転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~

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第1章 アルべリオン大陸編

78限目「緑翠竜との出会い、そして質疑応答」

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「ライゼル=ド=アンバールが緑翠竜に願い奉る。選ばれし5名に竜宮へ至る門を示し給え」その言葉に応じるように、ベッドの前方の空間が揺らぐ。次の瞬間には緑色の壮麗な門が現れた。うん?5名?

「5名ですか?」なんか大所帯だ。
「うむ、お主とシェステ殿は言うに及ばずなのだが、カーラ殿も呼ばれている。それと、アルバート、ロベルト。お前達も良い機会だ、許可はもらっているから謁見してこい」

「「御意」」少し躊躇いは見えたが、同行決定だ。
「それではシェステ殿。竜鱗鉱を」俺はアイテムボックスから美しい光を湛える竜鱗鉱を取り出すと、シェステに手渡す。

 またあのまばゆい光に包まれるのかと思ったのだが、今回は柔らかな淡い光を放つにとどまっている。シェステはそのことには気にも留めず、竜鱗鉱を頭上へと掲げる。
 すると、ガチャリと音が聞こえ、門は左右へゆっくりと開いていった。

「私はここで会話を聴かせていただく故、さぁ、どうぞ中へ」王が入場を勧める。
 こちらから中の様子を確認することはできないのだが、危険はないだろう。とっとと行くことにするか。

「それでは、行って参ります」


 門(ゲート)を抜けると、大きな空間へと通じていた。
 空間はドーム状になっており、ドームの外は大小無数の光点がある。現実感は全くないが、それは美しい夜空の世界だった。
 そして門から中央に大きな道が伸びており、その先には巨大な建物が鎮座している。あれがおそらく《竜宮》で間違いないだろう。

 5人は道を進み竜宮へ近づくと、それが想像以上の大きさなのに気付いた。だが、それ以上に美しい翡翠色の荘厳な造りに息をのむ。
 そんな5人の到来を知ってか知らずか、竜宮の巨大な門が開いていく。

「よく来たな。中へ入るがよい」中は特に調度品らしいものは何もなく、あるのは高い天井を支える柱くらいである。
 そして奥には大きな体躯の竜が1体、その体を横たえていた。竜宮が大きいのも頷ける。大小2対の角に大きな翼と尻尾。全体が細かいエメラルドを散りばめたようにキラキラと光り輝く身体。その美しさは思わず見惚れてしまうほどだった。

「グレンよ、お主に会うのを心待ちにしておった。
 私が六竜の一角、《緑翠竜》ラフィルネである。
 グレン、シェステ、カーラ、アルバート、ロベルト。よくぞ参った。立ち話もなんだから、茶でも飲みながらゆるりと話そうか」次の瞬間には全員が座れるソファとテーブル、そして紅茶と茶菓子のクッキーが用意されていた。

「器用だな。ではお言葉に甘えて」全員が腰かける。カーラと2人の王子は少し躊躇していたようだったが、シェステが率先してクッキーを美味しそうに食べる様子を見て、ホッとした様子で口にしていたのが面白かった。
 紅茶はとてもよい香りを放ち、温度もちょうどよい。美味いな。それにクッキーも湿気っている様子は全くなかった。サクサクと美味しい音を立てている。

「さて、何から話したものか……。そうじゃな、まずは礼を言わねば。だが、すでにライゼルが言っておったのでここはお主の意を汲んで、省略しておこう」
「それは助かる」褒められることは嫌いではないが、感謝の言葉をあまりにも多くもらうと、なんか居た堪れなくなってしまう。この竜、空気が読めるぞ!

「我々は本当にこの場に同席してもよろしかったのでしょうか?」ロベルトが申し訳なさそうに恐る恐る言葉を口にする。
「契約者であるライゼルの頼みだし、私も快く了承しているから心配はいらぬ。それにカーラも同様だ。《竜の巫女》という言葉に触れ、縁を結んだ。だから資格ありと判断した。
 そなたらも尋ねたいことがあれば言うがよい」するとアルバートが早速質問をする。

「契約者というのは?なぜ父上なのです?」
「契約者というのは、私だけではなく他の竜達にも言えることだが、各竜が特定の一人と契約を結び《竜の巫女》に関する情報を共有し、巫女が現世に現れた時に悪魔よりも先に保護することを使命としておる。

 そして契約者の条件としては、一つは心正しき者、そしてもう一つは統治者であること、その2つだ。巫女の保護のため、情報が集約しやすくかつ行動に移しやすいため非常に効率がよいのだ」ふむ、理にかなっている。さらに竜の話は続く。

「統治者という条件がある以上、次代の公王、つまりアルバートとロベルト。お主らのどちらかが私の契約者となるだろう。心して精進せよ」
「「はい!!」」背筋を伸ばして返事をする王子達であった。

「私からもよろしいでしょうか?」カーラが小さく手を挙げる。
「構わぬ。申してみよ」
「《竜の巫女》という言葉に触れた者は他にもいらっしゃいます。他の方を差し置いてというのは少し気が引けてしまって……」

「なるほど。確かに触れてしまった者は多いな。勿論その者達を呼んでもいいのだが、あまり一度に大勢の者を竜宮に招き入れるのは他の竜達が五月蠅いのでな。
 必要とあれば今回のことを話しても構わぬ。悪い者達ではないようだからな。だがこれ以上他言無用に願いたい。

 さてそなたのことだが、今回私は最もふさわしいと思い呼んだのだ。こちらも気にする必要は全くない」その場の勢いで結構話してしまったからな……。俺からは何も言えん。

「それはどういう……」
「今私が言ってしまうのは簡単だが、よいのか?己の決意は己の言葉で言った方がよいだろう?」
「……」竜の言葉が思い当たるのか、カーラは黙って俯いてしまった。話題を変えるか。

「❝六竜❞と言っていたが、他の竜達はどこにいるんだ?」
「他の竜は、現在世界各地の統治者と契約を結び、そなたらの来訪を心待ちにしているはずだ。

 一番近いのは、サリジャ海の海洋国家オルヴァートにいる《紺碧竜(こんぺきりゅう)》リヴァルダス。
 そして世界最大、ブランデン大陸のドラグネス大皇国には、《赤煌竜(せきこうりゅう)》エルファーレ。

 世界最古の国家、連邦国家グレイシェルがあるプロディス大陸には、《白閃竜(はくせんりゅう)》アルバーンと《黒淵竜(こくえんりゅう)》エブロゼータがいる。

 あともう一竜、《銅塊竜(どうかいりゅう)》ダルクームだが、現在契約者不在のため連絡がとれぬ」世界各地に散らばっているというわけだ。順に会うしかないか。

「では本題だ。《竜の巫女》の役割について聴きたい。今後の方針を考えるためには外せない質問だ」今聴けることは全て聴いて、情報をまとめて最適化しておきたいところだ。❝竜の❞という冠がついている以上、竜に関する役目なのは想像できるが……。

「《竜の巫女》というのは、我ら竜種の❝目覚め❞を司る者のことだ。現在我ら六竜は力を失い、魂だけの存在となっている。故にこの竜宮という固有結界にて魂を隔離し、復活の時を待っておったというわけだ」
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