。久しぶりに家族以外と楽しい会話をした気がする。
「ルナ、一つ提案なんだが、あんたドラゴンと契約しないかい?」
「え?契約って使い魔契約みたいなものですか?」
使い魔契約なら授業で習ったし、実際に学園内で連れている人もいたわ。確か契約専用魔法陣で呼び掛けて、応えて出てきた魔物と契約するんだったよね。契約には対価が必要で、魔力だったり宝石だったり魔物によって要求が違うから、確認してから契約する事って教科書には書いていたわね。
「いや、ドラゴンだけはちょっと違うんだよ」
ドラゴンと契約するには相手と仲良くなる事が第一条件。
次にドラゴンのご飯と会話をする為の大きな魔力。
この二つが揃って初めて契約交渉が出来るらしい。それって初めて会う私にはかなり厳しい条件じゃない?魔力はともかく仲良くならなきゃダメなんでしょう?
「ネグルに初対面で気に入られていたし、爺さんが呼んでるから大丈夫さ」
「呼んでるって何の話ですか」
詳しく話を聞くと私の魔力に気付いたドラゴンの翁と呼ばれている最長老が呼んでいるらしい。最長老って何歳?何て暢気に考えていたら、体が大きすぎて村に来ると建物を壊すって言うから引いた。
「えっと、家一軒より大きなドラゴンさんですか……想像つかないです」
「そうさね、この家三軒分はあるかね。大丈夫、図体がデカイだけの爺さんだよ。明日、リュカと一緒に行ってきな」
ソフィア様、家三軒分はデカイだけですまないと思います。
30
あなたにおすすめの小説
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
妹に全て奪われて死んだ私、二度目の人生では王位も恋も譲りません
タマ マコト
ファンタジー
第一王女セレスティアは、
妹に婚約者も王位継承権も奪われた祝宴の夜、
誰にも気づかれないまま毒殺された。
――はずだった。
目を覚ますと、
すべてを失う直前の過去に戻っていた。
裏切りの順番も、嘘の言葉も、
自分がどう死ぬかさえ覚えたまま。
もう、譲らない。
「いい姉」も、「都合のいい王女」もやめる。
二度目の人生、
セレスティアは王位も恋も
自分の意思で掴み取ることを決める。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
その人、聖女じゃなくて聖女『モドキ』ですよ?~選んだのは殿下ですので、あとはお好きにどうぞ~
みなと
ファンタジー
「お前は慎みというものを知るべきだ! 俺は、我が腕の中にいるアルティナを次代の筆頭聖女に任命し、そして新たな我が婚約者とする!」
人を指さしてドヤ顔を披露するこの国の王太子殿下。
そしてその隣にいる、聖女として同期の存在であるアルティナ。
二人はとてつもなく自信満々な様子で、国の筆頭聖女であるオフィーリア・ヴァルティスを見てニヤついている。
そんな中、オフィーリアは内心でガッツポーズをしていた。
これで……ようやく能無しのサポートをしなくて良い!と、今から喜ぶわけにはいかない。
泣きそうな表情を作って……悲しんでいるふりをして、そして彼女は国を追放された。
「いよっしゃああああああああああああ! これで念願のおば様のところに行って薬師としてのお勉強ができるわよ!!」
城の荷物をほいほいとアイテムボックスへ放り込んで、とても身軽な状態でオフィーリアは足取り軽くおばが住んでいる国境付近の村へと向かう。
なお、その頃城では会議から戻った国王によって、王太子に鉄拳制裁が行われるところだった――。
後悔しても、時すでに遅し。
アルティナでは何の役に立たないことを思い知った王太子がオフィーリアを呼び戻そうと奮闘するも、見向きもされないという現実に打ちひしがれることになってしまったのだ。
※小説家になろう、でも公開中
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる