ChatGPTさん作 異世界の魔法と恋の奇跡

草薙銀之介

文字の大きさ
49 / 100

第四十九話「時の檻、アウラの静かな恋」

しおりを挟む
 時間とは、残酷であり、優しさでもある。

 アウラはそう教えられて育った。

 彼女は古の「時の巫女」の末裔。

 生まれながらにして時空魔法を扱う特異な力を持ち、王国でも一目置かれる存在だった。

 けれど、その力は同時に、彼女を孤独に閉じ込めた。

 時を止めれば、誰とも分かち合えない。

 過去を覗けば、後悔ばかりが胸を締め付ける。

 未来が視えてしまえば、恋など……成り立つはずもなかった。

 ——彼に出会うまでは。

「リュウ」

 アウラは、その名を心の中で何度も繰り返した。

 異世界からやってきた少年。

 最初は何も知らず、魔法も扱えない、ただの“外来者”だった。

 だが、彼のまっすぐな瞳に、アウラは次第に心を奪われていった。

 運命の中で、彼だけは“読めなかった”。

 どれだけ未来視の魔法を使っても、リュウの行動だけは揺らぎ、分岐を生み出し、時間の糸を絡ませた。

 それが怖くて。

 だけど——嬉しかった。

「……また、彼の魔力が変化してる」

 アウラは塔の最上階、空の見えるテラスで静かに呟いた。

 星が近く見えるこの場所は、彼女のお気に入りだった。

 時の流れを俯瞰するように、全てを見下ろせるこの高みで、ただひとつだけ見えないものがある。

 それは、自分の心。

 リュウの中に宿る“想いを力に変える魔法”。

 それに触れたとき、自分の中の氷のような時間が溶けていくのを感じた。

 アリスのような明るさも、
 アリアのような優雅さも、
 ミナのような深い情熱もない。

 けれど、自分だけが持つ“冷静さ”と“知識”で、リュウの隣にいたいと願ってしまう。

「……ずるい、よね。私」

 アウラは微笑んだ。

 その顔には、いつもと違う、少女らしい切なさがにじんでいた。


 ——時を巻き戻せば、リュウに会う前に戻れる。

 ——時間を止めれば、彼との関係を“このまま”に保てる。

 ——未来を視れば、自分が傷つくのを避けられる。


 でも、どれもしたくなかった。

「私は、今を生きたい」

 初めて、そう思ったのだ。

 その時、誰かの足音が近づいてきた。

 アウラは振り向かず、声で分かった。

「……リュウ、どうしてここに?」

「アウラこそ、こんな夜中に。眠れないのか?」

 リュウは彼女の隣に並び、空を見上げた。

 言葉はなくとも、沈黙が優しく寄り添ってくる。

「アウラは……時間のこと、どう思う?」

「ん……少し前なら、“全てを操るべきもの”って答えてたかも。でも今は……“誰かと分け合いたいもの”かな」

 リュウは驚いた顔をした。

 アウラがこんなことを言うのは、初めてだったからだ。

「君は変わったな。いや……素直になったって言うべきか」

「リュウが変えてくれたのよ。……時間の魔法なんて、孤独なだけだと思ってた。でも、君が未来を変えようとしてくれたから——私も、誰かの隣にいたいって思えるようになった」

 その横顔は、どこまでも穏やかだった。

「アウラ」

 リュウがぽつりと名を呼んだ時、アウラはゆっくりと彼の肩に頭を預けた。

「少しだけ、この“今”を止めていい?」

「……ああ、いいよ」

 時間を止める魔法は使わない。

 ただ、彼の隣にいるこの瞬間が、永遠に感じられるようにと願いながら——アウラは目を閉じた。

 夜風が静かに流れ、時の魔導師の心は、初めて“止まらない時間”に身を委ねた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

お嬢様の“専属”

ユウキ
恋愛
雪が静かに降りしきる寒空の中、私は天涯孤独の身となった。行く当てもなく、1人彷徨う内に何もなくなってしまった。遂に体力も尽きたときに、偶然通りかかった侯爵家のお嬢様に拾われた。 お嬢様の気まぐれから、お嬢様の“専属”となった主人公のお話。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...