[完結]婚約破棄したいので愛など今更、結構です

シマ

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「すまないが兄上を離宮へ連れて行ってくれ」

 ジークベルト殿下が一緒に来ていた護衛騎士の方々に指示を出しております。人数が多いと思いましたけど、成る程、アイザック殿下が抵抗した時の対策ですのね。

「貴様、私を誰だかわかっているのか!皇太子だぞ!!」

「元ですよ、兄上」

 ジークベルト殿下がアイザック殿下に射るような視線を向けた。元ですか。先程、継承権抹消と仰いましたから当然ですわね。

「そんなバカな事があるか!父上はご乱心なのだ!」

 苦しい言い訳されるアイザック殿下……じゃないわね。アイザック様にジークベルト殿下だけでなく護衛騎士や我が家の者も呆れた視線を向けていますが、当の本人はお気付きではないご様子。

「リリーナ!お前は婚約者だろう!助けろ!」

 この期に及んで、まだ私を婚約者扱いの上に助けを求めるとは恥を知らないのかしら?

「……撤回されましたから、名前で呼ばないでいただけます?不愉快ですわ」

 私から拒絶されるとは思っていなかったのか、アイザック様が唖然とされました。あんな態度をされれば誰だって嫌いになると思いましたけど、私だけかしら?
 そんな事を考えている間に、アイザック様は馬車に押し込められて出ていかれました。やっと静かになりましたわ。

「リリーナ嬢」

 名前で呼ばれる違和感を心の中に押し込めて、笑顔で返事をするとジークベルト殿下は苦笑いをされていました。

「もう申し訳ないのですが、皇帝より伝言です。もう一人の息子、ジークベルトと婚約して欲しいと仰せです」

「……結構ですわ。私以外にも聡明でお綺麗な方々が、大勢いらっしゃいますわよ、皇太子殿下?」

 嫌な予感は的中でしょうか。もう皇族との婚約なんてこりごりです。そんな私を無視して、ジークベルト殿下はアイザック様との違いを語り始めました。生徒会の仕事も他の公務も全て、ジークベルト殿下が引き継ぐそうです。私に仕事の進捗具合を確認されます。それは分かりましたが、距離が余りにも近すぎて一歩下がると二歩詰めて来ます。

「殿下、離れて下さい」

「婚約者なのですから、問題ありませんよ」

 は?婚約者?私、断わりましたよね?
 混乱する私を見て、殿下は楽しそうに声を上げて笑いました。

「結構ですと仰いましたよね?それは賛同したのと同じ意味ですよ」

 ジークベルト殿下が笑顔で私の手を取ります。でも、目が笑っていませんわ。……なんでしょう?寒気がします。

「私は、否定の意味で言いました。ハッキリとお断り致します」

「ふふ、一筋縄ではいかない。その強気な視線と態度……良いですね」

 殿下の笑顔を見ていると寒気が増します。そう獰猛な肉食獣の檻に、無防備に入れられた様な気分です。

「私は護られるだけのか弱い女性は要りません。自立し共に歩んで行ける女性が良い。貴女の様にね」

 私の手を殿下が自分の口元に引き寄せます。ゆっくりと私の目を見ながら、手の甲に口付けを落としました。

「私は貴女が好きです。これから落としにいきますので、覚悟して下さい」

 ストレートな言葉に私は、頬が熱くなるのを感じて手を引き抜こうとしましたが、殿下が離してくれません。その獰猛な目に見詰められて、私は思わず叫びました。

「今更、愛など結構です!」


 こうして私とジークベルト殿下の追い駆けっこが始まったのです。絶対に逃げ切って、平凡で穏やかな生活を手に入れて見せますわ!


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