上 下
35 / 71

第七話 城江秀一ともう一人の俺達 4

しおりを挟む
 夕方の六時を廻った時分にそろそろかと、無理やりにでも更新分の作業を上げて、予約更新設定まで済ませた。

 俺は改ハメ動画を再生してそのまま時間を忘れて、草薙銀之助さんの苦悩や決断が、やはり相当なモノだろうと毎度思い返す。

 そこへ遅れを取る萌香を差し置いて、呼び鈴を鳴らした裏実瑠が呼びに来て、予定の三十分よりも廻って四十五分を廻っていた。

 仕舞ったと瞬時に悟るも既に遅く、用意を済ませきって食べ始めている曖昧なタイミングで、俺は峰輿宅に参上仕る。

 バターやトマトにコーンの旨香を感知して、リビングに乗り込めば更にフランスパンの様な切り身のモノまでニコニコしている。

 他にも生ハムやきゅうりの斜切りにトマトの切り身も、キラキラと待機させて仕舞っていて、同時に集まる一同にも顔を向け辛い。

 しかし、それでも不平や文句を提示する者はなく、むしろ何時も通り過ぎて少し恐怖を覚えながらも、一同の対応力には感謝呑み。

 バターがさり気なく利いたパスタ麺がひき肉とトマトのミートソースがサッパリと甘く、絶妙に調和しては旨香と色合いも佳い。

 パルメザンチーズも参加したミートソースパスタ、その他生野菜サラダやコーンスープ等、卓上の料理達がポジションを守る。

 食戟以来より夕飯は紫英流を中心に、補佐のような立ち廻りで奈津美さんと旨く!やはりシームレスに無駄無く用意したのか。

 共同作業なら僅かにでも奈津美さんの手が入るだけに、二者のハイブリッドディナーが、今眼前に広がっていて俺を誘導する。

 その割には奈津美さんの容子が何となく固い様な、そんな気がした俺は、巻いたパスタを口にしては何故か昼の事件を思い出す。

 尚に一同の顔をどうしても視れない俺は、しかし焦ってはいかんと言い聞かせては、出来るだけ平常でいようと固く誓った。

 料理は野菜やバターの相性も善く、ソースやスープの独特な甘味がフレーバーにもなっていて、深味や旨味にひき肉の食感も芳し。

 滑らかに吸い付くような塩気の濃い生ハムについで、水々しくシャキシャキしたきゅうりが、とろみを一度リセットしてまた旨味。

 ミートソースパスタとコーンスープに並んで生野菜サラダと、この循環やリセットからの旨味が、全ての要素を一体化させる。

 これだけでも夕食の席に参上した甲斐があって、花咲く芳香にこれ程の料理が並んでは、純粋な楽園と謂って差し支え無い。




しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【R18】お飾り妻は諦める~旦那様、貴方を想うのはもうやめます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,057pt お気に入り:461

【R18】後宮に咲く薔薇

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:2,947pt お気に入り:29

相手に望む3つの条件

恋愛 / 完結 24h.ポイント:655pt お気に入り:333

【完結】契約妻の小さな復讐

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,104pt お気に入り:5,879

ヒヨクレンリ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:582pt お気に入り:884

離婚が決まった日に惚れ薬を飲んでしまった旦那様

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:16,345pt お気に入り:688

復讐します。楽しみにして下さい。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:149pt お気に入り:223

処理中です...