見えない明日に揺れる僕たちは

多田莉都

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第6章

美咲の存在 1

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 ウチの中学は9月の後半に中間テストがある。その後、10月の文化祭の準備を進めながら中間テストの対策もする。
 なんだか歪だが、これがウチの学校のシステムで、年間予定表にも記載されていることだ。やむをえない。

 ウチのクラスは放課後のダンスイベントの打ち合わせを30分だけすることにしていた。
 放課後の教室で、今日はダンスを踊るメンバーで曲の選考を行っていた。

 いまのところダンスをやると言ってくれているメンバーは、彩夏を含めて6人になっている。すぐに手を挙げてくれたさくらや千尋、柚葉など僕がわりとよく知ってる面子だ。
 流行りのK-POPやJ-POPを使ったヒップホップ系の何かがどうだとか彩夏が説明しているようだったが、ダンスがど素人の僕にはイメージすらわかなかった。
 だんだんとまとまってきているような気もするが、このメンバーの中に、クラスの中心的存在である美咲の姿はない。

「美咲が入ったらガチでいい感じなんになー」

 さくらの一言に千尋が「マジでそう思う! 絶対いいと思うのに!」と同意する。
 彩夏は苦笑する。

「誘ってはみたけどなんか勉強も忙しいとかって話だし」
「勉強? 美咲がぁ? 私と同じでガチスポーツ勢のはずなのに!」

 さくらの言葉にみんなが笑う。
 美咲はさくらと同じく体育会系女子で、勉強を熱心にするタイプとは対極的な位置にいるタイプだ。昔からイベントごとの中心にいる存在で、いまこの場所にいないことをさくらは不思議に思っているかもしれない。さくらはチラッと美咲の席を見た。
 そこに美咲はいない。

「で、振り付けをさ、少し考えてきたんだけどね」

 彩夏が話題を変える。

「あ、聞きたい聞きたい!」

 千尋が反応し、自然に会話の内容が変わっていく。
 いきなり難しいことは覚えられないからと「ややこしい用語があまりないのがいい」というさくらの要望に応える形にしようと話が進んでいく。

 ゆっくりと話は進んでいき、蒼真を通して律さんとも連絡がついたし、絵理沙、柚葉と衣装をどうするかという話も始まりだした。
 振り付けに関して僕があまり意見ができる部分はないし、塾の時間もあるので僕は先に帰ることにした。
 正面玄関で靴を履き替えていると、

「佑くん」

 と後ろから声がして振り向くと絵理沙がいた。

「あれ、絵理沙も帰るの?」
「うん。私は踊るほうじゃなくて衣装の準備だからね。ダンス打ち合わせには出ない」
「なるほど」
「それに私も塾あるし」

 並んで校門を出たとき、絵理沙が僕に話しかけてきた。

「美咲と『フツー』になったの?」

 なんだその質問は? 僕は絵理沙を見る。
 
「最近、ぎこちなそうだったから」
「そうか?」
「美咲と佑くんっていつも一緒にいるイメージなのに最近、距離あるように見えるわ」
「別に……もう小学生じゃないんだからいつでも一緒に話してるわけにはいかないだろ」

 絵理沙は頷きながら「ふぅん」と言った。

「美咲のモーグラって見てる?」

 写真投稿SNSのモーメントグラムのことを言っているらしい。女子の会話でよく出てくるものだ。

「いや、オレ、アカウント作っただけで全然見てない」
「待って。それアカウント持ってる意味ないじゃん」

 絵理沙が笑った。

「なんかね、美咲、今までやりとりなかった人とやりとりしてるんだよね」
「どういう人?」
「なんかダンス関係とか?」

 ダンスってことは文化祭のことを考えてくれてるって意味だろうか。
 絵理沙は少し目を細めて僕を見た。まるで僕の反応を試すような視線だった。
 
「ごめん、私も何もわからんかったから佑なら知ってたりするのかなぁ……って思っただけ」
「なるほど。絵理沙は悪くないよ。そういう面ではオレは全然わからないな」
「なんか美咲が考え込んでるのかなぁって……。ごめんね、急に」
「謝ることじゃないよ。気にしないで。テスト頑張ろうね」

 絵理沙は微笑んだ。
 僕は自転車通学で、絵理沙は徒歩なので、僕たちは自転車置き場で別れた。

 モーグラなんて全然使っていないのでさっぱりだが、蒼真とかはよく使うとか言っていたなぁと思いながら自転車に鍵を入れた。

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