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第六十九話「恋の余韻と、始まりのキス」
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王都エリュシオンの空は、まるで物語の終わりを祝福するかのように澄み切っていた。
決戦の終わり。
そして、リュウが選んだのは金髪の少女・アリアだった。
光のような彼女の微笑みが、今もリュウの胸を優しく締めつける。
彼女を選んだことで、他の少女たちを傷つけてしまった。
それでも、彼は後悔していなかった。
なぜなら、それが彼の「本当の気持ち」だったから。
――「リュウ、夕陽、見に行かない?」
アリアがそっと声をかけたのは、王都郊外の高台。
そこは、リュウが前世でもよく訪れていた場所だった。
二人は無言のまま並んで歩き、夕陽を見下ろす丘の上へたどり着いた。
「ここ、覚えてる? あなたが魔導王だったころ……私、よくここに連れてきてもらったの」
「覚えてるさ。アリア……いや、ルクシアだったよな。あの頃の君も、今の君も……変わらないよ。優しくて、まっすぐで……」
アリアはくすっと笑った。
「嬉しいわ。あなたの“光”が、私に恋をさせたの。前世も、そして今も――ずっと、あなたが好きだった」
リュウは言葉を詰まらせた。
あの壮絶な戦いの後でも、彼女の想いは何一つ揺らいでいなかったのだ。
「俺も……アリア。ずっと、君のことを守りたかった。だけど、前世では……」
「だからこそ、今なのよ」
アリアはそっと彼の胸に手を当てた。
「私たちは、未来を選んだ。もう何かを失うことを恐れなくていい。リュウ、あなたの隣にいさせて」
その手を、リュウは優しく握る。
彼女の体温が、確かにそこにあった。
「ありがとう。君を選んで、俺は幸せだ」
沈黙が降りる。
だが、それは重苦しいものではなかった。
夕陽が黄金の光を世界に染めるなか、リュウはアリアの瞳を見つめた。
「アリア……」
「うん……」
そして、ふたりは自然に顔を近づけ――
唇が、触れ合った。
それは激しいものではなく、むしろ、そっと確かめるような、穏やかで優しいキスだった。
けれど、その一瞬に込められた想いは、前世と今世を超えて繋がった奇跡そのものだった。
キスのあと、アリアは頬を赤らめながら目を伏せる。
「これで……やっと、あなたの恋人になれたのね」
「いや、まだだよ」
リュウはアリアの手を引き寄せ、その額にもう一度、軽くキスを落とした。
「これからが始まりだ。君と歩く未来――その第一歩を、やっと踏み出せたばかりさ」
ふたりはそのまま肩を寄せ合い、夕焼けの丘で静かに寄り添った。
光がふたりを包み込むように降り注ぎ、まるで世界そのものがふたりの恋を祝福しているかのようだった。
そして、その光景を遠くから見つめていた影が、ひとつ。
木陰に立つのはアリス。
風に揺れる銀髪と尖った耳。
彼女は微笑み、そしてそっと呟いた。
「……選ばれなかったけど、それでもいい。あなたが笑ってくれるのなら、私は――」
アリスは静かに踵を返す。涙は見せない。
ただ、次の一歩を探すように、風のように歩き出した。
それは、恋の終わりではない。
彼女にとってもまた、新たな物語の始まりだった。
――異世界の空の下、ひとつの恋が結ばれた。
そして、幾つもの恋が、それぞれの未来へと歩き出す。
決戦の終わり。
そして、リュウが選んだのは金髪の少女・アリアだった。
光のような彼女の微笑みが、今もリュウの胸を優しく締めつける。
彼女を選んだことで、他の少女たちを傷つけてしまった。
それでも、彼は後悔していなかった。
なぜなら、それが彼の「本当の気持ち」だったから。
――「リュウ、夕陽、見に行かない?」
アリアがそっと声をかけたのは、王都郊外の高台。
そこは、リュウが前世でもよく訪れていた場所だった。
二人は無言のまま並んで歩き、夕陽を見下ろす丘の上へたどり着いた。
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アリアはくすっと笑った。
「嬉しいわ。あなたの“光”が、私に恋をさせたの。前世も、そして今も――ずっと、あなたが好きだった」
リュウは言葉を詰まらせた。
あの壮絶な戦いの後でも、彼女の想いは何一つ揺らいでいなかったのだ。
「俺も……アリア。ずっと、君のことを守りたかった。だけど、前世では……」
「だからこそ、今なのよ」
アリアはそっと彼の胸に手を当てた。
「私たちは、未来を選んだ。もう何かを失うことを恐れなくていい。リュウ、あなたの隣にいさせて」
その手を、リュウは優しく握る。
彼女の体温が、確かにそこにあった。
「ありがとう。君を選んで、俺は幸せだ」
沈黙が降りる。
だが、それは重苦しいものではなかった。
夕陽が黄金の光を世界に染めるなか、リュウはアリアの瞳を見つめた。
「アリア……」
「うん……」
そして、ふたりは自然に顔を近づけ――
唇が、触れ合った。
それは激しいものではなく、むしろ、そっと確かめるような、穏やかで優しいキスだった。
けれど、その一瞬に込められた想いは、前世と今世を超えて繋がった奇跡そのものだった。
キスのあと、アリアは頬を赤らめながら目を伏せる。
「これで……やっと、あなたの恋人になれたのね」
「いや、まだだよ」
リュウはアリアの手を引き寄せ、その額にもう一度、軽くキスを落とした。
「これからが始まりだ。君と歩く未来――その第一歩を、やっと踏み出せたばかりさ」
ふたりはそのまま肩を寄せ合い、夕焼けの丘で静かに寄り添った。
光がふたりを包み込むように降り注ぎ、まるで世界そのものがふたりの恋を祝福しているかのようだった。
そして、その光景を遠くから見つめていた影が、ひとつ。
木陰に立つのはアリス。
風に揺れる銀髪と尖った耳。
彼女は微笑み、そしてそっと呟いた。
「……選ばれなかったけど、それでもいい。あなたが笑ってくれるのなら、私は――」
アリスは静かに踵を返す。涙は見せない。
ただ、次の一歩を探すように、風のように歩き出した。
それは、恋の終わりではない。
彼女にとってもまた、新たな物語の始まりだった。
――異世界の空の下、ひとつの恋が結ばれた。
そして、幾つもの恋が、それぞれの未来へと歩き出す。
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