4 / 4
結
しおりを挟む
「すまないが兄上を離宮へ連れて行ってくれ」
ジークベルト殿下が一緒に来ていた護衛騎士の方々に指示を出しております。人数が多いと思いましたけど、成る程、アイザック殿下が抵抗した時の対策ですのね。
「貴様、私を誰だかわかっているのか!皇太子だぞ!!」
「元ですよ、兄上」
ジークベルト殿下がアイザック殿下に射るような視線を向けた。元ですか。先程、継承権抹消と仰いましたから当然ですわね。
「そんなバカな事があるか!父上はご乱心なのだ!」
苦しい言い訳されるアイザック殿下……じゃないわね。アイザック様にジークベルト殿下だけでなく護衛騎士や我が家の者も呆れた視線を向けていますが、当の本人はお気付きではないご様子。
「リリーナ!お前は婚約者だろう!助けろ!」
この期に及んで、まだ私を婚約者扱いの上に助けを求めるとは恥を知らないのかしら?
「……撤回されましたから、名前で呼ばないでいただけます?不愉快ですわ」
私から拒絶されるとは思っていなかったのか、アイザック様が唖然とされました。あんな態度をされれば誰だって嫌いになると思いましたけど、私だけかしら?
そんな事を考えている間に、アイザック様は馬車に押し込められて出ていかれました。やっと静かになりましたわ。
「リリーナ嬢」
名前で呼ばれる違和感を心の中に押し込めて、笑顔で返事をするとジークベルト殿下は苦笑いをされていました。
「もう申し訳ないのですが、皇帝より伝言です。もう一人の息子、ジークベルトと婚約して欲しいと仰せです」
「……結構ですわ。私以外にも聡明でお綺麗な方々が、大勢いらっしゃいますわよ、皇太子殿下?」
嫌な予感は的中でしょうか。もう皇族との婚約なんてこりごりです。そんな私を無視して、ジークベルト殿下はアイザック様との違いを語り始めました。生徒会の仕事も他の公務も全て、ジークベルト殿下が引き継ぐそうです。私に仕事の進捗具合を確認されます。それは分かりましたが、距離が余りにも近すぎて一歩下がると二歩詰めて来ます。
「殿下、離れて下さい」
「婚約者なのですから、問題ありませんよ」
は?婚約者?私、断わりましたよね?
混乱する私を見て、殿下は楽しそうに声を上げて笑いました。
「結構ですと仰いましたよね?それは賛同したのと同じ意味ですよ」
ジークベルト殿下が笑顔で私の手を取ります。でも、目が笑っていませんわ。……なんでしょう?寒気がします。
「私は、否定の意味で言いました。ハッキリとお断り致します」
「ふふ、一筋縄ではいかない。その強気な視線と態度……良いですね」
殿下の笑顔を見ていると寒気が増します。そう獰猛な肉食獣の檻に、無防備に入れられた様な気分です。
「私は護られるだけのか弱い女性は要りません。自立し共に歩んで行ける女性が良い。貴女の様にね」
私の手を殿下が自分の口元に引き寄せます。ゆっくりと私の目を見ながら、手の甲に口付けを落としました。
「私は貴女が好きです。これから落としにいきますので、覚悟して下さい」
ストレートな言葉に私は、頬が熱くなるのを感じて手を引き抜こうとしましたが、殿下が離してくれません。その獰猛な目に見詰められて、私は思わず叫びました。
「今更、愛など結構です!」
こうして私とジークベルト殿下の追い駆けっこが始まったのです。絶対に逃げ切って、平凡で穏やかな生活を手に入れて見せますわ!
end
ジークベルト殿下が一緒に来ていた護衛騎士の方々に指示を出しております。人数が多いと思いましたけど、成る程、アイザック殿下が抵抗した時の対策ですのね。
「貴様、私を誰だかわかっているのか!皇太子だぞ!!」
「元ですよ、兄上」
ジークベルト殿下がアイザック殿下に射るような視線を向けた。元ですか。先程、継承権抹消と仰いましたから当然ですわね。
「そんなバカな事があるか!父上はご乱心なのだ!」
苦しい言い訳されるアイザック殿下……じゃないわね。アイザック様にジークベルト殿下だけでなく護衛騎士や我が家の者も呆れた視線を向けていますが、当の本人はお気付きではないご様子。
「リリーナ!お前は婚約者だろう!助けろ!」
この期に及んで、まだ私を婚約者扱いの上に助けを求めるとは恥を知らないのかしら?
「……撤回されましたから、名前で呼ばないでいただけます?不愉快ですわ」
私から拒絶されるとは思っていなかったのか、アイザック様が唖然とされました。あんな態度をされれば誰だって嫌いになると思いましたけど、私だけかしら?
そんな事を考えている間に、アイザック様は馬車に押し込められて出ていかれました。やっと静かになりましたわ。
「リリーナ嬢」
名前で呼ばれる違和感を心の中に押し込めて、笑顔で返事をするとジークベルト殿下は苦笑いをされていました。
「もう申し訳ないのですが、皇帝より伝言です。もう一人の息子、ジークベルトと婚約して欲しいと仰せです」
「……結構ですわ。私以外にも聡明でお綺麗な方々が、大勢いらっしゃいますわよ、皇太子殿下?」
嫌な予感は的中でしょうか。もう皇族との婚約なんてこりごりです。そんな私を無視して、ジークベルト殿下はアイザック様との違いを語り始めました。生徒会の仕事も他の公務も全て、ジークベルト殿下が引き継ぐそうです。私に仕事の進捗具合を確認されます。それは分かりましたが、距離が余りにも近すぎて一歩下がると二歩詰めて来ます。
「殿下、離れて下さい」
「婚約者なのですから、問題ありませんよ」
は?婚約者?私、断わりましたよね?
混乱する私を見て、殿下は楽しそうに声を上げて笑いました。
「結構ですと仰いましたよね?それは賛同したのと同じ意味ですよ」
ジークベルト殿下が笑顔で私の手を取ります。でも、目が笑っていませんわ。……なんでしょう?寒気がします。
「私は、否定の意味で言いました。ハッキリとお断り致します」
「ふふ、一筋縄ではいかない。その強気な視線と態度……良いですね」
殿下の笑顔を見ていると寒気が増します。そう獰猛な肉食獣の檻に、無防備に入れられた様な気分です。
「私は護られるだけのか弱い女性は要りません。自立し共に歩んで行ける女性が良い。貴女の様にね」
私の手を殿下が自分の口元に引き寄せます。ゆっくりと私の目を見ながら、手の甲に口付けを落としました。
「私は貴女が好きです。これから落としにいきますので、覚悟して下さい」
ストレートな言葉に私は、頬が熱くなるのを感じて手を引き抜こうとしましたが、殿下が離してくれません。その獰猛な目に見詰められて、私は思わず叫びました。
「今更、愛など結構です!」
こうして私とジークベルト殿下の追い駆けっこが始まったのです。絶対に逃げ切って、平凡で穏やかな生活を手に入れて見せますわ!
end
1,918
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います
下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。
御都合主義のハッピーエンドです。
元鞘に戻ります。
ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。
【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな
みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」
タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
痛みは教えてくれない
河原巽
恋愛
王立警護団に勤めるエレノアは四ヶ月前に異動してきたマグラに冷たく当たられている。顔を合わせれば舌打ちされたり、「邪魔」だと罵られたり。嫌われていることを自覚しているが、好きな職場での仲間とは仲良くしたかった。そんなある日の出来事。
マグラ視点の「触れても伝わらない」というお話も公開中です。
別サイトにも掲載しております。
【短編】捨てられた公爵令嬢ですが今さら謝られても「もう遅い」
みねバイヤーン
恋愛
「すまなかった、ヤシュナ。この通りだ、どうか王都に戻って助けてくれないか」
ザイード第一王子が、婚約破棄して捨てた公爵家令嬢ヤシュナに深々と頭を垂れた。
「お断りします。あなた方が私に対して行った数々の仕打ち、決して許すことはありません。今さら謝ったところで、もう遅い。ばーーーーーか」
王家と四大公爵の子女は、王国を守る御神体を毎日清める義務がある。ところが聖女ベルが現れたときから、朝の清めはヤシュナと弟のカルルクのみが行なっている。務めを果たさず、自分を使い潰す気の王家にヤシュナは切れた。王家に対するざまぁの準備は着々と進んでいる。
「婚約の約束を取り消しませんか」と言われ、涙が零れてしまったら
古堂すいう
恋愛
今日は待ちに待った婚約発表の日。
アベリア王国の公爵令嬢─ルルは、心を躍らせ王城のパーティーへと向かった。
けれど、パーティーで見たのは想い人である第二王子─ユシスと、その横に立つ妖艶で美人な隣国の王女。
王女がユシスにべったりとして離れないその様子を見て、ルルは切ない想いに胸を焦がして──。
なんでそんなに婚約者が嫌いなのかと問われた殿下が、婚約者である私にわざわざ理由を聞きに来たんですけど。
下菊みこと
恋愛
侍従くんの一言でさくっと全部解決に向かうお話。
ご都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる