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2章 騎士と少女と界層魔術師
5話 獅子皇騎士団長
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「はい、どうぞ」
それにレインが答えるとドアは静かに開き、黒髪をオールバックにした男が静かに部屋に入ってきた。
そして彼を見るなりレインは表情を変え姿勢を正す。
「ハルト団長、お疲れ様です。今日はイナ村に行かれてると聞いてましたが」
「ちょっと事情が変わった。まあ、よくあることだ」
団長。そう呼ばれた男は厳格そうな顔に柔らかい笑みを浮かべた。
彼が身に纏った制服はデザインは違えどレインと同じ物だ。
それと胸元に獅子皇の紋章が箔押しされているのが見える。
獅子皇の団長。
つまりこの人は─────
「騎士団長……様!」
アミーティアが思わず呟くとハルトは「ん?」と短い声と共に視線を彼女に向け、また柔らかく笑んだ。
「はじめましてお嬢さん。確かアミーティアさんだったかな?ウチのレイン隊長が粗相をしなかったかい?」
「と、とんでもないです!すごく優しくてカッコよくて!はいっ!」
低く優しい声色にドギマギしてしまい自分で何を言ってるか分からなくなり手をブンブンしながら答えるとハルトは「そうかそうか」とまた優しく笑い、その視線を同じく笑っているレインに向けた。
「レイン。君に仕事を頼みたい。
────ああ、お嬢さん、この話は聞いても大丈夫だから安心してくれ」
言いつつ、耳を塞いで聞かないようにしようとしていたアミーティアに声をかけハルトは続ける。
「彼女を送っていくんだろう?
ついでで悪いんだが、コレをジュリアス界層魔術師事務所に届けてくれないか」
言ってハルトは小袋と封印の施された封筒を懐から出し、小袋をレインに手渡し、アミーティアに封筒を差し出した。
「未鑑定の魔術鉱石だ。創剣の魔女様から依頼された物でな。まあ、渡せばわかるハズだ。
それとアミーティアさん。
それは私からコウェル所長への推薦状だ。もちろん、君のね」
「え?!?!」
驚きのあまり受け取った封筒とハルトを交互に見て変な声を出すアミーティア。
何の脈絡も無く推薦状を渡されればそりゃ誰だって驚く。
そもそも────
「君はコウェル所長に対して強い興味、そして自分の実力を試したい気持ちも強い。
その熱をコウェル所長にぶつけられないのは実に勿体ないからね。
その推薦状があれば彼も君の面接を無碍に断ったりしないだろう。
まあ、採用、不採用に関しては君次第だがね」
「は、はい……でも、団長さん?いつこの事を?」
────ハルトとは初対面。
そしてこの事は取調べ中にレインにしか話してない。
「旦那様は地獄耳ですから」
「ひゃっ!!!?」
背後から突然細い声が聞こえ、またアミーティアは驚いた猫のような声を出しつつ振り向く。
「失礼致しました。私、気配が消えやすいもので」
アミーティアの背後に静かに立っていたのは黒い長髪の小柄なメイド。
どこか不思議な雰囲気の女性は、キョトンとしているアミーティアに赤い瞳を向けて優しく笑んでいる。
「彼女はフィーネ。私の────秘書みたいなモノだな。ちなみに地獄耳加減は彼女の方がスゴいぞ」
「おや、旦那様。地獄耳だけではありませんよ、私は目も利きますので。
────ガレット様のプリンを召し上がった事。御本人の前で思わず口を滑らせてしまうかも知れませんが、よろしいのでしょうか」
「よし落ち着け。後で美味いもの食わせてやるから味方でいてくれ殺される」
「ふふっ……承知しました。旦那様」
「団長、そのうちガレット様に本当に叱られますよ」
苦笑いするハルトを見て、口元に手を当て悪戯に笑うフィーネと呆れ顔のレイン。
それよりもフィーネはいつから自分の後ろに居たのだろう。
全然気配が無かったが同じ部屋に居たレインには驚いた様子がない。
(不思議な人だなあ)
そう思いながら三人を見ていると
「それじゃあレイン頼んだぞ、アミーティアさん、道中には気を付けてな」
「は、はい!ありがとうございます!」
ハルトは爽やかに笑いながら部屋を出ていき、フィーネも「それでは」と会釈して彼の後に続いて出ていった。
「ふう……それでは、私達も行きましょうか。まずは街で買い物ですね」
「はい!」
そしてレインとアミーティアも部屋を後にした。
それにレインが答えるとドアは静かに開き、黒髪をオールバックにした男が静かに部屋に入ってきた。
そして彼を見るなりレインは表情を変え姿勢を正す。
「ハルト団長、お疲れ様です。今日はイナ村に行かれてると聞いてましたが」
「ちょっと事情が変わった。まあ、よくあることだ」
団長。そう呼ばれた男は厳格そうな顔に柔らかい笑みを浮かべた。
彼が身に纏った制服はデザインは違えどレインと同じ物だ。
それと胸元に獅子皇の紋章が箔押しされているのが見える。
獅子皇の団長。
つまりこの人は─────
「騎士団長……様!」
アミーティアが思わず呟くとハルトは「ん?」と短い声と共に視線を彼女に向け、また柔らかく笑んだ。
「はじめましてお嬢さん。確かアミーティアさんだったかな?ウチのレイン隊長が粗相をしなかったかい?」
「と、とんでもないです!すごく優しくてカッコよくて!はいっ!」
低く優しい声色にドギマギしてしまい自分で何を言ってるか分からなくなり手をブンブンしながら答えるとハルトは「そうかそうか」とまた優しく笑い、その視線を同じく笑っているレインに向けた。
「レイン。君に仕事を頼みたい。
────ああ、お嬢さん、この話は聞いても大丈夫だから安心してくれ」
言いつつ、耳を塞いで聞かないようにしようとしていたアミーティアに声をかけハルトは続ける。
「彼女を送っていくんだろう?
ついでで悪いんだが、コレをジュリアス界層魔術師事務所に届けてくれないか」
言ってハルトは小袋と封印の施された封筒を懐から出し、小袋をレインに手渡し、アミーティアに封筒を差し出した。
「未鑑定の魔術鉱石だ。創剣の魔女様から依頼された物でな。まあ、渡せばわかるハズだ。
それとアミーティアさん。
それは私からコウェル所長への推薦状だ。もちろん、君のね」
「え?!?!」
驚きのあまり受け取った封筒とハルトを交互に見て変な声を出すアミーティア。
何の脈絡も無く推薦状を渡されればそりゃ誰だって驚く。
そもそも────
「君はコウェル所長に対して強い興味、そして自分の実力を試したい気持ちも強い。
その熱をコウェル所長にぶつけられないのは実に勿体ないからね。
その推薦状があれば彼も君の面接を無碍に断ったりしないだろう。
まあ、採用、不採用に関しては君次第だがね」
「は、はい……でも、団長さん?いつこの事を?」
────ハルトとは初対面。
そしてこの事は取調べ中にレインにしか話してない。
「旦那様は地獄耳ですから」
「ひゃっ!!!?」
背後から突然細い声が聞こえ、またアミーティアは驚いた猫のような声を出しつつ振り向く。
「失礼致しました。私、気配が消えやすいもので」
アミーティアの背後に静かに立っていたのは黒い長髪の小柄なメイド。
どこか不思議な雰囲気の女性は、キョトンとしているアミーティアに赤い瞳を向けて優しく笑んでいる。
「彼女はフィーネ。私の────秘書みたいなモノだな。ちなみに地獄耳加減は彼女の方がスゴいぞ」
「おや、旦那様。地獄耳だけではありませんよ、私は目も利きますので。
────ガレット様のプリンを召し上がった事。御本人の前で思わず口を滑らせてしまうかも知れませんが、よろしいのでしょうか」
「よし落ち着け。後で美味いもの食わせてやるから味方でいてくれ殺される」
「ふふっ……承知しました。旦那様」
「団長、そのうちガレット様に本当に叱られますよ」
苦笑いするハルトを見て、口元に手を当て悪戯に笑うフィーネと呆れ顔のレイン。
それよりもフィーネはいつから自分の後ろに居たのだろう。
全然気配が無かったが同じ部屋に居たレインには驚いた様子がない。
(不思議な人だなあ)
そう思いながら三人を見ていると
「それじゃあレイン頼んだぞ、アミーティアさん、道中には気を付けてな」
「は、はい!ありがとうございます!」
ハルトは爽やかに笑いながら部屋を出ていき、フィーネも「それでは」と会釈して彼の後に続いて出ていった。
「ふう……それでは、私達も行きましょうか。まずは街で買い物ですね」
「はい!」
そしてレインとアミーティアも部屋を後にした。
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