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第五十話「あなたの隣で、ずっと」
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魔導学院の中庭には、春の風がやさしく吹いていた。
アリスはベンチに腰を下ろしながら、空を見上げていた。
青空に浮かぶ雲は、どこかリュウに似ていた。
つかめそうで、つかめない。近くにいるのに、遠くに感じる時がある。
「リュウ……また誰かのこと、見てたよね」
ぽつりと呟いた声が風に溶けて消える。
最近のリュウは、アリアやミナ、アウラと過ごす時間が増えていた。
もちろん、アリスだって同じ戦いをくぐり抜けてきた仲間だ。
でも、どこか“距離”を感じるのは、自分のせいだと分かっていた。
リュウのことが好き。
それは、もうずっと前から。
でも、アリスは“怖かった”。
もし気持ちを伝えたら、今の関係が壊れてしまうんじゃないかと。
笑顔でいることで、傷つかないようにしていた。けれど——もう限界だった。
「アリス?」
その声に振り向くと、そこにはやっぱり彼がいた。夕日に照らされたリュウは、少しだけ困ったような顔で立っていた。
「探したよ。学院の授業終わってすぐいなくなるんだもん」
「えへへ、ちょっとね。ひとりで考えたいことがあって……」
「俺と話しちゃ、ダメ?」
その言葉に、胸がきゅっと締めつけられる。ダメなわけ、ないよ。でも……。
「リュウ。ねえ、聞いてもいい?」
「うん?」
「……私って、リュウにとって、どんな存在?」
風が止まった気がした。リュウは少しだけ目を見開いて、真剣な表情になる。
「アリスは……俺にとって、太陽みたいな人だよ。いつも明るくて、前向きで、そばにいると救われる。だから、一緒にいたいって、心から思う」
その言葉は嬉しかった。嬉しいはずだったのに、アリスの目からは涙がこぼれていた。
「でも、それって“好き”とは違うんでしょ?」
小さな声だった。でも、はっきりと伝わった。
リュウは答えなかった。答えられなかった。
その沈黙が、何よりも胸に刺さった。
「ごめんね、変なこと言っちゃって……」
アリスは笑って立ち上がる。
いつものように、明るく。
だけど、リュウは彼女の腕を掴んで離さなかった。
「違うんだ。俺……怖いんだよ。誰かひとりを選ぶって、誰かを傷つけることだろ? アリアも、アウラも、ミナも……でもアリス、君を泣かせるのは、一番辛い」
「リュウ……」
「君のこと、ちゃんと“好き”だよ。もっと早く言えばよかった。君がいなくなったらって考えたら、心臓が締めつけられるくらい、苦しくなって……」
アリスは涙をこらえきれず、リュウの胸に飛び込んだ。
「ほんとに、ほんとに、ずっと言ってほしかった……」
彼の腕が、ぎゅっと抱きしめてくれる。
魔法じゃない、ぬくもり。
言葉じゃなくても伝わる心。
その瞬間、空に魔力のきらめきが舞った。
アリスの中に眠っていた“共鳴魔法”が、リュウと重なったことで目覚めたのだ。
「これ……まさか……」
「うん……君の想いが、俺の魔力に反応したんだ。アリス、これが……“ふたりの魔法”なんだよ」
奇跡は、起きた。
涙も、笑顔も、全部ふたりで分け合える。
そう思えたのは、今この瞬間、心がひとつになったから。
「ねえ、リュウ。これからも……私の隣にいてくれる?」
「ずっと、そばにいるよ」
春の風が吹く中庭で、アリスは初めて、自分の笑顔を“誰かのため”じゃなく、“自分のため”に見せた。
アリスはベンチに腰を下ろしながら、空を見上げていた。
青空に浮かぶ雲は、どこかリュウに似ていた。
つかめそうで、つかめない。近くにいるのに、遠くに感じる時がある。
「リュウ……また誰かのこと、見てたよね」
ぽつりと呟いた声が風に溶けて消える。
最近のリュウは、アリアやミナ、アウラと過ごす時間が増えていた。
もちろん、アリスだって同じ戦いをくぐり抜けてきた仲間だ。
でも、どこか“距離”を感じるのは、自分のせいだと分かっていた。
リュウのことが好き。
それは、もうずっと前から。
でも、アリスは“怖かった”。
もし気持ちを伝えたら、今の関係が壊れてしまうんじゃないかと。
笑顔でいることで、傷つかないようにしていた。けれど——もう限界だった。
「アリス?」
その声に振り向くと、そこにはやっぱり彼がいた。夕日に照らされたリュウは、少しだけ困ったような顔で立っていた。
「探したよ。学院の授業終わってすぐいなくなるんだもん」
「えへへ、ちょっとね。ひとりで考えたいことがあって……」
「俺と話しちゃ、ダメ?」
その言葉に、胸がきゅっと締めつけられる。ダメなわけ、ないよ。でも……。
「リュウ。ねえ、聞いてもいい?」
「うん?」
「……私って、リュウにとって、どんな存在?」
風が止まった気がした。リュウは少しだけ目を見開いて、真剣な表情になる。
「アリスは……俺にとって、太陽みたいな人だよ。いつも明るくて、前向きで、そばにいると救われる。だから、一緒にいたいって、心から思う」
その言葉は嬉しかった。嬉しいはずだったのに、アリスの目からは涙がこぼれていた。
「でも、それって“好き”とは違うんでしょ?」
小さな声だった。でも、はっきりと伝わった。
リュウは答えなかった。答えられなかった。
その沈黙が、何よりも胸に刺さった。
「ごめんね、変なこと言っちゃって……」
アリスは笑って立ち上がる。
いつものように、明るく。
だけど、リュウは彼女の腕を掴んで離さなかった。
「違うんだ。俺……怖いんだよ。誰かひとりを選ぶって、誰かを傷つけることだろ? アリアも、アウラも、ミナも……でもアリス、君を泣かせるのは、一番辛い」
「リュウ……」
「君のこと、ちゃんと“好き”だよ。もっと早く言えばよかった。君がいなくなったらって考えたら、心臓が締めつけられるくらい、苦しくなって……」
アリスは涙をこらえきれず、リュウの胸に飛び込んだ。
「ほんとに、ほんとに、ずっと言ってほしかった……」
彼の腕が、ぎゅっと抱きしめてくれる。
魔法じゃない、ぬくもり。
言葉じゃなくても伝わる心。
その瞬間、空に魔力のきらめきが舞った。
アリスの中に眠っていた“共鳴魔法”が、リュウと重なったことで目覚めたのだ。
「これ……まさか……」
「うん……君の想いが、俺の魔力に反応したんだ。アリス、これが……“ふたりの魔法”なんだよ」
奇跡は、起きた。
涙も、笑顔も、全部ふたりで分け合える。
そう思えたのは、今この瞬間、心がひとつになったから。
「ねえ、リュウ。これからも……私の隣にいてくれる?」
「ずっと、そばにいるよ」
春の風が吹く中庭で、アリスは初めて、自分の笑顔を“誰かのため”じゃなく、“自分のため”に見せた。
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