67 / 92
学園復帰編
18
しおりを挟む
完成した魔石を持ってソフィア様と一緒にリュカ様の部屋に行くと、カイトお兄ちゃんやマーフィー君も来ていた。
「やぁ、ルー。久しぶりだな」
「マーフィー君も元気そうだね」
「その魔石……ラクルが?」
マーフィー君の問い掛けに黙って頷くと、苦笑いしながら革袋を差し出した。
「必要かもと思ったが要らなかったな」
袋の中を覗くと色とりどりの魔石が詰まっていて驚いて顔を上げると、笑いながら受け取って欲しいと言われて困惑した。
「どうせ私が持っていても宝の持ち腐れだからルーが使って。さぁ、彼を助けるんだろう?」
マーフィー君に促されリュカ様の側に行くと、彼の手を取り魔石を握らせ自分の両手で包む。どうか上手くいきますように……
「発動」
私の言葉に反応して魔石がゆっくりと光だす。指の隙間から漏れる光りがユラユラと揺らめきながらリュカ様の身体を包むと、静かに消えていった。光が消えると苦し気な表情が消えて呼吸も落ちつき始めた。
「成功したようだね」
ソフィア様のその一言で肩に入っていた力が抜けた時、開いた手の中で魔石がボロボロと崩れだした。
「魔力を使いきったみたいです」
サリーナ先生と作った魔石も幾つかは、目の前ですぐに崩れて消えた事を伝えるとソフィア様は黙って頷く。魔石の話をしながらリュカ様の様子を伺っていると、ゆっくり目を開けた彼は、意識がハッキリしていないのかわボンヤリと視線を彷徨わせている。まだ魔力が残っているのかしら?
「リュカ様、大丈夫ですか?聞こえますか?」
少し心配になって声を掛けると、ゆっくりと顔を動かし視線を向けた彼は嬉しそうに微笑みを浮かべた。
「ルナ嬢」
「は、はい……良かった」
名前を呼ばれて涙が滲むのを瞬きで誤魔化していると、私の後ろから様子を見ていたソフィア様から声を掛けている。
「まったく人騒がせな孫だね。ルナに感謝しな」
「……婆さんか……他に誰がいるんだ?」
「今から説明するから待ちな」
少し驚いた様子のリュカ様が身体を起こそうとしてケビン団長に止められている。その横でソフィア様は眉間にシワを寄せて、少し考え事をしている様に見えた。渋々ベッドに戻ったリュカ様だったけど、ソフィア様が説明している間に再び寝てしまっていた。
「リュカ様?」
「寝たのかい」
声を掛けてもピクリとも動かないリュカ様に、ソフィア様が無言で側に移動すると彼の体調を調べたあと深いため息を吐き出した。
「魔力の使いすぎだね……回復するまで目は見えないよ」
「大魔法使い殿、それは何故ですか?」
カイトお兄ちゃんがソフィア様に理由を尋ねると、壁に掛けてあったリュカ様の上着のポケットから眼鏡を取り出した。
「リュカが魔法使いになれなかった原因さ。目に魔力が集中しているんだ」
ソフィア様の話はケビン団長以外、知らなかったらしい。皆が驚いた表情になる中、ソフィア様は淡々と話を続けた。
「リュカは元々、解析の魔力に特化していてねぇ。目で見た物全てを無意識に解析してしまうんだよ」
その言葉を聞いて学園に来た時、掛けていた眼鏡を外した事を思い出した。あれは魔力でエリザベスの居場所を確認する為に?
「魔力が無ければ解析出来ない。解析が出来なければ見ることが出来ない。だから普段はドラゴンの鱗で魔力を抑えているんなだよ」
リュカ様のメガネは翁さんの鱗で作った特別製で、魔力の量を調整して解析力だけを抑えてくれるらしい。魔力がないと見ることが出来ないなんて……そんな事があるの?
「魔力と視力が直結しているというのですか」
カイトお兄ちゃんの呟きの様な質問に、ソフィア様は大きく頷いた。驚いたのは私だけじゃなかったみたい。部屋から全ての音が消えてしまった様な錯覚すら感じた。
「そうさ。魔力が半分ほど回復するまで見えないね」
ハッキリと断言するソフィア様の話し方はまるで以前にも同じ様な事があった様に聞こえる。そう思ったのは私だけじゃなくて、ラクちゃんが手を挙げてから質問していた。
「そこまで断言出来るということは、以前にも同じ様な事があっての事と認識で宜しいですか?」
「あぁ、幼い頃に何度か魔力の使いすぎで見えなくなったよ。一晩で済む事もあれば一週間程、時間が掛かった事もある」
重苦しい空気が部屋に広がる中、取り敢えず一晩様子を見る事になり一階の応接室に移動した。
「やぁ、ルー。久しぶりだな」
「マーフィー君も元気そうだね」
「その魔石……ラクルが?」
マーフィー君の問い掛けに黙って頷くと、苦笑いしながら革袋を差し出した。
「必要かもと思ったが要らなかったな」
袋の中を覗くと色とりどりの魔石が詰まっていて驚いて顔を上げると、笑いながら受け取って欲しいと言われて困惑した。
「どうせ私が持っていても宝の持ち腐れだからルーが使って。さぁ、彼を助けるんだろう?」
マーフィー君に促されリュカ様の側に行くと、彼の手を取り魔石を握らせ自分の両手で包む。どうか上手くいきますように……
「発動」
私の言葉に反応して魔石がゆっくりと光だす。指の隙間から漏れる光りがユラユラと揺らめきながらリュカ様の身体を包むと、静かに消えていった。光が消えると苦し気な表情が消えて呼吸も落ちつき始めた。
「成功したようだね」
ソフィア様のその一言で肩に入っていた力が抜けた時、開いた手の中で魔石がボロボロと崩れだした。
「魔力を使いきったみたいです」
サリーナ先生と作った魔石も幾つかは、目の前ですぐに崩れて消えた事を伝えるとソフィア様は黙って頷く。魔石の話をしながらリュカ様の様子を伺っていると、ゆっくり目を開けた彼は、意識がハッキリしていないのかわボンヤリと視線を彷徨わせている。まだ魔力が残っているのかしら?
「リュカ様、大丈夫ですか?聞こえますか?」
少し心配になって声を掛けると、ゆっくりと顔を動かし視線を向けた彼は嬉しそうに微笑みを浮かべた。
「ルナ嬢」
「は、はい……良かった」
名前を呼ばれて涙が滲むのを瞬きで誤魔化していると、私の後ろから様子を見ていたソフィア様から声を掛けている。
「まったく人騒がせな孫だね。ルナに感謝しな」
「……婆さんか……他に誰がいるんだ?」
「今から説明するから待ちな」
少し驚いた様子のリュカ様が身体を起こそうとしてケビン団長に止められている。その横でソフィア様は眉間にシワを寄せて、少し考え事をしている様に見えた。渋々ベッドに戻ったリュカ様だったけど、ソフィア様が説明している間に再び寝てしまっていた。
「リュカ様?」
「寝たのかい」
声を掛けてもピクリとも動かないリュカ様に、ソフィア様が無言で側に移動すると彼の体調を調べたあと深いため息を吐き出した。
「魔力の使いすぎだね……回復するまで目は見えないよ」
「大魔法使い殿、それは何故ですか?」
カイトお兄ちゃんがソフィア様に理由を尋ねると、壁に掛けてあったリュカ様の上着のポケットから眼鏡を取り出した。
「リュカが魔法使いになれなかった原因さ。目に魔力が集中しているんだ」
ソフィア様の話はケビン団長以外、知らなかったらしい。皆が驚いた表情になる中、ソフィア様は淡々と話を続けた。
「リュカは元々、解析の魔力に特化していてねぇ。目で見た物全てを無意識に解析してしまうんだよ」
その言葉を聞いて学園に来た時、掛けていた眼鏡を外した事を思い出した。あれは魔力でエリザベスの居場所を確認する為に?
「魔力が無ければ解析出来ない。解析が出来なければ見ることが出来ない。だから普段はドラゴンの鱗で魔力を抑えているんなだよ」
リュカ様のメガネは翁さんの鱗で作った特別製で、魔力の量を調整して解析力だけを抑えてくれるらしい。魔力がないと見ることが出来ないなんて……そんな事があるの?
「魔力と視力が直結しているというのですか」
カイトお兄ちゃんの呟きの様な質問に、ソフィア様は大きく頷いた。驚いたのは私だけじゃなかったみたい。部屋から全ての音が消えてしまった様な錯覚すら感じた。
「そうさ。魔力が半分ほど回復するまで見えないね」
ハッキリと断言するソフィア様の話し方はまるで以前にも同じ様な事があった様に聞こえる。そう思ったのは私だけじゃなくて、ラクちゃんが手を挙げてから質問していた。
「そこまで断言出来るということは、以前にも同じ様な事があっての事と認識で宜しいですか?」
「あぁ、幼い頃に何度か魔力の使いすぎで見えなくなったよ。一晩で済む事もあれば一週間程、時間が掛かった事もある」
重苦しい空気が部屋に広がる中、取り敢えず一晩様子を見る事になり一階の応接室に移動した。
42
あなたにおすすめの小説
【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】
小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」
私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。
退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?
案の定、シャノーラはよく理解していなかった。
聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2025年10月25日、外編全17話投稿済み。第二部準備中です。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
妹に婚約者を奪われた上に断罪されていたのですが、それが公爵様からの溺愛と逆転劇の始まりでした
水上
恋愛
濡れ衣を着せられ婚約破棄を宣言された裁縫好きの地味令嬢ソフィア。
絶望する彼女を救ったのは、偏屈で有名な公爵のアレックスだった。
「君の嘘は、安物のレースのように穴だらけだね」
彼は圧倒的な知識と論理で、ソフィアを陥れた悪役たちの嘘を次々と暴いていく。
これが、彼からの溺愛と逆転劇の始まりだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる