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殿下が押し掛けてきた次の週。今度は陛下から呼び出しがあった。届いた手紙を携えて登城すると、陛下の側近の方が直接、迎えに来て案内してくれた。案内されたのは執務室の隣にある急な話し合いなんかに使われる小さな部屋だった。
「陛下、シュミットガル令嬢をお連れしました」
「入れ」
中からの返事を待って入ると、陛下だけがソファーに深く座って疲れた様な表情をしている。側近の方に促され向かいのソファーに座ると、陛下はゆっくりと深いため息を吐き出した。
「急に呼び出してすまないね。ルーベルトとは話が合わなかったか?」
「……何の事で御座いましょう」
「婚約の話が進んでいないと聞いてね」
柔なか言い方で私に尋ねる陛下は、何処か苛立っているように見えた。仕事が立て込んでいるのか、それとも自分の思い通りに進まない婚約に焦れているのか。
「婚約に私の意思が反映されるのですか?」
「何故、そう思った理由を話してくれ」
「前回の婚約も私は反対しましたし、何度も破棄を申し出たはずですが?承認されなかった張本人が何を仰っているのでしょう」
私の言葉を聞いて一瞬だけ眉間にシワを寄せた陛下は、何かを堪えるように深いため息を吐き出した。
「私が悪かった。婚約者を早急に決めなければ君が危なかったのだ。破棄を認めなかった事も同じ理由だ」
「そうですか。今更、破棄を認めた理由をお伺いしても宜しいでしょうか?」
大きく頷いた陛下は、改めて私に頭を下げた。ローランド先生が褒めた事が発端だった私の噂が独り歩きして、陛下への謁見を境に陛下のお気に入りなんて呼ばれる様になっていた。陛下自身が気がついた時には噂を終息させるには広がり過ぎていて、息子と婚約させて護衛させるつもりだった。ところがコリン殿下は身体が弱く命の危険があったし他の王子には婚約者がいた為、王弟殿下に話を持っていっている間に父が友人の侯爵様と話を纏めてしまったと……
「焦っておられたのですか?どのみち伯爵令嬢に過ぎない私では王族との婚約は無理で御座いましょう」
「そうだ。反対する者を説き伏せている間に事は済んでいた。私には婚約を承認するしかなかったのだよ」
「そうですか。しかし、今更、婚約破棄をされた傷物の私には王族との婚約は難しいですわ。親戚から養子を迎えようと考えています」
「それは……誰とも結婚しないつもりか?」
「どうして信用出来ますか?私が欲しいと言いながら娼館に通う人や自分の意見も言わずに俯くだけの人ですよ」
可笑しな事をと私が笑えば、陛下は絶句していた。コリン殿下はともかく、ルーベルト殿下の事はご存知なかった様だ。
「娼館……そうか。キャサリンか」
「……陛下からも王弟殿下を止めて下さい。もう私は婚約で振り回されたくないのです」
「弟の名誉の為に言っておくが、キャサリンとはそういう関係では無い。王家の情報屋だ」
「それでも王弟殿下は否定されませんでしたわ。私にはそれが全てです」
私の話はこれで終わりだと口を閉ざすと、陛下はまた眉間にシワを寄せた。沈黙が続くなか部屋にノックの音が響き、外からギルドマスターが来たことを知らせた。
「君にも同席して欲しい。あの共同救済制度についての話をする」
「かしこまりました」
私が了承すると、側近の方がドアを開ける。入って来たのは我が家の領地出身のハンターだった。
「ガイ、久しぶりね」
「カルラ嬢!お元気そうで何よりです」
「貴方、マスターになったの?」
「え?聞いて無いのか?オヤジ殿には伝えたぞ」
「あら、お父様のヤキモチかしらね」
私が笑えばガイは苦笑いしながら頭を掻く。楽しく話す私達の横で陛下と側近の方は目を丸くして私達を見ていた。
「陛下、シュミットガル令嬢をお連れしました」
「入れ」
中からの返事を待って入ると、陛下だけがソファーに深く座って疲れた様な表情をしている。側近の方に促され向かいのソファーに座ると、陛下はゆっくりと深いため息を吐き出した。
「急に呼び出してすまないね。ルーベルトとは話が合わなかったか?」
「……何の事で御座いましょう」
「婚約の話が進んでいないと聞いてね」
柔なか言い方で私に尋ねる陛下は、何処か苛立っているように見えた。仕事が立て込んでいるのか、それとも自分の思い通りに進まない婚約に焦れているのか。
「婚約に私の意思が反映されるのですか?」
「何故、そう思った理由を話してくれ」
「前回の婚約も私は反対しましたし、何度も破棄を申し出たはずですが?承認されなかった張本人が何を仰っているのでしょう」
私の言葉を聞いて一瞬だけ眉間にシワを寄せた陛下は、何かを堪えるように深いため息を吐き出した。
「私が悪かった。婚約者を早急に決めなければ君が危なかったのだ。破棄を認めなかった事も同じ理由だ」
「そうですか。今更、破棄を認めた理由をお伺いしても宜しいでしょうか?」
大きく頷いた陛下は、改めて私に頭を下げた。ローランド先生が褒めた事が発端だった私の噂が独り歩きして、陛下への謁見を境に陛下のお気に入りなんて呼ばれる様になっていた。陛下自身が気がついた時には噂を終息させるには広がり過ぎていて、息子と婚約させて護衛させるつもりだった。ところがコリン殿下は身体が弱く命の危険があったし他の王子には婚約者がいた為、王弟殿下に話を持っていっている間に父が友人の侯爵様と話を纏めてしまったと……
「焦っておられたのですか?どのみち伯爵令嬢に過ぎない私では王族との婚約は無理で御座いましょう」
「そうだ。反対する者を説き伏せている間に事は済んでいた。私には婚約を承認するしかなかったのだよ」
「そうですか。しかし、今更、婚約破棄をされた傷物の私には王族との婚約は難しいですわ。親戚から養子を迎えようと考えています」
「それは……誰とも結婚しないつもりか?」
「どうして信用出来ますか?私が欲しいと言いながら娼館に通う人や自分の意見も言わずに俯くだけの人ですよ」
可笑しな事をと私が笑えば、陛下は絶句していた。コリン殿下はともかく、ルーベルト殿下の事はご存知なかった様だ。
「娼館……そうか。キャサリンか」
「……陛下からも王弟殿下を止めて下さい。もう私は婚約で振り回されたくないのです」
「弟の名誉の為に言っておくが、キャサリンとはそういう関係では無い。王家の情報屋だ」
「それでも王弟殿下は否定されませんでしたわ。私にはそれが全てです」
私の話はこれで終わりだと口を閉ざすと、陛下はまた眉間にシワを寄せた。沈黙が続くなか部屋にノックの音が響き、外からギルドマスターが来たことを知らせた。
「君にも同席して欲しい。あの共同救済制度についての話をする」
「かしこまりました」
私が了承すると、側近の方がドアを開ける。入って来たのは我が家の領地出身のハンターだった。
「ガイ、久しぶりね」
「カルラ嬢!お元気そうで何よりです」
「貴方、マスターになったの?」
「え?聞いて無いのか?オヤジ殿には伝えたぞ」
「あら、お父様のヤキモチかしらね」
私が笑えばガイは苦笑いしながら頭を掻く。楽しく話す私達の横で陛下と側近の方は目を丸くして私達を見ていた。
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