69 / 100
第六十九話「恋の余韻と、始まりのキス」
しおりを挟む
王都エリュシオンの空は、まるで物語の終わりを祝福するかのように澄み切っていた。
決戦の終わり。
そして、リュウが選んだのは金髪の少女・アリアだった。
光のような彼女の微笑みが、今もリュウの胸を優しく締めつける。
彼女を選んだことで、他の少女たちを傷つけてしまった。
それでも、彼は後悔していなかった。
なぜなら、それが彼の「本当の気持ち」だったから。
――「リュウ、夕陽、見に行かない?」
アリアがそっと声をかけたのは、王都郊外の高台。
そこは、リュウが前世でもよく訪れていた場所だった。
二人は無言のまま並んで歩き、夕陽を見下ろす丘の上へたどり着いた。
「ここ、覚えてる? あなたが魔導王だったころ……私、よくここに連れてきてもらったの」
「覚えてるさ。アリア……いや、ルクシアだったよな。あの頃の君も、今の君も……変わらないよ。優しくて、まっすぐで……」
アリアはくすっと笑った。
「嬉しいわ。あなたの“光”が、私に恋をさせたの。前世も、そして今も――ずっと、あなたが好きだった」
リュウは言葉を詰まらせた。
あの壮絶な戦いの後でも、彼女の想いは何一つ揺らいでいなかったのだ。
「俺も……アリア。ずっと、君のことを守りたかった。だけど、前世では……」
「だからこそ、今なのよ」
アリアはそっと彼の胸に手を当てた。
「私たちは、未来を選んだ。もう何かを失うことを恐れなくていい。リュウ、あなたの隣にいさせて」
その手を、リュウは優しく握る。
彼女の体温が、確かにそこにあった。
「ありがとう。君を選んで、俺は幸せだ」
沈黙が降りる。
だが、それは重苦しいものではなかった。
夕陽が黄金の光を世界に染めるなか、リュウはアリアの瞳を見つめた。
「アリア……」
「うん……」
そして、ふたりは自然に顔を近づけ――
唇が、触れ合った。
それは激しいものではなく、むしろ、そっと確かめるような、穏やかで優しいキスだった。
けれど、その一瞬に込められた想いは、前世と今世を超えて繋がった奇跡そのものだった。
キスのあと、アリアは頬を赤らめながら目を伏せる。
「これで……やっと、あなたの恋人になれたのね」
「いや、まだだよ」
リュウはアリアの手を引き寄せ、その額にもう一度、軽くキスを落とした。
「これからが始まりだ。君と歩く未来――その第一歩を、やっと踏み出せたばかりさ」
ふたりはそのまま肩を寄せ合い、夕焼けの丘で静かに寄り添った。
光がふたりを包み込むように降り注ぎ、まるで世界そのものがふたりの恋を祝福しているかのようだった。
そして、その光景を遠くから見つめていた影が、ひとつ。
木陰に立つのはアリス。
風に揺れる銀髪と尖った耳。
彼女は微笑み、そしてそっと呟いた。
「……選ばれなかったけど、それでもいい。あなたが笑ってくれるのなら、私は――」
アリスは静かに踵を返す。涙は見せない。
ただ、次の一歩を探すように、風のように歩き出した。
それは、恋の終わりではない。
彼女にとってもまた、新たな物語の始まりだった。
――異世界の空の下、ひとつの恋が結ばれた。
そして、幾つもの恋が、それぞれの未来へと歩き出す。
決戦の終わり。
そして、リュウが選んだのは金髪の少女・アリアだった。
光のような彼女の微笑みが、今もリュウの胸を優しく締めつける。
彼女を選んだことで、他の少女たちを傷つけてしまった。
それでも、彼は後悔していなかった。
なぜなら、それが彼の「本当の気持ち」だったから。
――「リュウ、夕陽、見に行かない?」
アリアがそっと声をかけたのは、王都郊外の高台。
そこは、リュウが前世でもよく訪れていた場所だった。
二人は無言のまま並んで歩き、夕陽を見下ろす丘の上へたどり着いた。
「ここ、覚えてる? あなたが魔導王だったころ……私、よくここに連れてきてもらったの」
「覚えてるさ。アリア……いや、ルクシアだったよな。あの頃の君も、今の君も……変わらないよ。優しくて、まっすぐで……」
アリアはくすっと笑った。
「嬉しいわ。あなたの“光”が、私に恋をさせたの。前世も、そして今も――ずっと、あなたが好きだった」
リュウは言葉を詰まらせた。
あの壮絶な戦いの後でも、彼女の想いは何一つ揺らいでいなかったのだ。
「俺も……アリア。ずっと、君のことを守りたかった。だけど、前世では……」
「だからこそ、今なのよ」
アリアはそっと彼の胸に手を当てた。
「私たちは、未来を選んだ。もう何かを失うことを恐れなくていい。リュウ、あなたの隣にいさせて」
その手を、リュウは優しく握る。
彼女の体温が、確かにそこにあった。
「ありがとう。君を選んで、俺は幸せだ」
沈黙が降りる。
だが、それは重苦しいものではなかった。
夕陽が黄金の光を世界に染めるなか、リュウはアリアの瞳を見つめた。
「アリア……」
「うん……」
そして、ふたりは自然に顔を近づけ――
唇が、触れ合った。
それは激しいものではなく、むしろ、そっと確かめるような、穏やかで優しいキスだった。
けれど、その一瞬に込められた想いは、前世と今世を超えて繋がった奇跡そのものだった。
キスのあと、アリアは頬を赤らめながら目を伏せる。
「これで……やっと、あなたの恋人になれたのね」
「いや、まだだよ」
リュウはアリアの手を引き寄せ、その額にもう一度、軽くキスを落とした。
「これからが始まりだ。君と歩く未来――その第一歩を、やっと踏み出せたばかりさ」
ふたりはそのまま肩を寄せ合い、夕焼けの丘で静かに寄り添った。
光がふたりを包み込むように降り注ぎ、まるで世界そのものがふたりの恋を祝福しているかのようだった。
そして、その光景を遠くから見つめていた影が、ひとつ。
木陰に立つのはアリス。
風に揺れる銀髪と尖った耳。
彼女は微笑み、そしてそっと呟いた。
「……選ばれなかったけど、それでもいい。あなたが笑ってくれるのなら、私は――」
アリスは静かに踵を返す。涙は見せない。
ただ、次の一歩を探すように、風のように歩き出した。
それは、恋の終わりではない。
彼女にとってもまた、新たな物語の始まりだった。
――異世界の空の下、ひとつの恋が結ばれた。
そして、幾つもの恋が、それぞれの未来へと歩き出す。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
神楽坂gimmick
涼寺みすゞ
恋愛
明治26年、欧州視察を終え帰国した司法官僚 近衛惟前の耳に飛び込んできたのは、学友でもあり親戚にあたる久我侯爵家の跡取り 久我光雅負傷の連絡。
侯爵家のスキャンダルを収めるべく、奔走する羽目になり……
若者が広げた夢の大風呂敷と、初恋の行方は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる