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37件目 このキスに、名前をつけるなら
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ここは、海の近くにある一軒のシェアハウス。
住人は全員女子高生――そして俺、神谷タクミただひとり。
朝のリビングは、戦場だった。
「おっはよ~、タクミくん! 今日もキラキラしてるねっ!」
玄関から飛び込んできたのは、ラブリー天使な長身美少女・姫野リリィ。
彼女の笑顔はまぶしくて、なぜか俺にだけやたら距離が近い。
「ちょっと! 朝からベタベタしないでよ!」
それを見て怒鳴ったのは、低身長の逆上美少女・火野あかね。
彼女は常に怒っているが、それは不器用な優しさの裏返し。
「…………」
隅の椅子で読書しているのは、低身長の陰キャ美少女・月城ことは。
無言で俺をチラチラ見るたび、なんだかドキッとする。
「おはよう、タクミさん。お茶、いかが?」
紅茶を差し出してくるのは、優雅な令嬢・綾小路セリナ。
毎朝、必ず“お紅茶の儀”を忘れない律儀な人だ。
「……騒がしい朝ね。ふふ、嫌いじゃないわ」
ソファに優雅に腰掛けたのは、妖しげな先輩美少女・白雪レイカ。
なぜか俺にだけ、ぞくっとするような視線を送ってくる。
「よっ、タクミ。朝メシ、食った?」
台所でエプロンをつけていたのは、長身黒ギャル美女先輩・黒川ナツ。
ギャルなのに手料理がプロ級という、ギャップが恐ろしい。
「おはようございます。タクミ、心拍数がいつもより高めです」
身長180cmのAIアンドロイド女子高生・アメリアが近づいてきた。
無表情なのに、なぜか可愛く感じてしまうのは、たぶん錯覚じゃない。
そんな個性的な彼女たちと暮らすこのシェアハウス。
そして、もう一人――
「タクミ、おはよう。今日は隣、空いてる?」
俺の幼馴染、桜井ミユがいつものように微笑む。
誰よりも長く、そばにいてくれる存在。
けれど最近、彼女の表情が少しだけ怖い。
「なぁ……昨日の“キスゲーム”って、またやるのか?」
思い切って聞くと、全員の動きが止まった。
「えっ、やるに決まってるじゃん! 今日は“朝一番キスチャンピオン戦”だよ!」
リリィがにっこりと宣言する。
「こ、こんなの、タクミが迷惑って言ってるじゃん!」
あかねが怒る。
「……でも、ルールには従う」
ことはがそっと手を上げる。
「タクミに選ばれるのは、当然私ですわ」
セリナが微笑む。
「フフ……さあ、誰が一番官能的か、確かめてごらんなさい」
レイカ先輩の言葉に、空気が妙に熱を帯びた。
「よーし、順番な! 私は最後でいいよ」
ナツ先輩がニヤニヤしながら指を鳴らす。
「キスの意義とは……実験の価値が高そうです」
アメリアはメモを取り始めた。
「ねぇ、タクミ。私とキスした時、一番ドキドキしてくれたよね?」
ミユが俺の耳元でささやく。
「うわっ、ちょっ、待て……! みんな落ち着けって!」
俺の抗議など聞こえていないかのように、彼女たちは一斉に近づいてくる。
そして――
「じゃあいくよ! “みんなでキス”ターイム!」
リリィの号令と共に、キスの雨が降り注いだ。
ほっぺ、額、鼻先――あちこちに小さな唇の感触が残る。
「はいっ、今日の勝者は――タクミの心拍数を最も上げたミユちゃんです!」
アメリアが機械音声で宣言した。
「やった……やっぱり、私が一番だよね、タクミ?」
ミユが俺の胸元に顔をうずめた。
「……はあ……俺の青春、どうしてこうなった」
だけど、不思議と嫌じゃなかった。
このシェアハウスで、俺はきっと、
世界で一番幸せな“恋”の渦中にいる。
――それだけは、間違いなかった。
住人は全員女子高生――そして俺、神谷タクミただひとり。
朝のリビングは、戦場だった。
「おっはよ~、タクミくん! 今日もキラキラしてるねっ!」
玄関から飛び込んできたのは、ラブリー天使な長身美少女・姫野リリィ。
彼女の笑顔はまぶしくて、なぜか俺にだけやたら距離が近い。
「ちょっと! 朝からベタベタしないでよ!」
それを見て怒鳴ったのは、低身長の逆上美少女・火野あかね。
彼女は常に怒っているが、それは不器用な優しさの裏返し。
「…………」
隅の椅子で読書しているのは、低身長の陰キャ美少女・月城ことは。
無言で俺をチラチラ見るたび、なんだかドキッとする。
「おはよう、タクミさん。お茶、いかが?」
紅茶を差し出してくるのは、優雅な令嬢・綾小路セリナ。
毎朝、必ず“お紅茶の儀”を忘れない律儀な人だ。
「……騒がしい朝ね。ふふ、嫌いじゃないわ」
ソファに優雅に腰掛けたのは、妖しげな先輩美少女・白雪レイカ。
なぜか俺にだけ、ぞくっとするような視線を送ってくる。
「よっ、タクミ。朝メシ、食った?」
台所でエプロンをつけていたのは、長身黒ギャル美女先輩・黒川ナツ。
ギャルなのに手料理がプロ級という、ギャップが恐ろしい。
「おはようございます。タクミ、心拍数がいつもより高めです」
身長180cmのAIアンドロイド女子高生・アメリアが近づいてきた。
無表情なのに、なぜか可愛く感じてしまうのは、たぶん錯覚じゃない。
そんな個性的な彼女たちと暮らすこのシェアハウス。
そして、もう一人――
「タクミ、おはよう。今日は隣、空いてる?」
俺の幼馴染、桜井ミユがいつものように微笑む。
誰よりも長く、そばにいてくれる存在。
けれど最近、彼女の表情が少しだけ怖い。
「なぁ……昨日の“キスゲーム”って、またやるのか?」
思い切って聞くと、全員の動きが止まった。
「えっ、やるに決まってるじゃん! 今日は“朝一番キスチャンピオン戦”だよ!」
リリィがにっこりと宣言する。
「こ、こんなの、タクミが迷惑って言ってるじゃん!」
あかねが怒る。
「……でも、ルールには従う」
ことはがそっと手を上げる。
「タクミに選ばれるのは、当然私ですわ」
セリナが微笑む。
「フフ……さあ、誰が一番官能的か、確かめてごらんなさい」
レイカ先輩の言葉に、空気が妙に熱を帯びた。
「よーし、順番な! 私は最後でいいよ」
ナツ先輩がニヤニヤしながら指を鳴らす。
「キスの意義とは……実験の価値が高そうです」
アメリアはメモを取り始めた。
「ねぇ、タクミ。私とキスした時、一番ドキドキしてくれたよね?」
ミユが俺の耳元でささやく。
「うわっ、ちょっ、待て……! みんな落ち着けって!」
俺の抗議など聞こえていないかのように、彼女たちは一斉に近づいてくる。
そして――
「じゃあいくよ! “みんなでキス”ターイム!」
リリィの号令と共に、キスの雨が降り注いだ。
ほっぺ、額、鼻先――あちこちに小さな唇の感触が残る。
「はいっ、今日の勝者は――タクミの心拍数を最も上げたミユちゃんです!」
アメリアが機械音声で宣言した。
「やった……やっぱり、私が一番だよね、タクミ?」
ミユが俺の胸元に顔をうずめた。
「……はあ……俺の青春、どうしてこうなった」
だけど、不思議と嫌じゃなかった。
このシェアハウスで、俺はきっと、
世界で一番幸せな“恋”の渦中にいる。
――それだけは、間違いなかった。
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